← 企業事例

OTSUMU KNOWLEDGE

株式会社サイバーエージェント「ABEMA」と広告事業に学ぶ事業設計

インターネット広告、メディア&IP(「ABEMA」等)、ゲーム、投資育成の4セグメントで売上高874,030百万円(2025年9月期)。2016年開局の「ABEMA」を含むメディア&IP事業が10年ぶりに黒字化した構造を一次資料から読みます。

この事例の要点

  • 株式会社サイバーエージェントは、メディア&IP、インターネット広告、ゲーム、投資育成の4つを報告セグメントとし、2025年9月期の連結売上高は874,030百万円(前年同期比9.1%増)で創業来28期の増収を継続しました(2025年9月期 決算短信〔日本基準〕(連結))。
  • 「ABEMA」「WINTICKET」等が属するメディア&IP事業は売上高231,543百万円(前年同期比15.7%増)、営業利益7,291百万円となり、2016年に開局した「ABEMA」の開局後、10年ぶりにメディア&IP事業が黒字化しました(2025年9月期 決算短信〔日本基準〕(連結))。
  • 連結営業利益は71,702百万円(前年同期比78.9%増)で、メディア&IP事業の黒字化と、営業利益60,063百万円のゲーム事業の大幅増益が押し上げました(2025年9月期 決算短信〔日本基準〕(連結))。

どんな事業か

同社グループは、2016年に開局した新しい未来のテレビ「ABEMA」を中心とした事業拡大を目指し、「ABEMA」と親和性の高いIP事業の強化にも取り組んでいると説明しています(2025年9月期 決算短信〔日本基準〕(連結))。

報告セグメントは4つです。メディア&IP事業には「ABEMA」「WINTICKET」等が属し、それらが重層的に売上を積み上げると説明されています。インターネット広告事業にはインターネット広告事業本部、AI事業本部等が、ゲーム事業には㈱Cygames、㈱アプリボット、㈱QualiArts、㈱Colorful Palette等が、投資育成事業にはコーポレートベンチャーキャピタルや㈱サイバーエージェント・キャピタルのファンド運営等が属します。売上高はインターネット広告事業461,220百万円(前年同期比6.1%増)、メディア&IP事業231,543百万円(15.7%増)、ゲーム事業216,710百万円(10.6%増)、投資育成事業1,663百万円(73.8%減)です(2025年9月期 決算短信〔日本基準〕(連結))。

収益の仕組み

売上の最大の柱はインターネット広告事業で、同社は「インターネット広告の市場成長を取り込み」増収になったと説明しています。下半期に大型顧客の離脱があったものの堅調に推移した一方、営業利益はAIを活用した新規事業への投資等により17,602百万円(前年同期比14.0%減)となりました(2025年9月期 決算短信〔日本基準〕(連結))。

メディア&IP事業は「ABEMA」「WINTICKET」等が重層的に売上を積み上げる構造で、営業利益は前年同期比8,739百万円増の7,291百万円となりました。ゲーム事業は複数の新規タイトルの大型ヒットと海外展開が奏功し、営業利益は外部決済への移行効果等もあり60,063百万円となりました。投資育成事業は営業損失1,515百万円です。費用については、今回参照した公開資料には費用の内訳は示されていません(2025年9月期 決算短信〔日本基準〕(連結))。

数字で確かめる

  • 売上高874,030百万円、前年同期比9.1%増(2025年9月期)(2025年9月期 決算短信〔日本基準〕(連結))。4セグメントのうち3つが増収で、全体の伸びを支えたことが読み取れます。
  • 営業利益71,702百万円(78.9%増)、売上高営業利益率8.2%(前期5.0%)(2025年9月期 決算短信〔日本基準〕(連結))。売上の伸び以上に利益が増え、利益率が改善したことが読み取れます。
  • メディア&IP事業の営業利益7,291百万円(前年同期比8,739百万円増)(2025年9月期 決算短信〔日本基準〕(連結))。前期は営業損失だった事業が10年目に黒字転換したことが読み取れます。
  • インターネット広告事業の営業利益17,602百万円(14.0%減)、ゲーム事業の営業利益60,063百万円(96.5%増)(2025年9月期 決算短信〔日本基準〕(連結))。売上最大の広告事業より、ゲーム事業のほうが利益貢献が大きいことが読み取れます。
  • 2026年9月期の業績予想は売上高8,800億円(前期比0.7%増)、営業利益500億円から600億円のレンジ(2025年9月期 決算短信〔日本基準〕(連結))。ゲーム事業の特性上、業績への変動要因が大きいと同社が見ていることが読み取れます。

