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株式会社エイチ・アイ・エスの旅行事業とホテル事業に学ぶ事業設計

海外・国内・訪日旅行の仲介を軸に、ホテル、バス・不動産まで展開する株式会社エイチ・アイ・エス。2025年10月期の連結売上高373,106百万円、旅行事業の売上高3,091億39百万円という構造から、旅行仲介とホテル運営を組み合わせた事業の成り立ちを読みます。

この事例の要点

  • 株式会社エイチ・アイ・エスは、旅行事業、ホテル事業、九州産交グループ、その他の事業の4部門で構成され、2025年10月期の連結売上高は373,106百万円(前期比8.7%増)、営業利益は11,627百万円(同7.1%増)でした(2025年10月期 決算短信〔日本基準〕(連結))。
  • 売上の中心は旅行事業で、当期の売上高は3,091億39百万円(前期比108.9%)、営業利益は96億36百万円(同103.6%)です(2025年10月期 決算短信〔日本基準〕(連結))。
  • ホテル事業は売上高252億44百万円(前期比109.8%)、営業利益36億18百万円(同118.7%)と増収増益で、国内ホテルの稼働率・客室単価の上昇が寄与しました(2025年10月期 決算短信〔日本基準〕(連結))。

どんな事業か

同社グループは、当社、子会社153社及び関連会社10社で構成され、旅行を中心に幅広い事業を展開していると説明しています。事業は4つの報告セグメントに分かれます。旅行事業は海外旅行と国内旅行およびその付帯事業、ホテル事業は日本、台湾、アメリカ、トルコ等でのホテル運営、九州産交グループは九州産業交通ホールディングス株式会社を持株会社とする自動車運送事業・不動産賃貸業等です。その他の事業には、テーマパークの所有・運営、海外旅行保険を中心とした損害保険業務、客室予約システムの開発・運営などが含まれます(2025年10月期 決算短信〔日本基準〕(連結))。

旅行事業の中身は、日本発の海外旅行、国内旅行、訪日旅行、法人向けの報奨旅行・研修旅行、そして海外現地法人での受客業務(インバウンド事業)に分かれます。当期は、海外航空券とホテルを自由に組み合わせる新ブランド「AirZ(エアーズ)」の展開や、訪日旅行で北米マーケットからの受客件数が過去最高を記録したことなどを挙げています。営業拠点数は国内149拠点、海外58カ国110都市141拠点です(2025年10月末時点)(2025年10月期 決算短信〔日本基準〕(連結))。

ホテル事業では、「変なホテル」の最上位ブランド「変なホテルプレミア」の全国展開をはじめとするマルチブランド戦略を本格始動し、イールドコントロールの強化を図ったと説明しています(2025年10月期 決算短信〔日本基準〕(連結))。

収益の仕組み

売上は、旅行商品の販売と手配、ホテルの宿泊、バス運賃や不動産賃貸などから生じます。貸借対照表には、負債に「旅行前受金」、資産に「旅行前払金」が計上されています。当期末の旅行前受金は前期末比63億42百万円増、旅行前払金は同16億68百万円増でした。営業活動によるキャッシュ・フローは212億19百万円の増加で、旅行前受金の増加(64億90百万円)や非資金項目である減価償却費(113億29百万円)が資金の増加要因に挙げられています(2025年10月期 決算短信〔日本基準〕(連結))。

