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中部電力株式会社の電力事業に学ぶ事業設計:送配電・小売・発電の3層構造

小売のミライズ、送配電のパワーグリッド、発電・卸のJERAの3セグメントで連結売上高3,546,041百万円(2026年3月期)を構成する中部電力。設備を保有して利用料を得る型と、外部価格に連動する売上の読み方を一次資料から学びます。

この事例の要点

  • 中部電力株式会社は、小売の「ミライズ」、送配電の「パワーグリッド」、燃料調達から発電・卸販売を担う持分法適用関連会社の「JERA」の3つを報告セグメントとし、2026年3月期の連結売上高(営業収益)は3,546,041百万円(前期比△3.4%)でした(2026年3月期 決算短信〔日本基準〕(連結))。
  • 売上の大半は電力・ガスの販売を担うミライズ(売上高2兆8,592億円)が占め、パワーグリッドは電力ネットワークサービスの提供(託送収益など、売上高9,286億円)で収益を得ています(2026年3月期 決算短信〔日本基準〕(連結))。
  • JERAは持分法適用のため売上高は計上されず、経常損益941億円の利益が持分法投資利益として連結に反映されます(2026年3月期 決算短信〔日本基準〕(連結))。

どんな事業か

中部電力株式会社は、電気やガスなどを供給するエネルギー事業をコア領域とし、海外エネルギー事業、エネルギー事業に関連する建設業・製造業、不動産事業などを展開していると説明しています。2019年4月1日付で燃料受入・貯蔵・送ガス事業及び既存火力発電事業等を㈱JERAに承継させ、2020年4月1日付で小売電気事業等を中部電力ミライズ㈱に、一般送配電事業等を中部電力パワーグリッド㈱に承継させた体制のもと、3つの報告セグメントを置いています(2026年3月期 決算短信〔日本基準〕(連結))。

各セグメントの役割は、ミライズが「電力・ガスの販売と各種サービスの提供」、パワーグリッドが「電力ネットワークサービスの提供」、JERAが「燃料上流・調達から発電,電力・ガスの卸販売」です。連結損益計算書では、営業収益3,546,041百万円のうち電気事業営業収益が2,984,523百万円、その他事業営業収益が561,518百万円です(2026年3月期 決算短信〔日本基準〕(連結))。

収益の仕組み

売上の中心はミライズの電力・ガス販売で、2026年3月期は燃調収入等の減少などから前期比3.5%減の2兆8,592億円でした。同社は連結売上高の減少要因も「燃料費調整額(燃調収入)等の減少」と説明しており、燃料価格が販売価格に反映される仕組みが売上を動かしています。パワーグリッドの売上高は電力ネットワークサービスの提供に伴うもので、エリア需要の減少に伴う託送収益の減少などから3.6%減の9,286億円でした(2026年3月期 決算短信〔日本基準〕(連結))。

費用面では、営業費用3,315,998百万円のうち電気事業営業費用が2,804,810百万円、その他事業営業費用が511,188百万円です。営業外費用として支払利息31,108百万円が計上されています。パワーグリッドについては「設備関係費の増加」と「需給調整に係る費用の減少」があったと説明されています。費用のこれ以上の内訳は今回参照した公開資料には示されていません(2026年3月期 決算短信〔日本基準〕(連結))。

数字で確かめる

  • 売上高(営業収益)3,546,041百万円、前期比△3.4%(2026年3月期)(2026年3月期 決算短信〔日本基準〕(連結))。燃調収入の減少がそのまま売上減につながる構造が読み取れます。
  • 営業利益230,042百万円(△5.0%)、経常利益291,072百万円(5.3%増)、親会社株主に帰属する当期純利益227,795百万円(12.7%増)(2026年3月期 決算短信〔日本基準〕(連結))。営業利益が減っても持分法投資利益の増加で経常利益が伸びたことが読み取れます。
  • 持分法による投資利益94,702百万円(前期61,137百万円)(2026年3月期 決算短信〔日本基準〕(連結))。関連会社の利益が連結業績に占める重みが読み取れます。
  • ミライズ経常利益1,379億円(209億円増)、パワーグリッド経常利益475億円(前期並み)、JERA経常利益941億円(268億円増)(2026年3月期 決算短信〔日本基準〕(連結))。3セグメントの利益が異なる要因で動いていることが読み取れます。
  • 電気事業固定資産2,409,245百万円(うち送電設備553,989百万円、配電設備862,630百万円)、減価償却費172,304百万円(2026年3月期 決算短信〔日本基準〕(連結))。ネットワーク設備の保有と維持が事業の土台であることが読み取れます。

Otsumuの読み解き:なぜ成り立つのか

ここからはOtsumuの考察です。この事業は「インフラ保有・利用料」の型で読むと整理しやすいと考えられます。パワーグリッドは送電・変電・配電の設備を保有し、電力ネットワークサービスの提供に対して託送収益を得ています。売上高は「エリア需要の減少」で減ったと説明されており、利用料型の収益はネットワークを流れる量に連動する一方、設備関係費は需要が減っても直ちには減らないというトレードオフが読めます。

もう一つの型である「通信・回線契約」の観点では、ミライズの電力・ガス販売が、契約者にネットワーク経由でサービスを継続提供する構造として読めます。ただし売上の増減は燃料費調整額に大きく左右されます。同社は期ずれを除いた連結経常損益2,840億円程度を中期経営目標の達成判定に用いており、契約型の事業では、外部要因で動く売上と自らの改善で動く利益を分けて見る仕組みが裏側で必要になると考えられます。

さらに、JERAを持分法で取り込む構造は、資本集約的な燃料調達・発電の工程を連結売上に含めず、利益だけを反映させる設計と読めます。一方で2027年3月期の業績見通しは中東情勢による燃料価格等の不確実性から未定とされており、インフラを保有する事業ほど外部環境の前提づくりが難しいことも示していると考えられます。

自社事業に持ち帰る問い

  • 自社の売上のうち、外部価格の転嫁で動く部分と、自らの施策で動く部分はどれくらいの比率か。
  • 保有している設備や基盤の「利用量」が減ったとき、費用はどの程度追随して下がるか。
  • 資本集約的な工程を自社で持つか、出資先に任せて利益だけを取り込むか、どちらが自社に合うか。
  • 業績を評価するとき、期ずれや一時要因を除いた「実力値」を社内で定義しているか。

小さく試すなら

  1. 直近1年の売上を「外部要因(原価転嫁・為替など)」と「自社要因(契約数・単価改定)」に分解し、それぞれの寄与を一枚にまとめる。
  2. 主要な費用項目について、利用量が減った場合に連動して減るものと固定のものを仕分けし、固定費の比率を確認する。
  3. 外部要因を除いた利益指標を一つ定め、月次で追う。目標との差が説明できるようになれば、次の投資判断の材料にする。

関連するビジネスモデル

資料の位置づけ

企業・サービス:中部電力株式会社 / 電力の発電・送配電・小売。参照資料:2026年3月期 決算短信〔日本基準〕(連結)。このページは公開情報にもとづく学習用の分析です。Otsumuの支援実績や当該企業との取引関係を示すものではありません。示唆と検証案はOtsumuの考察であり、企業自身の見解とは区別しています。

参考資料と編集について

上記の公開資料(企業の決算短信または年次報告書)をもとに、Otsumuが執筆しました。数値と企業の説明は資料の記載の範囲にとどめ、Otsumuの考察とは分けています。数値は資料の表記のままで、最新の情報は各社の開示をご確認ください。

執筆:Otsumu株式会社 / 編集日 2026.09.27

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