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Intercontinental Exchangeの取引所とデータ事業に学ぶ事業設計

エネルギー先物やNYSEなどの取引所、債券データ、住宅ローン技術を手がけるIntercontinental Exchange, Inc.。収入の51%が継続収入という構造から、取引所とデータを組み合わせる事業の成り立ちを読みます。

この事例の要点

  • Intercontinental Exchange, Inc.(ICE)は、先物、株式、債券、米国住宅ローンにまたがる技術とデータを提供し、Exchanges、Fixed Income and Data Services、Mortgage Technologyの3つの報告セグメントで事業を行っています(Form 10-K、FY2025)。
  • FY2025の取引関連費用控除後の収入は$9,931 million(前年$9,279 million、7%増)、営業利益は$4,929 million(前年$4,309 million、14%増)、ICEに帰属する純利益は$3,315 million(前年$2,754 million、20%増)でした(Form 10-K、FY2025)。
  • 継続収入(Recurring revenues)の割合は2014年の34%から2025年の51%に高まったと説明しています(Form 10-K、FY2025)。

どんな事業か

同社は2000年にエネルギー市場の変革を構想して設立されました。同社は13の規制取引所と6つの清算機関(うちICE Clear CreditはFixed Income and Data Servicesセグメント)を運営しています。Exchangesセグメントは、エネルギー(Brent原油契約を中心に800を超える関連商品)、農産物・金属、金融の先物・オプション、NYSEを含む5つの証券取引所での株式取引、データ・接続サービス、上場サービスを提供します。NYSEにはS&P 500企業の約70%が上場しています。このセグメントの取引関連費用控除後の収入は$5.4 billionで、連結の55%を占めます(Form 10-K、FY2025)。

Fixed Income and Data Servicesセグメントは、債券の電子取引(ICE Bonds)、CDS清算(ICE Clear Credit)、3 millionを超える債券の評価価格と参照データ、指数、分析、接続サービスなどを提供し、収入は$2.4 billion、連結の24%です。Mortgage Technologyセグメントは、米国住宅ローンの申込から決済、サービシング、二次市場までのデジタルなワークフローツールを提供します(Form 10-K、FY2025)。

収益の仕組み

収入は、取引・清算の手数料(取引収入)と、データ、接続、上場、住宅ローン技術の利用料(継続収入)から成ります。FY2025のセグメント別収入はExchanges $8,120 million、Fixed income and data services $2,419 million、Mortgage technology $2,101 millionです。総収入$12,640 millionからはSection 31手数料$412 millionと、流動性支払い・回送・清算費用$2,297 millionが取引関連費用として控除されます。営業費用は報酬・福利厚生$1,963 million、技術・通信$870 million、減価償却費$1,560 millionなど合計$5,002 millionで、営業利益率は50%(前年46%)でした(Form 10-K、FY2025)。

清算機関は中央清算機関(CCP)として、清算参加者の破綻に備えて保証基金を設けています。同社自身も$381 millionの自己資金を保証基金に拠出しています。FY2025の支払利息は$803 millionでした(Form 10-K、FY2025)。

数字で確かめる

  • 取引関連費用控除後の収入$9,931 million(前年比7%増)、営業利益$4,929 million(同14%増)、営業利益率50%(Form 10-K、FY2025)。収入の伸び以上に利益が伸びていることが読み取れます。
  • 継続収入$5,056 million(前年比5%増)、取引収入(純額)$4,875 million(同10%増)(Form 10-K、FY2025)。市場のボラティリティにより取引が増えたと説明しています。
  • Mortgage Technologyセグメントの営業利益は$14 million(2024年$(170) million、2023年$(276) million)(Form 10-K、FY2025)。住宅ローン金利の上昇で需要が減る中、損失から黒字に転じたことが読み取れます。
  • 営業活動によるキャッシュ・フロー$4,662 million、フリー・キャッシュ・フロー(非GAAP)$3,871 million(Form 10-K、FY2025)。

Otsumuの読み解き:なぜ成り立つのか

ここからはOtsumuの考察です。取引所の型が成り立つ条件は、売り手と買い手が「ここに来れば相手が見つかる」と信じる流動性の集中です。顧客は最も深い流動性と商品の多様性を示す市場を好むと同社が述べているのは、集中が一度できると自己強化的に働くことを指していると読めます。Brent原油を核に800を超える関連商品を並べる設計は、基準となる契約の周りに派生商品を増やし、参加者の離脱コストを高める動きと考えられます。

データ事業の型は、取引所が生み出す価格や板情報、債券の評価価格といった副産物を、顧客の業務に必須の入力として販売するものです。同社は、販売するデータ製品の多くが市場のボラティリティにかかわらず顧客の業務運営に必要だと説明しており、取引収入の隣に変動の小さい継続収入を置くことで全体の変動を薄めています。継続収入の割合を34%から51%まで高めてきた過程は、この意図的な組み替えの結果と読めます。

裏側で必要な仕事は、清算機関としての信用リスク管理(保証基金、破綻保険)、多数の法域にまたがる規制対応、そして継続的な技術投資です。トレードオフは、資産クラスを広げるための投資に伴う負債の利払い(支払利息$803 million)にあると考えられます。

自社事業に持ち帰る問い

  • 自社の事業で、売り手と買い手(または供給と需要)が集まる「場」を持っている部分はあるか。
  • 本業の副産物として生まれるデータのうち、顧客の業務に必須の入力になり得るものはどれか。
  • 取引量に連動する収入と、継続的に入る収入の比率を、どの水準に持っていきたいか。
  • 場を運営する立場として、参加者の破綻や不正に備える仕組みを持っているか。

小さく試すなら

  1. 自社の収入を「取引ごとに発生するもの」と「継続的に入るもの」に分け、過去2年の月次で変動幅を比べる。
  2. 事業活動で蓄積されているデータを一覧にし、顧客が判断や業務に使えそうなものを3つ選ぶ。
  3. 選んだデータの1つを既存顧客5社程度に試験提供し、使われ方と対価を払う意思を聞き取る。
  4. 使われ方が確認できたデータを月額の定期提供に切り替え、継続率を3か月追う。

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資料の位置づけ

企業・サービス:Intercontinental Exchange, Inc. / 取引所と住宅ローンデータ。参照資料:Form 10-K(FY2025、期末2025年12月31日)。このページは公開情報にもとづく学習用の分析です。Otsumuの支援実績や当該企業との取引関係を示すものではありません。示唆と検証案はOtsumuの考察であり、企業自身の見解とは区別しています。

参考資料と編集について

上記の公開資料(企業の決算短信または年次報告書)をもとに、Otsumuが執筆しました。数値と企業の説明は資料の記載の範囲にとどめ、Otsumuの考察とは分けています。数値は資料の表記のままで、最新の情報は各社の開示をご確認ください。

執筆:Otsumu株式会社 / 編集日 2026.09.27

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