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Expedia Groupの旅行オンライン予約に学ぶ事業設計:宿泊仲介と広告の組み合わせ

旅行者と宿泊施設・航空会社などをつなぐグローバルな旅行マーケットプレイスを運営するExpedia Group。FY2025の売上高$14,733 millionのうち宿泊が80%を占める構造から、オンライン旅行仲介(OTA)の収益と費用の成り立ちを読みます。

この事例の要点

  • Expedia Group, Inc.は、宿泊施設、航空会社、レンタカー、民泊などの旅行サービスを旅行者に提供するグローバルな旅行マーケットプレイスです。FY2025の売上高(Revenue)は$14,733 million(前年$13,691 million)、営業利益(Operating income)は$1,871 million(前年$1,319 million)でした(Form 10-K、FY2025)。
  • 2025年の売上のうち宿泊(Lodging)が80%、広告・メディアが8%、航空が3%を占め、予約された宿泊数(Room nights booked)は8%増でした(Form 10-K、FY2025)。
  • 費用の最大項目は直接の販売・マーケティング費$7,349 millionで、売上原価$1,456 millionを大きく上回っています(Form 10-K、FY2025)。

どんな事業か

Expedia Group, Inc.は、ブランド群、テクノロジー、ファーストパーティデータを通じて旅行者、パートナー、広告主をつなぐ旅行マーケットプレイスであると説明しています。旅行サービスは単品でもパッケージでも予約でき、加えて広告主に自社サイトやアプリ上の広告枠を提供しています(Form 10-K、FY2025)。

宿泊はホテルと民泊などの代替宿泊の両方を含みます。2025年12月31日時点で約3.6 millionの宿泊施設があり、うち約2.4 millionはVrboを通じてオンライン予約できる代替宿泊、約1.2 millionは他ブランドを通じたホテルと代替宿泊です。広告・メディアでは、Expedia Group Advertisingが2025年に$758 millionの収益を生み、過半数を保有するホテル・メタサーチのtrivagoからは$417 millionの第三者向け収益を得ています(Form 10-K、FY2025)。

収益の仕組み

売上の大半はホテル予約(単品とパッケージ)の仲介から生じています。ホテルとの契約は一般に取扱額に対する割合で交渉されるため、平均客室単価(ADR)の増減が1室あたりの収益に影響すると説明しています。ホテル予約には、旅行者が予約時にExpedia Groupに支払うマーチャント型(Expedia Collect)と、滞在時にホテルに支払うエージェンシー型(Hotel Collect)があります。Vrboは主に予約ごとの課金モデルで、旅行者からのサービス料と保険商品から収益を得ています(Form 10-K、FY2025)。

収益の認識は旅行が実施された時点で行われるため、ホテルでは予約から数週間、代替宿泊では数か月以上、売上が予約に遅れて計上されます。一方、売上原価と直接の販売・マーケティング費は予約量に近いタイミングで発生するため、連結では第1四半期の売上と利益が最も低く、第3四半期が最も高くなると説明しています。FY2025の直接の販売・マーケティング費は$7,349 million(前年$6,846 million)、テクノロジー・コンテンツ費は$1,277 millionでした。同社は、ロイヤルティプログラムや割引、クーポンなどの販促活動の増加が1室あたり収益の低下につながる場合があると説明しています(Form 10-K、FY2025)。

数字で確かめる

  • 営業利益$1,871 million(前年$1,319 million)、純利益(Net income)$1,301 million(FY2025)(Form 10-K、FY2025)。前年$147 millionの無形資産減損がなくなったことも増益に寄与していることが読み取れます。
  • 直接の販売・マーケティング費$7,349 million、売上原価$1,456 million(FY2025)(Form 10-K、FY2025)。費用の重心が商品ではなく集客にあることが読み取れます。
  • 予約された宿泊数8%増(2024年は9%増)、ADRは1%増(2024年は1%減)(FY2025)(Form 10-K、FY2025)。数量の伸びが売上成長の主因であることが読み取れます。
  • 広告・メディア収益$758 million(19%増)、trivagoの第三者向け収益$417 million(33%増)(FY2025)(Form 10-K、FY2025)。トラフィックを広告として収益化する第二の柱が伸びていることが読み取れます。

Otsumuの読み解き:なぜ成り立つのか

ここからはOtsumuの考察です。「オンライン旅行仲介(OTA)」の型で見ると、この事業は自社で宿泊施設や座席を持たず、供給側と需要側を結び、取扱額の一定割合を収益として得る構造と読めます。成り立つ条件は、供給側に幅広い旅行者を送客できること、需要側に約3.6 millionの宿泊施設という選択肢を提供できることの両方です。裏側で必要な仕事は供給側との契約交渉と、旅行者を呼び込む大規模なマーケティングだと考えられます。

トレードオフは、集客費と供給側の直販志向にあります。10-Kは、ホテルチェーンが自社サイトで第三者より低い料金やロイヤルティ特典を打ち出して直接予約を促していることを競争環境として挙げています。供給側が手数料を避けて直販へ動くほど、仲介者側も割引やクーポンで旅行者を引き留める必要が生じ、それが1室あたり収益を圧縮するという循環が読めます。

この循環への対応として読めるのが広告・メディアの拡大です。旅行者の検索・予約行動というトラフィックは広告枠としても収益化でき、広告・メディア収益は$758 million(19%増)に伸びています。また、予約と収益認識の時間差を持つ事業では、費用が先行し売上が後から集中するため、季節の谷を越える運転資金の管理が運営上の要になると考えられます。

自社事業に持ち帰る問い

  • 供給側が自社を「迂回」して直販する動機はどのくらい強いか。それを防ぐ価値は何か。
  • 集めたトラフィックや顧客接点を、本業の手数料以外の方法(広告、データ、B2B)で収益化できるか。
  • 売上の計上と費用の発生にズレがある場合、季節の谷を越える資金と評価指標を用意しているか。

小さく試すなら

  1. 直近1年の売上を「取引数×平均単価×手数料率」に分解し、成長が数量・単価・料率のどれによるものかを一枚にまとめる。
  2. 供給側の上位数社に自社経由と直販の比率と理由を聞き、迂回の動機を把握する。迂回が進んでいる場合は、送客以外の提供価値を1つ決める。
  3. 自社の顧客接点に提携先の広告や紹介枠を小さく設けて反応と単価を測り、仲介手数料と比べた収益性が分かれば枠の拡大を判断する。

関連するビジネスモデル

資料の位置づけ

企業・サービス:Expedia Group, Inc. / 旅行のオンライン予約(OTA)。参照資料:Form 10-K(FY2025、期末2025年12月31日)。このページは公開情報にもとづく学習用の分析です。Otsumuの支援実績や当該企業との取引関係を示すものではありません。示唆と検証案はOtsumuの考察であり、企業自身の見解とは区別しています。

参考資料と編集について

上記の公開資料(企業の決算短信または年次報告書)をもとに、Otsumuが執筆しました。数値と企業の説明は資料の記載の範囲にとどめ、Otsumuの考察とは分けています。数値は資料の表記のままで、最新の情報は各社の開示をご確認ください。

執筆:Otsumu株式会社 / 編集日 2026.09.27

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