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OTSUMU KNOWLEDGE

株式会社日本取引所グループの取引所運営に学ぶ、取引量と情報で稼ぐ事業設計

株式会社日本取引所グループは、取引・清算・上場・情報・システムの6区分で営業収益を得ています。市場の取引量に連動する収入と、上場料や相場情報料のような継続的な収入を組み合わせる設計を読み解きます。

この事例の要点

  • 株式会社日本取引所グループの営業収益は「取引関連収益」「清算関連収益」「上場関連収益」「情報関連収益」「システム関連収益」「その他の営業収益」の6区分で構成されています(2026年3月期 決算短信〔IFRS〕(連結))。
  • 2026年3月期の営業収益は198,735百万円(前期比22.5%増)、営業利益は116,289百万円(同29.0%増)でした(2026年3月期 決算短信〔IFRS〕(連結))。
  • 同社は現物の売買代金が前年同期を上回り取引料が増加したことを取引関連収益の増収の要因に挙げています(2026年3月期 決算短信〔IFRS〕(連結))。

どんな事業か

2025年度を初年度とする「中期経営計画2027」を踏まえ、当第1四半期から営業収益の内訳を従来の5区分から「システム関連収益」を加えた6区分に見直しています(2026年3月期 決算短信〔IFRS〕(連結))。

取引関連収益は、現物の売買代金や金融デリバティブ及びコモディティ・デリバティブの取引高等に応じた「取引料」、取引参加者の取引資格に応じた「基本料」、注文件数に応じた「アクセス料」、利用する売買システム施設の種類に応じた「売買システム施設利用料」等から構成されます。清算関連収益は、株式会社日本証券クリアリング機構が行う金融商品債務引受業に関する清算手数料等です(2026年3月期 決算短信〔IFRS〕(連結))。

上場関連収益は、新規上場や新株券発行の際に発行額に応じて受領する「新規・追加上場料」と、時価総額に応じて上場会社から受領する「年間上場料」に分かれます。情報関連収益は情報ベンダー等への相場情報の提供に係る相場情報料や指数ビジネスに係る収益等で、システム関連収益はarrownetの利用料やコロケーションサービスの利用料等です(2026年3月期 決算短信〔IFRS〕(連結))。

収益の仕組み

お金の入口は、取引参加者・上場会社・情報ベンダー等の複数に分かれています。当期の取引関連収益は前年同期比20.0%増の77,399百万円、清算関連収益は同57.5%増の542億42百万円、上場関連収益は同7.9%増の18,682百万円、情報関連収益は同5.5%増の336億69百万円、システム関連収益は同4.3%増の13,838百万円でした(2026年3月期 決算短信〔IFRS〕(連結))。

費用面では、営業費用が835億98百万円(前年同期比11.4%増)でした。内訳として、人件費243億7百万円、現物及びデリバティブの売買システムをはじめとした各種システムの維持及び管理運用に係るシステム維持・運営費208億32百万円、減価償却費及び償却費180億36百万円、その他の営業費用204億22百万円が示されています(2026年3月期 決算短信〔IFRS〕(連結))。

数字で確かめる

  • 取引料のうち現物は55,265百万円(前期43,117百万円、増減28.2%)でした(2026年3月期 決算短信〔IFRS〕(連結))。現物の売買代金の増加が取引料を押し上げたことが読み取れます。
  • 年間上場料は14,087百万円(増減8.2%)、新規・追加上場料は4,595百万円でした(2026年3月期 決算短信〔IFRS〕(連結))。上場会社から毎年受け取る収入が上場関連収益の中心であることが読み取れます。
  • コロケーションサービス利用料は6,480百万円(増減9.9%)でした(2026年3月期 決算短信〔IFRS〕(連結))。売買の場に付随するインフラ利用も収入源になっていることが読み取れます。
  • 営業収益営業利益率は58.5%(前期55.6%)でした(2026年3月期 決算短信〔IFRS〕(連結))。収益の伸びに対して費用の伸びが小さかったことが読み取れます。
  • 配当性向は60%以上を目標とし、2027年3月期の予想配当性向は80.9%です(2026年3月期 決算短信〔IFRS〕(連結))。利益の多くを株主に還元する方針であることが読み取れます。
  • 2027年3月期の予想は営業収益205,000百万円、営業利益115,000百万円で、株券等の1日平均売買代金7兆5,000億円などを前提としています(2026年3月期 決算短信〔IFRS〕(連結))。業績予想が市場の取引量の前提に依存していることが読み取れます。

Otsumuの読み解き:なぜ成り立つのか

ここからはOtsumuの考察です。取引所の型は、売り手と買い手が集まる「場」を提供し、そこで生まれる取引量に応じて手数料を得る仕組みです。同社の場合、取引料に加えて清算手数料も得ており、取引の成立から決済までの複数の段階で収益機会を持っていると読めます。取引の場に参加者が集まるほど流動性が高まり、さらに参加者が集まるという循環が、この型が成り立つ条件だと考えられます。

もう一つの観点がデータ事業です。取引所で生まれる相場情報や指数は、取引が行われた結果として生まれるものであり、情報ベンダー等に提供することで情報関連収益になります。取引量が増減しても、相場情報料や年間上場料のような継続的な収入は比較的変動しにくい性質を持つと考えられ、取引量連動の収入と組み合わせることで収益の振れ幅を抑える構造になっていると読めます。

裏側では、売買システムの維持管理、清算機関としてのリスク管理、上場審査などの仕事が欠かせません。同社はシステム維持・運営費を独立した費用項目として示しており、止まらない場を運営するためのコストが恒常的にかかることがうかがえます。トレードオフとしては、業績予想が売買代金などの前提に依存するため、市場環境の変化が収益に直結する点が挙げられます。

自社事業に持ち帰る問い

  • 自社の事業で、顧客同士や取引の当事者が集まる「場」として機能している部分はどこでしょうか。
  • 取引量に連動する収入と、継続的に受け取る固定的な収入の比率はどうなっているでしょうか。
  • 取引の結果として生まれるデータを、別の顧客に提供できる形に整えられるでしょうか。
  • 場を止めないための運用コストを、料金体系の中で誰が負担しているでしょうか。

小さく試すなら

  1. 自社の収入を「取引量に連動するもの」と「期間や資格に応じて定額のもの」に分け、直近の構成を2週間で整理します。
  2. 取引や利用の記録から、利用者にとって参考になりそうな集計情報(価格帯や件数の推移など)を一つ試作します。
  3. 既存顧客数社に集計情報を見せ、定期的に受け取りたいか、対価を払う価値があるかを聞きます。
  4. 定額の参加料や情報提供料を設けた場合に解約が増えないかを小さな顧客群で確かめ、継続意向が確認できれば料金体系の見直しに進みます。

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資料の位置づけ

企業・サービス:株式会社日本取引所グループ / 証券取引所の運営(取引・清算・上場・情報・システム)。参照資料:2026年3月期 決算短信〔IFRS〕(連結)。このページは公開情報にもとづく学習用の分析です。Otsumuの支援実績や当該企業との取引関係を示すものではありません。示唆と検証案はOtsumuの考察であり、企業自身の見解とは区別しています。

参考資料と編集について

上記の公開資料(企業の決算短信または年次報告書)をもとに、Otsumuが執筆しました。数値と企業の説明は資料の記載の範囲にとどめ、Otsumuの考察とは分けています。数値は資料の表記のままで、最新の情報は各社の開示をご確認ください。

執筆:Otsumu株式会社 / 編集日 2026.09.27

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