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株式会社JTOWERの通信インフラシェアリングに学ぶ事業設計

株式会社JTOWERは、携帯キャリア各社が個別に行ってきた基地局関連インフラの設備投資を一本化し、各社へシェアリングしています。設備を先に持ち、複数の利用者から収入を得る設計を読み解きます。

この事例の要点

  • 株式会社JTOWERは、従来は携帯キャリア各社単独で行われてきた携帯基地局関連インフラの設備投資を同社で一本化し、各社へシェアリングする事業を国内外で展開していると説明しています(2024年3月期 決算短信[日本基準](連結))。
  • 2024年3月期の売上高は11,519百万円(前期比120.3%増)、EBITDAは5,478百万円(同224.5%増)、営業利益は868百万円でした。一方、親会社株主に帰属する当期純損失は200百万円でした(2024年3月期 決算短信[日本基準](連結))。
  • タワー事業では株式会社NTTドコモの通信鉄塔を中心に合計4,924基の移管が完了し、鉄塔の取得に伴って総資産が大きく増えています(2024年3月期 決算短信[日本基準](連結))。

どんな事業か

同社グループは企業ビジョン「日本から、世界最先端のインフラシェアリングを。」のもと、国内におけるインフラシェアリングのパイオニアとして、国内IBS事業とタワー事業の拡大を図っていると説明しています(2024年3月期 決算短信[日本基準](連結))。通信インフラシェアリング事業の単一セグメントです。

IBS事業は、商業施設やオフィスビル等の大型施設内のアンテナ、配線、中継装置等の携帯インフラを、同社が共用設備を用いて一本化し、携帯キャリアへシェアリングする事業です。タワー事業は、屋外における鉄塔・コンクリート柱・ポール・アンテナ等の携帯インフラを同様に一本化し、携帯キャリアへシェアリングする事業です(2024年3月期 決算短信[日本基準](連結))。

国内IBS事業では、4G IBSで53物件への新規導入が完了し累計導入済み物件数は404件、携帯キャリアが個別に導入した設備の更改に際して同社の設備を活用する「4G IBS(リプレース)」では累計46件、5G IBSでは累計124件となりました。海外IBS事業を展開するベトナムでは累計導入済み物件数が243件に増加しています(2024年3月期 決算短信[日本基準](連結))。

収益の仕組み

同社は、国内IBS事業では導入物件数の拡大が増収に寄与し、タワー事業では鉄塔の移管が完了して収益貢献が進んだことで増収になったと説明しています(2024年3月期 決算短信[日本基準](連結))。設備を同社が保有し、携帯キャリアにシェアリングすることで収入を得る構造です。翌期に向けては、移管が完了した鉄塔へのテナント誘致に取り組むとしています(2024年3月期 決算短信[日本基準](連結))。

費用については、今回参照した公開資料には費用の内訳は示されていません。ただし、カーブアウトに関する資金調達や事業体制の拡大に伴う人員体制の強化等により販売費及び一般管理費が増加したこと、減価償却費4,570,248千円を計上したことが示されています。翌期はタワー本数の拡大に伴う固定資産税の増加や、カーブアウトファイナンス関連の支払利息の増加を見込んでいます(2024年3月期 決算短信[日本基準](連結))。

