この事例の要点
- Coinbase Global, Inc.は暗号資産の取引・保管プラットフォームを運営し、2025年のnet revenue $6.9 billionはtransaction revenue $4.1 billionとsubscription and services revenue $2.8 billionで構成されます(Form 10-K、FY2025)。
- 消費者の取引が手数料の低いAdvanced tradeなどへ移ったことで、消費者取引量が7%増えても消費者取引収益は3%減少しました(Form 10-K、FY2025)。
- 取引収益の割合はnet revenueの59%(前年63%)に下がり、ステーブルコインUSDCやステーキングなど取引以外の収益が広がっています(Form 10-K、FY2025)。
どんな事業か
Coinbase Global, Inc.は「世界の経済的自由を増やす」ことをミッションに、顧客が暗号資産に関わりやすくするプラットフォームを提供する企業です。顧客は、消費者、機関投資家、開発者の3つのグループに分かれます。2025年12月には株式、先物、予測市場まで取引対象を広げる「Everything Exchange」に向けた拡張を行ったと説明しています(Form 10-K、FY2025)。
製品は、取引手数料で収益化するtransaction productsと、subscription products and other servicesに大別されます。消費者向けにはSimple tradeとAdvanced tradeの2つの取引体験を提供し、機関投資家向けにはCoinbase Primeと4つの取引所を運営しています。2025年のtotal revenueの84%は米国で生じています(Form 10-K、FY2025)。
収益の仕組み
transaction revenueは、消費者からは取引量に応じた手数料とスプレッド、機関投資家からは取引量に基づく手数料として得ます。Simple tradeの手数料は一般にAdvanced tradeより高く、取引量の構成が変わると同じ取引量でも収益が変わります。2025年の消費者取引収益は、構成変化で平均手数料率が下がり$384.4 millionの減収要因となる一方、消費者取引量7%増で$277.0 millionの増収要因があったと説明しています(Form 10-K、FY2025)。
subscription and services revenueの柱の一つがUSDCです。Circleとの契約により、流通するステーブルコインの準備資産から生じる経済価値を分け合い、USDCの流通量全体と自社プラットフォーム上の割合が大きいほど収益が大きくなると説明しています。ステーキングでは顧客が受け取る報酬に対して固定比率の手数料を得ています。今回参照した公開資料には費用の内訳金額は示されていません(Form 10-K、FY2025)。
数字で確かめる
- net revenue $6.9 billion(2024年 $6.3 billion)。subscription and services revenueは$2.8 billion(2024年 $2.3 billion)(Form 10-K、FY2025)。伸びの多くをサブスクリプション・サービス側が担ったことが読み取れます。
- net income $1,260 million(前年$2,579 million、51%減)(Form 10-K、FY2025)。収益が増えても利益は減っており、収益と利益の動きが一致しない年だったことが読み取れます。
- transaction revenueのうち消費者$3,322,835千ドル(3%減)、機関$479,667千ドル(39%増)(Form 10-K、FY2025)。消費者取引が収益の中心である一方、機関取引が伸びていることが読み取れます。
- MTU(月間取引ユーザー)9.2 million(10%増)。増加要因はUSDC保有やステーキングの報酬プログラムへの参加者増と説明されています(Form 10-K、FY2025)。取引以外の接点がユーザー数を押し上げていることが読み取れます。
- Trading Volume $1,221 billion、うち消費者$239 billion、機関$982 billion(Form 10-K、FY2025)。取引量の多くは機関投資家だが、収益の中心は消費者であることが読み取れます。
Otsumuの読み解き:なぜ成り立つのか
ここからはOtsumuの考察です。この事業は「取引所」と「サブスクリプション」の2つの型を重ねたものと読めます。取引所の型では、取引量×手数料率が収益を決め、同社は暗号資産の価格と変動性が高い時期に取引量が増えると説明しています。同じ取引量でも消費者がSimpleからAdvancedへ移ると手数料率が下がるという説明は、取引所型の収益が「量」だけでなく「誰がどの窓口で取引するか」に左右されることを示していると考えられます。
サブスクリプションの型は、この相場連動を和らげる役割を担っていると読めます。USDCは顧客が保有しているだけで収益が生じ、ステーキングは顧客が資産を預けている間に手数料が生じます。同社がUSDC保有者に報酬を払って利用を促していることから、取引以外の接点で資産をプラットフォームに留め、そこから取引にもつなげる循環を設計していると考えられます。
トレードオフは、サブスクリプション側の収益も金利や提携先の契約に依存する点です。同社自身が金利低下がsubscription and services収益に影響しうると述べており、相場依存を減らすために積み上げた収益が別の外部要因に依存している構造は押さえるべき点です。
自社事業に持ち帰る問い
- 自社の収益は「取引が起きたとき」に生じるものと、「顧客が留まっているだけで」生じるものに分けるとどうなるか。
- 同じ利用量でも、顧客層や利用窓口の構成が変わると単価がどう変わるかを把握しているか。
- 顧客の資産や情報を自社に置いてもらうことで、他のサービス利用につながる導線はあるか。
- 相場依存を減らすために作った収益源が、別の外部要因(金利、提携契約)に依存していないか。
小さく試すなら
- 直近1年の収益を「取引連動」と「保有・継続連動」に分類し、それぞれの月ごとの変動幅を比べる。
- 取引連動の収益について、顧客層別・窓口別の平均単価を出し、構成変化が収益に与えた影響を分解する。
- 保有・継続連動の収益を増やす施策を一つ選び(会員プラン、預かりサービスなど)、少数の顧客で4〜6週間試す。継続率と他サービスへの波及が見えれば、対象を広げる判断に進む。
関連するビジネスモデル
資料の位置づけ
企業・サービス:Coinbase Global, Inc. / 暗号資産取引所とサブスクリプション。参照資料:Form 10-K(FY2025、期末 2025-12-31)。このページは公開情報にもとづく学習用の分析です。Otsumuの支援実績や当該企業との取引関係を示すものではありません。示唆と検証案はOtsumuの考察であり、企業自身の見解とは区別しています。
参考資料と編集について
上記の公開資料(企業の決算短信または年次報告書)をもとに、Otsumuが執筆しました。数値と企業の説明は資料の記載の範囲にとどめ、Otsumuの考察とは分けています。数値は資料の表記のままで、最新の情報は各社の開示をご確認ください。
執筆:Otsumu株式会社 / 編集日 2026.09.27