Otsumuの読み解き:なぜ成り立つのか

ここからはOtsumuの考察です。この事業は「広告」の型を軸に読むと整理しやすいと考えられます。インターネット広告事業が売上の半分以上を占め、市場成長を取り込むことで増収を続けています。一方で「大型顧客の離脱」が業績要因として挙げられているように、広告の型は顧客企業の予算配分に売上が左右されるため、特定顧客への依存を薄める顧客基盤づくりが裏側で必要になると読めます。

もう一つの「広告付き無料プラン」の型については、今回参照した決算短信に「ABEMA」の料金体系そのものの記載はありません。ただ、2016年の開局から黒字化まで10年を要した事実と、「ABEMA」「WINTICKET」等が「重層的に売上を積み上げ」たという説明からは、メディアの利用者基盤を先に作り、その上に複数の収益源を重ねる設計だったと読めます。この型は利用者が集まるまでの期間を別の事業の利益で支える必要があり、同社の場合は広告事業とゲーム事業がその役割を担ってきたと考えられます。

トレードオフとして、ゲーム事業は最大の利益源である一方、同社自身が「業績への変動要因が大きい」として翌期の営業利益予想にレンジを付けています。性質の異なる事業を一つのグループで組み合わせることが、この設計の前提と読めます。

自社事業に持ち帰る問い

  • 自社の主力事業の売上は、少数の大口顧客の判断でどれほど動くか。離脱があった場合に他で吸収できる構造か。
  • 利用者基盤を先に作る事業を始めるなら、黒字化までの期間を何の利益で支えるかを決めているか。
  • 一つの利用者基盤の上に、複数の収益源を「重層的に」乗せる余地はあるか。
  • 変動の大きい事業を抱えるとき、業績見通しにレンジを持たせる考え方を取り入れているか。

小さく試すなら

  1. 直近1年の売上を顧客別に並べ、上位顧客への依存度と、離脱があった場合の影響額を一枚にまとめる。
  2. 自社が持つ利用者との接点(会員、来店客、購読者など)を一つ選び、現在の収益源以外に乗せられるものを3つ挙げる。
  3. そのうち一つを既存利用者の一部に2〜4週間案内し、反応(申込・利用・問い合わせ)を記録する。
  4. 反応が見込めるなら、その収益源が育つまでの期間を既存事業の利益で支えられるかを試算し、継続か中止かを判断する。

関連するビジネスモデル

資料の位置づけ

企業・サービス:株式会社サイバーエージェント / インターネット広告と「ABEMA」。参照資料:2025年9月期 決算短信〔日本基準〕(連結)。このページは公開情報にもとづく学習用の分析です。Otsumuの支援実績や当該企業との取引関係を示すものではありません。示唆と検証案はOtsumuの考察であり、企業自身の見解とは区別しています。

参考資料と編集について

上記の公開資料(企業の決算短信または年次報告書)をもとに、Otsumuが執筆しました。数値と企業の説明は資料の記載の範囲にとどめ、Otsumuの考察とは分けています。数値は資料の表記のままで、最新の情報は各社の開示をご確認ください。

執筆:Otsumu株式会社 / 編集日 2026.09.27

あわせて読む

次の一手を、一緒に。

事業の検証から開発・運用まで、現在の段階に合わせて支援します。

事業について相談する ↗
FROM KNOWLEDGE TO ACTION

知識を、次の一手へ。

30分の無料診断で、次の一手を整理する ↗