この事例の要点
- 株式会社ベネッセホールディングスは、国内教育事業、介護・保育事業、大学・社会人事業の3つの報告セグメントとその他で構成され、2024年3月期の売上高は410,815百万円(前期比△0.3%)、営業利益は20,232百万円(前期比△1.9%)でした(2024年3月期決算短信〔日本基準〕(連結))。
- 「進研ゼミ」は通信添削を中心として毎月継続的に行う家庭学習システムと説明されています。「進研ゼミ」と国内「こどもちゃれんじ」の延べ在籍数(4月~3月累計)は合計23,409千人(前期比88.0%)に減少しました(2024年3月期決算短信〔日本基準〕(連結))。
- 介護・保育事業は、既存ホームの入居率の回復、価格改定、ホーム数の拡大により増収となり、セグメント利益は9,466百万円(前期比142.3%)と伸びました(2024年3月期決算短信〔日本基準〕(連結))。
どんな事業か
同社グループは、国内教育事業、介護・保育事業、大学・社会人事業を報告セグメントとし、その他に直島事業や海外の「こどもちゃれんじ」講座事業などを含めています。国内教育事業には、小学生から高校生を対象とした通信教育講座「進研ゼミ」と、主に幼児を対象とした通信教育講座「こどもちゃれんじ」、学校向け教育事業、塾・教室事業が含まれます。介護・保育事業は入居介護サービス事業を中心としており、高齢者向けホーム及び住宅は2024年3月末時点で合計357ヵ所です。大学・社会人事業には、社会人向けオンライン教育プラットフォームサービス事業などが含まれます(2024年3月期決算短信〔日本基準〕(連結))。
事業環境として、国内教育事業では少子化に伴う市場の縮小、家庭学習におけるデジタル教材の浸透などを挙げ、新規参入の企業も加わり競争が激化していると説明しています。介護・保育事業では、介護サービスへのニーズは拡大する一方、人材の確保及び維持が業界全体の課題であるとしています。なお、ブルーム1株式会社による公開買付けとその後の一連の取引により、同社株式は2024年5月17日付で上場廃止となる予定であるため、2025年3月期の業績予想は記載されていません(2024年3月期決算短信〔日本基準〕(連結))。
収益の仕組み
国内教育事業の売上は、「進研ゼミ」「こどもちゃれんじ」の会員からの継続的な受講料、学校向け教育事業の受注、塾・教室事業から得られます。当期は「進研ゼミ」及び国内の「こどもちゃれんじ」で価格改定による増収があった一方、延べ在籍数の減少による減収があり、セグメント全体では減収でした。学校向け教育事業は販売高48,993百万円(前期比101.2%)、塾・教室事業は44,600百万円(前期比101.4%)と伸びています(2024年3月期決算短信〔日本基準〕(連結))。
介護・保育事業の売上は、入居介護サービス事業が118,785百万円(前期比105.3%)と大半を占めます。増収の要因として、既存ホームの入居率の回復に伴う顧客数の増加、価格改定、ホーム数の拡大が挙げられています。費用の内訳は、今回参照した決算短信には示されていません(2024年3月期決算短信〔日本基準〕(連結))。
数字で確かめる
- 売上高:410,815百万円(2024年3月期、前期比99.7%)、営業利益:20,232百万円(前期比98.1%)、売上高営業利益率:4.9%(2024年3月期決算短信〔日本基準〕(連結))。利益率は低い水準にあることが読み取れます。
- 国内教育事業:売上高208,136百万円(前期比96.7%)、セグメント利益15,889百万円(前期比88.1%)(2024年3月期決算短信〔日本基準〕(連結))。会員数の減少が売上以上に利益を押し下げたことが読み取れます。
- 介護・保育事業:売上高139,348百万円(前期比105.0%)、セグメント利益9,466百万円(前期比142.3%)(2024年3月期決算短信〔日本基準〕(連結))。入居率と価格の改善が利益に大きく効く構造が読み取れます。
- 延べ在籍数:小学講座12,514千人(前期比90.2%)、国内こどもちゃれんじ講座6,882千人(前期比83.2%)(2024年3月期決算短信〔日本基準〕(連結))。幼児向けほど減少幅が大きいことが読み取れます。
- 高齢者向けホーム及び住宅数:357ヵ所(前期352ヵ所)(2024年3月期決算短信〔日本基準〕(連結))。既存拠点の稼働改善が増収の中心だったと読み取れます。
Otsumuの読み解き:なぜ成り立つのか
ここからはOtsumuの考察です。この事業は、サブスクリプションと教育・研修サービスという型で見ると、「毎月継続する会員から受講料を得る教育事業」と「入居者から継続的に対価を得る介護事業」という、性質の異なる2つの継続課金を組み合わせた構造と読めます。教育事業では、会員数(延べ在籍数)と単価の掛け算で売上が決まり、当期は価格改定で会員数の減少を一部補った形です。介護事業では、拠点数と入居率と価格の掛け算で売上が決まり、当期は拠点をわずかに増やしつつ入居率と価格の両方を改善しています。
成り立つ条件は、継続課金の「解約されにくさ」を支える中身です。「進研ゼミ」が通信添削を中心に毎月継続する仕組みであることは、毎月届く教材と添削の返却が継続の理由になっていると読めます。一方で、延べ在籍数が88.0%に減っていることから、デジタル教材の浸透や新規参入との競争の中で、この継続の理由が以前ほど強く働いていない可能性があると考えられます。介護事業では、人材の確保が業界全体の課題と同社が述べていることから、拠点を増やすより既存拠点の入居率を上げる方が、人手の制約の中で利益を出しやすい選択と読めます。
トレードオフは、価格改定と会員数の関係にあります。値上げは短期的に売上を支えますが、会員数の減少を加速させる可能性もあります。また、異なる事業を持つことで一方の減益を他方の増益で吸収できた反面、人材や設備は共通化しにくいと考えられます。
自社事業に持ち帰る問い
- 自社の継続課金の売上を「顧客数×単価」に分けたとき、どちらが伸びていて、どちらが縮んでいますか。
- 顧客が継続する理由は何で、それは競合や代替手段の登場で弱まっていませんか。
- 拠点や人手を増やすより、既存の稼働率や単価を上げる余地は残っていますか。
小さく試すなら
- 継続課金の顧客数と単価を月次で12か月分並べ、売上の増減の要因を確認します。
- 直近に解約した顧客10件程度に理由を聞き、「毎月届く価値」が感じられなくなった時点がどこかを特定します。
- 価格改定を検討する場合、一部の新規顧客にだけ新価格を適用し、申込率と初期の継続率の変化を1〜2か月観察します。
関連するビジネスモデル
資料の位置づけ
企業・サービス:株式会社ベネッセホールディングス / 「進研ゼミ」等の通信教育と介護・保育事業。参照資料:2024年3月期 決算短信。このページは公開情報にもとづく学習用の分析です。Otsumuの支援実績や当該企業との取引関係を示すものではありません。示唆と検証案はOtsumuの考察であり、企業自身の見解とは区別しています。
参考資料と編集について
上記の公開資料(企業の決算短信または年次報告書)をもとに、Otsumuが執筆しました。数値と企業の説明は資料の記載の範囲にとどめ、Otsumuの考察とは分けています。数値は資料の表記のままで、最新の情報は各社の開示をご確認ください。
執筆:Otsumu株式会社 / 編集日 2026.09.27