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Copart, Inc.の事故車オンラインオークションに学ぶ事業設計

保険会社から預かった全損車両を、世界の登録会員が競るオンラインオークション「VB3」で売却するCopart。FY2025の売上高$4.6 billion、営業利益$1.7 billionを支える手数料の型と、自社拠点で車両を扱う裏側の仕事を読み解きます。

この事例の要点

  • Copart, Inc.は、オンラインオークションと車両の再販売(リマーケティング)サービスを提供し、米国、英国、ドイツ、ブラジル、カナダ、UAE、スペイン、フィンランド、オマーン、アイルランド、バーレーンで事業を行っています。FY2025の売上高は$4.6 billion、営業利益は$1.7 billionでした(Form 10-K、FY2025)。
  • 出品者の中心は保険会社で、FY2025に処理した車両台数の81%が保険会社からのものでした。買い手は解体業者、修復業者、修理業者、中古車販売店、輸出業者、一般消費者です(Form 10-K、FY2025)。
  • 米国、カナダ、ブラジルなどでは代理人として販売し、手数料や配送・保管などの料金を売上とします。英国、ドイツ、スペインでは車両を自ら買い取って再販する本人としての取引も行っています(Form 10-K、FY2025)。

どんな事業か

Copart, Inc.は1982年にカリフォルニアで設立され、1994年に上場したオンラインオークションと車両リマーケティングの会社です。保険会社が出品する車両の大半は、全損と判断された損傷車両、修理が経済的でない車両、または保険金の支払いが済んだ盗難回収車両です(Form 10-K、FY2025)。

販売はVirtual Bidding Third Generation(VB3)と呼ぶインターネットのオークション技術で行われます。手続きは2段階で、まず下見期間中に登録会員が事前入札を行い、次にインターネット上のみで行う仮想オークションで、入札者同士と事前入札の最高額者が競り合います。同社は、この仮想オークションが買い手の母集団を広げて落札価格を高め、実地のオークションの費用と資本を不要にすると説明しています。FY2025には米国の車両のうち、所在州以外の会員への販売が台数ベースで69.8%を占め、うち31.0%は米国内の州外会員、38.8%は国外の会員でした(Form 10-K、FY2025)。

収益の仕組み

売上は「サービス収入」と「車両販売」の2種類です。サービス収入は、出品手数料、売却価格の一定割合・価格帯別・固定額のいずれかで課す販売手数料、輸送料、権利書処理料、保管料、入札手数料などからなり、車両の売却総額ではなく手数料の金額のみを、オークション時点で売上として認識します。車両販売は、同社が買い取って所有した車両の売却総額を売上とするもので、主に英国の保険会社との契約や個人からの買い取りが該当します(Form 10-K、FY2025)。

同社は、サービス収入の多くが車両の最終売却価格と結びついているため、売上は全損頻度と平均落札価格に影響されると説明しています。落札価格は、修復可能な車両への需要、中古車価格、再生部品需要、車種構成、為替、スクラップの商品価格などで動きます。費用面では、拠点運営費が人件費、輸送費、施設費、マーケティング・オークション関連費、販売車両の原価からなると説明されています(Form 10-K、FY2025)。

数字で確かめる

  • 売上高$4.6 billion、営業利益$1.7 billion、営業利益率36%、純利益率33%(FY2025)(Form 10-K、FY2025)。売上の高い割合が利益として残る構造が読み取れます。
  • サービス収入$3,968,662 thousand(前年比11.4%増)、車両販売$678,296 thousand(0.4%増)(Form 10-K、FY2025)。売上全体に対しサービス収入が85%、車両販売が15%を占め、手数料型が主軸であることが読み取れます。
  • 費用構成は売上に対し拠点運営費42%、車両販売原価13%、一般管理費9%(FY2025)。拠点運営費は$1,944,318 thousand(13.7%増)で、ハリケーンに伴う一時費用$56 millionを含みます(Form 10-K、FY2025)。拠点運営が最大の費用で、災害対応が変動要因であることが読み取れます。
  • 処理台数のうち保険会社からの車両が81%(FY2025およびFY2024)、83%(FY2023)(Form 10-K、FY2025)。売り手が特定の業種に集中していることが読み取れます。

Otsumuの読み解き:なぜ成り立つのか

ここからはOtsumuの考察です。この事業は「オークション(競り)」と「管理型マーケットプレイス」の2つの型で読めます。競りの型では、世界中の登録会員が競り合うことで価格が決まります。売却先の69.8%が所在州の外にあるという数字は、インターネットで買い手の範囲を広げたことが競争と落札価格の押し上げにつながっているという同社の説明を裏付けていると考えられます。

管理型マーケットプレイスとして見ると、同社は売り手と買い手をつなぐだけでなく、車両の回収・輸送、保管、権利書の処理、災害時の大量回収までを自社の拠点と人員、外部の事業者も使って担っています。手数料部分のみを売上とする一方、拠点運営費は売上の42%と最大の費用です。売上は軽い手数料型でも、裏側では重い実物の作業を引き受けることで、保険会社にとって「任せられる」相手になっていると読めます。出品の81%が保険会社に集中している点は、この信頼が特定の売り手の側に築かれていることを示すと考えられます。

トレードオフは、売上が外部要因に左右されることです。同社自身が、商品市況や中古車価格、車種構成の影響を定量化できないと述べています。一方で英国などでは車両を買い取る本人取引も行い、国際の車両販売は落札価格の低下や、出品者の委託(コンサインメント)モデルへの移行に伴う台数減で減少しました。委託と買い取りの組み合わせは、在庫リスクと売上規模のどちらを取るかの選択と読めます。

自社事業に持ち帰る問い

  • 自社の仲介や取次の事業で、売上は「取扱総額」か「手数料」か。どちらで見ると事業の実力が正しく見えるか。
  • 買い手の範囲を広げることで、売り手にとっての価値(売却価格や回転)は上がるか。
  • 売り手が自社に任せる理由となる「面倒な実物の作業」は何か。それを自社で持つ費用はいくらか。
  • 売上を動かす外部要因のうち、自社で制御できないものを把握し、説明できるようにしているか。

小さく試すなら

  1. 自社が扱う商品や案件について、売り手と買い手それぞれの数と地域の広がりを整理し、買い手の範囲を広げる余地を洗い出す。
  2. 一部の商品で、価格を固定する方式と買い手同士が競る方式を並行して2〜4週間試し、成約価格と成約率の差を測る。
  3. 売り手側の「面倒な作業」を一つ引き受けるサービスを試作し、対価を払う意向があるかを聞く。競りで価格が上がり、作業の引き受けに対価が付けば、手数料の設計に進む。

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資料の位置づけ

企業・サービス:Copart, Inc. / 事故車のオンラインオークション(VB3)。参照資料:Form 10-K(FY2025)。このページは公開情報にもとづく学習用の分析です。Otsumuの支援実績や当該企業との取引関係を示すものではありません。示唆と検証案はOtsumuの考察であり、企業自身の見解とは区別しています。

参考資料と編集について

上記の公開資料(企業の決算短信または年次報告書)をもとに、Otsumuが執筆しました。数値と企業の説明は資料の記載の範囲にとどめ、Otsumuの考察とは分けています。数値は資料の表記のままで、最新の情報は各社の開示をご確認ください。

執筆:Otsumu株式会社 / 編集日 2026.09.27

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