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OTSUMU KNOWLEDGE

株式会社INPEXの石油・天然ガス開発(イクシス等)に学ぶ事業設計

原油・天然ガスの生産設備を保有し、販売数量と市況価格で売上収益が決まる構造。2025年12月期の売上収益2,011,351百万円(前期比△11.2%)、営業利益率56.5%の背景を一次資料から読みます。

この事例の要点

  • 株式会社INPEXは国内外で石油・天然ガスの開発・生産を行い、2025年12月期の売上収益は2,011,351百万円(前期比△11.2%)、営業利益は1,135,440百万円(△10.7%)でした(2025年12月期 決算短信〔IFRS〕(連結))。
  • 原油の販売数量は144,673千バレルと前期比4.1%増えましたが、海外原油の平均販売価格が1バレル当たり70.69米ドルと前期比10.51米ドル下落したため減収となりました(2025年12月期 決算短信〔IFRS〕(連結))。
  • 売上収益営業利益率は56.5%(前期56.1%)で、減収下でも利益率は維持されました。売上原価は8,645億円(5.5%減)、探鉱費は167億円(68.6%減)でした(2025年12月期 決算短信〔IFRS〕(連結))。

どんな事業か

セグメントは「国内石油・天然ガス事業(国内O&G)」「海外石油・天然ガス事業(海外O&G)-イクシスプロジェクト」「海外石油・天然ガス事業(海外O&G)-その他のプロジェクト」の3つです。2025年12月期の売上収益は、国内O&Gが1,921億円(前期比11.4%減)、イクシスプロジェクトが3,150億円(15.6%減)、その他のプロジェクトが1兆4,869億円(10.3%減)でした(2025年12月期 決算短信〔IFRS〕(連結))。

商品別では、原油売上収益が1兆5,302億円(前期比10.6%減)、天然ガス売上収益が4,480億円(14.7%減)です。販売数量は原油が144,673千バレル(4.1%増)、天然ガスが446,818百万立方フィート(5.7%減)です。イクシスプロジェクトは売上収益が減る中で親会社の所有者に帰属する当期利益が2,708億円(9.1%増)と増益で、探鉱費の減少等が要因と説明されています(2025年12月期 決算短信〔IFRS〕(連結))。

収益の仕組み

売上収益は、販売数量と販売価格、それに為替で決まります。同社は2025年12月期の減収額2,544億円を要因別に分析し、販売数量の増加で365億円の増収、平均単価の下落で2,693億円の減収、売上の平均為替レートの円高で260億円の減収、その他で44億円の増収と説明しています。販売価格は、海外原油が1バレル当たり70.69米ドル(前期比12.9%下落)、海外天然ガスが千立方フィート当たり5.10米ドル(11.0%下落)、国内天然ガスが立方メートル当たり78円61銭(0.5%上昇)です。売上収益の平均為替レートは1米ドル149円60銭で、前期比2円13銭の円高でした(2025年12月期 決算短信〔IFRS〕(連結))。

費用面では、売上原価8,645億円(前期比5.5%減)、探鉱費167億円(68.6%減)、販売費及び一般管理費1,180億円(12.3%減)です。持分法による投資利益は720億円(31.2%減)でした。投資活動で使用した資金は6,687億円(前期比3,783億円増)、営業活動で得た資金は6,938億円でした。次期は、アジア地域における探鉱活動の増加を背景に探鉱費が増える見込みと説明しています(2025年12月期 決算短信〔IFRS〕(連結))。

数字で確かめる

  • 売上収益2,011,351百万円、前期比△11.2%(2025年12月期)(2025年12月期 決算短信〔IFRS〕(連結))。減収の大半が単価下落(2,693億円)によるもので、数量は増えていたことが読み取れます。
  • 営業利益1,135,440百万円、売上収益営業利益率56.5%(前期56.1%)(2025年12月期)(2025年12月期 決算短信〔IFRS〕(連結))。売上が減っても利益率は下がっておらず、同じ期に売上原価(5.5%減)や探鉱費(68.6%減)も減っていたことが読み取れます。
  • 海外原油の平均販売価格1バレル当たり70.69米ドル、前期比10.51米ドル(12.9%)下落(2025年12月期)(2025年12月期 決算短信〔IFRS〕(連結))。売上を左右する価格を同社が決められないことが読み取れます。
  • 2026年12月期の予想は売上収益1兆8,930億円(5.9%減)、営業利益9,570億円(15.7%減)で、前提は油価(ブレント)63米ドル、為替151円(2025年12月期 決算短信〔IFRS〕(連結))。業績予想が市況の前提に明示的に依存することが読み取れます。

Otsumuの読み解き:なぜ成り立つのか

ここからはOtsumuの考察です。この事業は「インフラ保有・利用料」の型に近い構造を持ちます。生産設備という大きな資産を先に作り、そこから出る原油・天然ガスを売って長期に回収します。ただし利用料型と違い、単価は市況で決まり、同社が値付けできません。2025年12月期は数量を4.1%増やしても単価下落で11.2%の減収となり、それでも営業利益率56.5%を保ちました。費用の多くが数量・価格に比例しにくいものと読め、価格が上がれば利益が厚く伸び、下がれば減益になる構造と考えられます。

成り立つ条件は、第一に、稼働している設備で安定して生産し続けることです。同社は次期見通しで「イクシスを始めとする主要プロジェクトにおいて安定生産を維持する」と述べており、稼働の安定そのものが収益の前提です。第二に、価格を決められない代わりに、油価63米ドル、為替151円のように前提を明示して計画を組むことです。第三に、将来の生産の元になる探鉱と投資を当期の利益と別の時間軸で続けることです。トレードオフとして、設備を持つ事業は市況の下落を自社の努力で埋めることができません。同社が1株当たり年間90円を起点とする累進配当と総還元性向50%以上という還元方針を示しているのは、市況で振れる利益をどう配分するかの設計と読めます。

自社事業に持ち帰る問い

  • 自社の売上を「数量×単価×外部要因」に分解したとき、自社で動かせる変数はどれか。
  • 保有する設備や資産の稼働率が下がったとき、売上に比例しない費用はどれだけ残るか。
  • 業績計画を立てるとき、市況や為替などの外部前提を明示しているか。前提が外れたときの利益の変化を試算しているか。

小さく試すなら

  1. 直近2〜3年の売上を、数量・単価・その他要因(為替、構成)に分解し、各年の増減がどの要因によるものかを一枚にまとめる。
  2. 費用を「数量に比例するもの」「設備・人員など固定的なもの」「将来投資」の3つに分け、売上が1割減ったときの利益を機械的に試算する。
  3. 単価が外部で決まる商品について、外部前提(市況指標や為替)を1つ決めて次の四半期の計画を書き、期末に前提と実績の差が利益に与えた影響を確認する。

関連するビジネスモデル

資料の位置づけ

企業・サービス:株式会社INPEX / 石油・天然ガスの開発・生産(イクシスプロジェクト等)。参照資料:2025年12月期 決算短信〔IFRS〕(連結)。このページは公開情報にもとづく学習用の分析です。Otsumuの支援実績や当該企業との取引関係を示すものではありません。示唆と検証案はOtsumuの考察であり、企業自身の見解とは区別しています。

参考資料と編集について

上記の公開資料(企業の決算短信または年次報告書)をもとに、Otsumuが執筆しました。数値と企業の説明は資料の記載の範囲にとどめ、Otsumuの考察とは分けています。数値は資料の表記のままで、最新の情報は各社の開示をご確認ください。

執筆:Otsumu株式会社 / 編集日 2026.09.27

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