今回参照した公開資料には、売上原価や販売費及び一般管理費といった費用の内訳は示されていません。

数字で確かめる

  • 連結売上高373,106百万円(前期比8.7%増)、営業利益11,627百万円(同7.1%増)、経常利益11,381百万円(同8.9%増)(2025年10月期 決算短信〔日本基準〕(連結))。旅行需要の回復が売上と利益の両方に及んでいることが読み取れます。
  • 親会社株主に帰属する当期純利益4,719百万円(前期比△45.9%、前期8,717百万円)(2025年10月期 決算短信〔日本基準〕(連結))。営業段階の増益が最終利益には反映されていないことが読み取れます。
  • 旅行事業の売上高3,091億39百万円、ホテル事業252億44百万円、九州産交グループ253億81百万円(2025年10月期 決算短信〔日本基準〕(連結))。売上の大半を旅行事業が占める一方、ホテル事業は営業利益36億18百万円と売上規模に比して利益の厚い構造が読み取れます。
  • 訪日外客数は前期比119.4%の4,222万人、日本人出国者数は同114.6%の1,446万人(日本政府観光局(JNTO)の数値として決算短信に記載)(2025年10月期 決算短信〔日本基準〕(連結))。訪日需要の伸びが海外旅行を上回る環境が読み取れます。

Otsumuの読み解き:なぜ成り立つのか

ここからはOtsumuの考察です。同社の旅行事業は、航空会社やホテルなどの供給者と旅行者の間に立ち、商品の企画・仕入れ・販売・手配を担う仲介の型です。この型は、自らは航空機やホテルの資産を持たずに取扱高を積み上げられる一方、供給者側の価格(燃油サーチャージ、為替、渡航先の物価)と需要側の回復速度の両方に業績が左右されます。海外・国内・訪日・法人・海外現地法人での受客という複数の需要を束ねて持つことが、単一市場の変動を吸収する条件になっていると読めます。

仲介業の裏側で必要になるのは、方面ごとの需給を読んで商品を造成し、繁忙期の前に早期予約を促すプロモーションと、多数の拠点や現地法人を通じた受客・手配のオペレーションです。旅行前受金が先に入る資金の流れは運転資金の面で有利に働くと考えられますが、旅行が実施されるまで売上として確定しない点で、需要の急変には弱い構造でもあります。

ホテル事業と九州産交グループは、仲介とは逆に自社で資産を持って稼働率と単価を積み上げる型で、訪日客の増加の恩恵を受けやすいと読めます。仲介で集めた送客をグループのホテルや交通に流し込めるかどうかが、両方の型を持つ意味を決めると考えられます。

自社事業に持ち帰る問い

  • 自社は「仲介して手数料を得る」型か、「資産を持って稼働を売る」型か。両方を持つ場合、送客はどちらの方向に流れているか。
  • 需要が方面や顧客層ごとに分かれるとき、好調な領域が不調な領域を補える組み合わせになっているか。
  • 前受金で先に資金が入る事業なら、その資金の使い方と、需要急変時の返金リスクをどう見ているか。

小さく試すなら

  1. 自社の売上を「仲介型」「資産保有型」に分け、直近2期の売上と利益の伸びを型ごとに並べ、どの型が利益を支えているかを確認する。
  2. 主要な顧客層や方面ごとに需要の回復度合いを整理し、伸びている領域に商品企画や販促を寄せる仮説を1つ立てる。
  3. 繁忙期の2〜3か月前に早期予約を促す小規模なキャンペーンを1回実施し、前受金の増え方と予約の前倒し効果を測る。
  4. 既存顧客に単価の高い上位商品を1種類だけ提案し、選択率を確認する。

関連するビジネスモデル

資料の位置づけ

企業・サービス:株式会社エイチ・アイ・エス / 旅行事業とホテル事業。参照資料:2025年10月期 決算短信。このページは公開情報にもとづく学習用の分析です。Otsumuの支援実績や当該企業との取引関係を示すものではありません。示唆と検証案はOtsumuの考察であり、企業自身の見解とは区別しています。

参考資料と編集について

上記の公開資料(企業の決算短信または年次報告書)をもとに、Otsumuが執筆しました。数値と企業の説明は資料の記載の範囲にとどめ、Otsumuの考察とは分けています。数値は資料の表記のままで、最新の情報は各社の開示をご確認ください。

執筆:Otsumu株式会社 / 編集日 2026.09.27

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