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Lemonade, Inc.「AIを使うデジタル保険」に学ぶ事業設計

チャットボットで加入から保険金請求までを完結させ、自社の保険会社で引き受けながら再保険で変動を抑える保険の事業です。Total revenue $737.9 millionのForm 10-K(FY2025)から、保険引受の仕組みを確かめます。

この事例の要点

  • Lemonadeは、米国と欧州(UKを含む)に完全子会社の保険会社を持ち、それを動かす技術基盤まで自社で持つ垂直統合型の保険会社です(Form 10-K、FY2025)。
  • 保険契約の98%はボットのAI MayaとAPIが販売し、保険金請求の約55%は自動化されていると説明されています(Form 10-K、FY2025)。
  • 2025年度のTotal revenueは$737.9 millionと増加した一方、Net lossは$(165.5) millionでした(Form 10-K、FY2025)。

どんな事業か

同社は、AI Mayaとの短いチャットで賃貸住宅、持ち家、ペット、自動車、生命の各保険に加入でき、保険金の請求は別のボットAI Jimとのチャットで行えると説明しています。2025年12月31日時点で、最初の事故報告の96%はAI Jimが人の介在なしに受け付けています。顧客からの問い合わせの半分以上はCX.AIが処理し、不正の検知などにも自社開発のアプリケーションを使っています(Form 10-K、FY2025)。

同社は顧客数が3 millionを超えたとしています。米国では50州とワシントンD.C.で販売の免許を持ち、2025年12月31日時点で41州とワシントンD.C.で営業しており、これらは米国人口の約95%にあたります。欧州では30か国で販売できる免許を持ち、現在はドイツ、オランダ、フランス、UKで営業しています(Form 10-K、FY2025)。

同社は、顧客が指定した慈善団体に余った保険料を寄付する「Giveback」を設けています。同社は、再保険とGivebackを変動を抑える二つの仕組みとし、顧客との利害が一致した信頼関係をつくると説明しています(Form 10-K、FY2025)。

収益の仕組み

2025年度のTotal revenue $737.9 millionの内訳は、Net earned premium(正味既経過保険料)$536.3 million、Ceding commission income(出再手数料収入)$122.7 million、Net investment income $37.8 million、Commission and other income $41.1 millionです。保険料の一部を再保険会社に移転(出再)し、その見返りに出再手数料を受け取る仕組みが収益の一部を構成しています(Form 10-K、FY2025)。

費用側は、Loss and loss adjustment expense, net(正味損害額・損害調査費)が$347.0 million、Sales and marketingが$224.4 million、Technology developmentが$93.9 million、General and administrativeが$139.8 millionでした。再保険プログラムでは2025年6月30日までは保険料の約55%を出再していましたが、2025年7月1日からの更新では実効出再率を20%に下げています。また販売・マーケティング費用の一部は、成長投資額の最大80%を外部から前払いで受け、16%のリターンを付けて返済する契約(Customer Investment Agreement)で賄われており、2025年12月31日時点の借入残高は$158.1 millionです(Form 10-K、FY2025)。

数字で確かめる

  • Total revenue:$737.9 million(2024年度は$526.5 million)(Form 10-K、FY2025)。事業規模が拡大していることが読み取れます。
  • Net earned premium:$536.3 million(2024年度は$370.6 million)(Form 10-K、FY2025)。保険引受の中核となる収益が増えていることが読み取れます。
  • Loss and loss adjustment expense, net:$347.0 million(Form 10-K、FY2025)。正味既経過保険料に対して支払う損害の大きさが収益性を左右することが読み取れます。
  • Sales and marketing:$224.4 million(2024年度は$166.3 million)(Form 10-K、FY2025)。顧客獲得に積極的に投資していることが読み取れます。
  • Net loss:$(165.5) million(2024年度は$(202.2) million)(Form 10-K、FY2025)。赤字は続く一方、その幅が縮小していることが読み取れます。

Otsumuの読み解き:なぜ成り立つのか

ここからはOtsumuの考察です。この事業は「保険引受」の型で読むことができます。保険会社は保険料を先に受け取り、後から保険金を支払います。この型は、支払う損害と運営費用が保険料の範囲に収まるときに成り立ちます。同社が加入から請求までをボットで処理し、損害調査費をかけずに事故報告を受け付けられると説明していることは、運営費用の側からこの条件を満たそうとする設計と読めます。

もう一つの鍵は変動の管理です。同社は再保険を組み合わせて変動を抑え、さらにGivebackで顧客との利害を一致させることで、良い行動を促そうとしていると説明しています。出再率を約55%から20%へ下げたことは、より多くのリスクと保険料を自社に残す方向への転換と考えられ、利益の取り分が増える一方で、損害の変動も自社で受け止める度合いが高まるというトレードオフがあると読めます。

裏側では、引受の判断を支えるデータ分析、不正の検知、規制対応、再保険の契約交渉が欠かせません。同社は既存顧客約3,000,000のうち約1.9 millionがすでに自動車保険を持っているとし、既存顧客への追加販売を低い獲得費用で成長する機会と位置づけています。

自社事業に持ち帰る問い

  • 自社の商品で、代金を先に受け取り、サービスの提供が後になるものはありますか。その間のリスクを誰が負っていますか。
  • 顧客と自社の利害がぶつかる場面(請求、返品、解約)を、利害が一致する仕組みに変えられないでしょうか。
  • 問い合わせや手続きのうち、人を介さずに完結できる割合はどれくらいでしょうか。

小さく試すなら

  1. 自社の問い合わせ・手続きを1か月分分類し、定型的に処理できるものの割合を数えます。
  2. 最も件数の多い定型手続きを一つ選び、フォームやチャットで自己完結できる導線を用意します。
  3. 2〜4週間運用し、完結率、処理時間、顧客からの評価を従来の対応と比べます。
  4. 完結率が十分で不満が増えないと分かれば、対象の手続きを増やし、浮いた人手を例外対応に回します。

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資料の位置づけ

企業・サービス:Lemonade, Inc. / AIを使うデジタル保険。参照資料:Form 10-K(FY2025)。このページは公開情報にもとづく学習用の分析です。Otsumuの支援実績や当該企業との取引関係を示すものではありません。示唆と検証案はOtsumuの考察であり、企業自身の見解とは区別しています。

参考資料と編集について

上記の公開資料(企業の決算短信または年次報告書)をもとに、Otsumuが執筆しました。数値と企業の説明は資料の記載の範囲にとどめ、Otsumuの考察とは分けています。数値は資料の表記のままで、最新の情報は各社の開示をご確認ください。

執筆:Otsumu株式会社 / 編集日 2026.09.27

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