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Fair Isaac「FICO Score」に学ぶ事業設計:IP使用料とライセンス

Fair Isaacは、米国の消費者信用リスクの標準指標であるFICO Scoreを信用情報機関経由で提供し、ソフトウェアを複数年サブスクリプションで販売しています。FY2025の売上高$2.0 billion(前年比16%増)の構造を一次資料で読みます。

この事例の要点

  • Fair Isaac Corporation(FICO)のFY2025(2025年9月期)の売上高は$2.0 billion(前年比16%増)、営業利益は$924.9 million(同26%増)、当期純利益は$651.9 million(同27%増)でした(Form 10-K、FY2025)。
  • 事業はScoresとSoftwareの2つのセグメントからなり、Scoresセグメントの売上高は$1.2 billion(前年比27%増)で、FICO Scoreは米国の消費者信用リスクの標準指標と説明しています(Form 10-K、FY2025)。
  • FICO Scoreの利用者は生成されたスコア1件ごとに消費者信用情報機関へ手数料を支払い、信用情報機関が関連する手数料をFICOに支払う仕組みで、FICO自身は消費者の信用データを収集・保管しないと明記しています(Form 10-K、FY2025)。

どんな事業か

FICOは1956年に創業した分析ソフトウェア企業で、80か国超の企業がそのソフトウェアとFICO Scoreを利用していると説明しています(Form 10-K、FY2025)。

Scoresセグメントは、企業向け(B2B)のスコアリングと、消費者向け(B2C)のmyFICO.comサブスクリプションなどからなります。FICO Scoreは300〜850の3桁の数値で、米国の3つの全国消費者信用情報機関(Experian、TransUnion、Equifax)が収集・保管する信用データに同社独自のアルゴリズムを適用して算出されます。多くの場合、FICOは貸し手などの最終利用者に直接スコアを販売しません。Softwareセグメントは、事前構成された分析・意思決定ソリューション、モジュール型の「FICO Platform」、専門サービスからなり、SaaSまたはオンプレミスで提供されます(Form 10-K、FY2025)。

収益の仕組み

収入は3つの区分で開示されています。FY2025はScoresが1,168,575千ドル、On-premises and SaaS softwareが740,145千ドル、Professional servicesが82,149千ドルで、合計1,990,869千ドルでした。ソフトウェアは通常、複数年のサブスクリプションとして販売され、支払いは口座数、取引数、意思決定ユースケース数などの利用量指標に基づき、多くは契約上の最低支払額が定められています(Form 10-K、FY2025)。

費用面では、売上原価(Cost of revenues)は主に、ソフトウェア提供やSaaS基盤の運用、サポートに関わる人員の報酬、データセンターの費用、ソフトウェアのロイヤルティ、消費者信用情報機関のデータ・処理サービス、第三者ホスティング費用などからなります。FY2025の売上原価は353,722千ドルで売上高の18%(前年20%)に低下し、主因は利益率の高いScores製品の販売増加と説明しています(Form 10-K、FY2025)。

数字で確かめる

  • 売上高1,990,869千ドル(FY2025、前年比16%増)、営業利益924,850千ドル(同26%増)、営業利益率46%(前年43%)(Form 10-K、FY2025)。増収率を上回る増益率が読み取れます。
  • Scoresセグメント売上高1,168,575千ドル(FY2025、前年比27%増)、全社の売上原価率18%(前年20%)(Form 10-K、FY2025)。利益率の高いスコア製品の販売増が全体の利益率を押し上げていることが読み取れます。
  • Softwareセグメントの年間経常収益(ARR)$747.3 million(2025年9月30日時点、前年比4%増)、うちPlatformが$263.6 million(35%)(Form 10-K、FY2025)。ソフトウェアの成長がPlatformに移っていることが読み取れます。
  • Dollar-Based Net Retention Rate 102%(2025年9月30日時点)、Platformは112%、Non-platformは97%(Form 10-K、FY2025)。既存顧客からの収益がPlatformでは拡大し、従来製品では縮小していることが読み取れます。

Otsumuの読み解き:なぜ成り立つのか

ここからはOtsumuの考察です。この事業は「ロイヤルティ(IP使用料)」と「ライセンス」の型と読めます。FICO Scoreの場合、データを持つのは信用情報機関、スコアを使うのは貸し手で、FICOはその間に立つアルゴリズムの提供者です。データを保管せず、最終利用者に直接販売もしないため、スコア1件ごとの手数料という形で、他社の取引量に比例した収入を得る構造になっています。成り立つ条件は、スコアが「標準」として意思決定の流れに組み込まれていることで、同社は1989年の導入以降、旧版との互換性を保ちながら更新を続けてきたと説明しています。

裏側で必要な仕事は、予測モデルなど4領域の研究開発と、貸し手の審査システムに組み込みやすい形を保つことです。売上原価にソフトウェアのロイヤルティが含まれているように、FICO自身も他社のIPに対価を払う側でもあると読めます。

トレードオフは、収入が信用情報機関と貸し手の取引量に依存する点、そしてSoftwareでは従来製品のNet Retention Rateが97%と縮小しており、Platformへの移行投資が必要な点です。利用量ベース課金と最低支払額の組み合わせは、変動と安定の折り合いをつける設計と考えられます。

自社事業に持ち帰る問い

  • 自社のノウハウのうち、他社の取引の流れに組み込まれ、件数に応じて対価を得られるものはありますか。
  • データを自社で持たずに価値を提供する場合、誰がデータを持ち、誰が対価を払うのかを整理できますか。
  • 旧版との互換性を保ちながら更新するために、何を変えず何を変えるかの基準はありますか。
  • 利用量に比例する収入に、最低支払額をどう組み合わせれば双方が納得できるでしょうか。

小さく試すなら

  1. 自社の判断基準や評価手順のうち、繰り返し使われ、他社の業務にも当てはまるものを1つ選び、手順書または簡易な計算式にまとめます。
  2. 取引先または業界の仲介役となる企業に、その基準を「1件ごとの手数料」で提供できないか打診し、件数の見込みと価格感を確かめます。
  3. 必要なデータを誰が持ち、どうやり取りするかを決め、2〜4週間の試験運用で件数と手間を記録します。
  4. 件数ベースの収入見込みと運用の手間が見合えば、最低支払額を含む契約条件を設計し、次の相手に広げます。

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資料の位置づけ

企業・サービス:Fair Isaac Corporation / FICO Scoreと分析・意思決定ソフトウェア。参照資料:Form 10-K(FY2025、期末2025年9月30日)。このページは公開情報にもとづく学習用の分析です。Otsumuの支援実績や当該企業との取引関係を示すものではありません。示唆と検証案はOtsumuの考察であり、企業自身の見解とは区別しています。

参考資料と編集について

上記の公開資料(企業の決算短信または年次報告書)をもとに、Otsumuが執筆しました。数値と企業の説明は資料の記載の範囲にとどめ、Otsumuの考察とは分けています。数値は資料の表記のままで、最新の情報は各社の開示をご確認ください。

執筆:Otsumu株式会社 / 編集日 2026.09.27

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