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Booking Holdings「宿泊・旅行のオンライン予約」に学ぶ事業設計

Booking.comなど5ブランドで旅行者と宿泊施設をつなぎ、2025年に$26.9 billionの売上を上げたBooking Holdings。決済を自ら担うマーチャント型への移行と、手数料で成り立つ仲介の構造を読み解きます。

この事例の要点

  • Booking Holdingsは、Booking.com、Priceline、Agoda、KAYAK、OpenTableの5ブランドを通じて、旅行者と旅行サービス提供者をつなぐオンライン予約サービスを提供しています(Form 10-K、FY2025)。
  • 2025年の売上は$26.9 billionで、支払いを自社が仲介する「マーチャント売上」、仲介しない「エージェンシー売上」、「広告その他売上」に分類されます(Form 10-K、FY2025)。
  • Booking.comは約4.4 millionの宿泊施設を220超の国と地域で扱い、マーチャント売上が増えエージェンシー売上が減る移行が進んでいます(Form 10-K、FY2025)。

どんな事業か

Booking Holdings Inc.は、旅行者(消費者)と旅行サービス提供者(パートナー)を結ぶオンライン予約サービスを運営しています。売上のほぼすべてがオンライン旅行予約サービスから生じ、加えて決済の仲介、広告、レストラン予約・管理サービス、旅行関連保険などからも収益を得ていると説明しています(Form 10-K、FY2025)。

オランダに本拠を置くBooking.comは宿泊予約の中核で、2025年12月31日時点で約4.4 millionの施設を220超の国と地域、40超の言語で扱い、55超の市場で航空券も販売しています。Pricelineは北米中心の割引旅行、Agodaはアジア太平洋向け宿泊予約、KAYAKは旅行サイト横断のメタ検索、OpenTableはレストラン予約と店舗向け予約管理を担います(Form 10-K、FY2025)。

同社は「Connected Trip」構想の下で、宿泊に加えて航空券やアトラクションなどを一つの旅程としてまとめる方向に進んでおり、2025年は航空券の販売枚数が前年比37%、アトラクションのチケットが小さな基盤から約80%成長したと説明しています。ロイヤルティプログラム「Genius」の拡大、生成AIによる旅行プランナー、自社決済基盤の採用拡大にも投資しています(Form 10-K、FY2025)。

収益の仕組み

売上は3種類に分かれます。マーチャント売上は、同社が旅行者からの支払いを予約時に受け取る取引から生じ、予約手数料、旅行者への請求額から提供者への支払額を差し引いた取引純収益、カード処理のリベートなどの決済関連収入、旅行保険などの付随手数料を含みます。エージェンシー売上は、同社が支払いを仲介しない取引から生じ、ほぼすべてがBooking.comの宿泊予約の手数料です。広告その他売上は、KAYAKの送客・広告掲載、OpenTableの予約サービスと店舗向け管理サービスのサブスクリプション料などです(Form 10-K、FY2025)。

費用側では、マーケティング費$8,186 million、販売その他費用$3,453 million、人件費$3,403 million、IT費$908 millionなどが示され、営業費用の合計は$18,092 millionでした。マーケティング費は発生時に計上され、通常は関連する総予約が発生した四半期に認識されます(Form 10-K、FY2025)。

数字で確かめる

  • 2025年の総売上は$26,917 million(前年$23,739 million)で、うちマーチャント売上$17,755 million、エージェンシー売上$7,968 million、広告その他売上$1,194 millionです(Form 10-K、FY2025)。決済を自社で担う取引が売上の中心に移っていることが読み取れます。
  • 営業利益は$8,825 million、純利益は$5,404 millionでした(Form 10-K、FY2025)。仲介手数料の事業で厚い営業利益を確保していることが読み取れます。
  • 2025年12月31日時点の繰延マーチャント予約残高は$5.3 billionで、旅行者からの前受け資金のうち提供者への支払予定額と自社の手数料見込みを含みます(Form 10-K、FY2025)。前受けが資金面の特徴になっていることが読み取れます。
  • Booking.comの取扱施設約4.4 millionのうち約3.9 millionが住宅・アパートなどです(Form 10-K、FY2025)。ホテル以外の供給が数の上では大半を占めることが読み取れます。

Otsumuの読み解き:なぜ成り立つのか

ここからはOtsumuの考察です。オンライン旅行仲介(OTA)の型は、供給側(宿泊施設)と需要側(旅行者)の両方を大量に集め、成立した予約から手数料を得る構造です。成り立つ条件は二つあると読めます。一つは供給の広さで、約4.4 millionの施設数と220超の国と地域という範囲が、旅行者にとって「ここで探せば見つかる」状態をつくっています。もう一つは需要を呼び込み続ける力で、営業費用の中で最大のマーケティング費がそれを支えていると考えられます。

エージェンシー型からマーチャント型への移行は、収益の取り方を変える動きと読めます。支払いを自社で受けることで、手数料に加えて決済関連や保険などの付随収入を積み上げられ、繰延マーチャント予約という前受け資金も生じます。裏側では、決済処理、返金や取消への対応、各国の決済規制への準拠を自社で引き受ける必要があり、同社が欧州の決済規制やプラットフォーム規制への対応を課題に挙げていることは、その負担を示していると考えられます。

トレードオフは、集客を継続的な支出に依存する点にあります。ロイヤルティプログラムやConnected Tripへの投資は、旅行者が直接戻ってくる理由を作り、外部からの集客コストに頼りすぎない構造を目指す動きと読めます。

自社事業に持ち帰る問い

  • 供給側と需要側のどちらが先に集まれば、もう一方が自然に集まる構造になるか。
  • 取引の成立だけに課金するのか、決済や保険のような付随領域まで自社で担って収益の幅を広げるのか。
  • 集客が最大の費用になるとき、利用者が直接戻ってくる仕掛け(会員制度など)をどこまで用意できるか。

小さく試すなら

  1. 供給側の登録数と地域の広さを一覧化し、利用者が「探せば見つかる」と感じる最低ラインを仮説として置きます。
  2. 決済を自社で受ける形を一部の取引に限定して試し、手数料以外に得られる収入と、返金・問い合わせ対応の工数を2〜4週間記録します。
  3. 直接再訪の利用者と広告経由の利用者を分けて集計し、再訪率を高める施策を1つだけ導入して比較します。
  4. 決済を担う場合の規制対応や外部委託先を洗い出し、費用が付随収入で回収できる見込みが立てば拡大を判断します。

関連するビジネスモデル

資料の位置づけ

企業・サービス:Booking Holdings Inc. / 宿泊・旅行のオンライン予約(OTA)。参照資料:Form 10-K(FY2025)。このページは公開情報にもとづく学習用の分析です。Otsumuの支援実績や当該企業との取引関係を示すものではありません。示唆と検証案はOtsumuの考察であり、企業自身の見解とは区別しています。

参考資料と編集について

上記の公開資料(企業の決算短信または年次報告書)をもとに、Otsumuが執筆しました。数値と企業の説明は資料の記載の範囲にとどめ、Otsumuの考察とは分けています。数値は資料の表記のままで、最新の情報は各社の開示をご確認ください。

執筆:Otsumu株式会社 / 編集日 2026.09.27

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