数字で確かめる

  • タワー事業の移管は当期4,924基、全期間累計で5,759基でした(2024年3月期 決算短信[日本基準](連結))。鉄塔を一度に大量に取得したことが読み取れます。
  • 有形固定資産の取得による支出は88,448,450千円、長期借入れによる収入は57,534,000千円、非支配株主からの払込みによる収入は23,982,298千円でした(2024年3月期 決算短信[日本基準](連結))。設備取得を借入と外部資金で賄っていることが読み取れます。
  • 総資産は146,620百万円(前期52,042百万円)、自己資本比率は21.0%(前期24.8%)でした(2024年3月期 決算短信[日本基準](連結))。資産規模が急拡大した一方、自己資本の比率は下がったことが読み取れます。
  • 営業活動によるキャッシュ・フローは7,731,043千円(前連結会計年度比435.0%増)でした(2024年3月期 決算短信[日本基準](連結))。設備が稼働し始めて現金を生み出す段階に入りつつあることが読み取れます。
  • 2025年3月期の予想は売上高15,700百万円、EBITDA7,000百万円、営業利益450百万円(前年同期比48.2%減)です(2024年3月期 決算短信[日本基準](連結))。売上とEBITDAは伸びる一方、営業利益は減る見通しであることが読み取れます。

Otsumuの読み解き:なぜ成り立つのか

ここからはOtsumuの考察です。インフラ保有・利用料とシェアリングの型を組み合わせたこの事業では、同じ設備を複数の携帯キャリアが使うほど、設備一つあたりの収入が増えると考えられます。携帯キャリアにとっては、自社単独で設備を建てるより投資を抑えられる可能性があり、同社にとっては一つの設備から複数の収入を得られる可能性がある。この双方の利点が、事業が成り立つ条件だと読めます。同社が移管済み鉄塔へのテナント誘致を翌期の取組みに挙げていることも、利用者を増やすことが収益性を左右することを示していると考えられます。

裏側で必要なのは、設備を先に取得し維持するための資金調達と、各キャリアとの調整です。同社は鉄塔の取得に伴い建物及び構築物や長期借入金が大きく増え、優先出資による非支配株主持分も増加しています。EBITDAが営業利益を大きく上回っていることは、減価償却費など設備保有に伴う費用が大きい事業であることを示していると読めます。

トレードオフとしては、設備投資が先行するため、利用者が増えるまでの間は減価償却費や支払利息、固定資産税が利益を圧迫する点が挙げられます。翌期にタワー本数の拡大に伴う固定資産税やカーブアウトファイナンス関連の支払利息の増加を見込み、営業利益の減少を予想していることは、この時間差の表れと考えられます。なお、当期の親会社株主に帰属する当期純損失は、主に減損損失を計上したこと等によると説明されています。

自社事業に持ち帰る問い

  • 顧客がそれぞれ個別に用意している設備や仕組みのうち、一本化して共有できるものはあるでしょうか。
  • 共有の仕組みを作った場合、利用者が何社そろえば採算が合うのかを把握しているでしょうか。
  • 設備を先に持つ場合、利用者が増えるまでの期間の資金をどう手当てするでしょうか。

小さく試すなら

  1. 自社の顧客が個別に持っている設備・ツール・人員のうち、共通化できそうなものを2週間で洗い出します。
  2. 候補を一つ選び、複数の顧客で共有した場合の費用負担のイメージを簡単な試算表にまとめます。
  3. 顧客3社程度に共有案を示し、自社単独で持ち続ける場合と比べて乗り換える意向があるかを聞きます。
  4. 採算に必要な利用者数の見込みが立ち、少なくとも複数社から前向きな回答が得られれば、共有設備の小規模な立ち上げに進みます。

関連するビジネスモデル

資料の位置づけ

企業・サービス:株式会社JTOWER / 通信インフラ(タワー・屋内設備)のシェアリング。参照資料:2024年3月期 決算短信[日本基準](連結)。このページは公開情報にもとづく学習用の分析です。Otsumuの支援実績や当該企業との取引関係を示すものではありません。示唆と検証案はOtsumuの考察であり、企業自身の見解とは区別しています。

参考資料と編集について

上記の公開資料(企業の決算短信または年次報告書)をもとに、Otsumuが執筆しました。数値と企業の説明は資料の記載の範囲にとどめ、Otsumuの考察とは分けています。数値は資料の表記のままで、最新の情報は各社の開示をご確認ください。

執筆:Otsumu株式会社 / 編集日 2026.09.27

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