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MSCI Inc.の指数ライセンスと分析ツール事業に学ぶ事業設計

指数と分析ツールを、年間サブスクリプションと指数連動商品の資産残高に応じた手数料で提供するMSCI。営業収益3,134,459千ドル(2025年12月期)の収益構造から、知的財産で稼ぐ条件を読みます。

この事例の要点

  • MSCI Inc.の2025年12月期の営業収益(Operating revenues)は3,134,459千ドル(前期2,856,128千ドル)、営業利益(Operating income)は1,713,567千ドルでした(Form 10-K、FY2025)。
  • 同社の主な事業モデルは、製品・サービスの大半を年間の継続的なサブスクリプションとしてライセンスし、サービス期間の前に料金を受け取るものです。一部の料金は、同社の指数を基にした投資商品の運用資産残高(AUM)や取引量に基づきます(Form 10-K、FY2025)。
  • 2025年12月31日時点で100か国以上の約6,800の顧客にサービスを提供し、最大の顧客であるBlackRockが連結営業収益の10.8%を占めました(Form 10-K、FY2025)。

どんな事業か

MSCIは、調査に基づくデータ、分析ツール、指数を世界の投資家に提供しています。顧客は資産運用会社、銀行・証券会社、年金基金などのアセットオーナー、ヘッジファンドなどで、同社は顧客の種類ごとに異なるニーズを踏まえてツールを開発していると説明しています(Form 10-K、FY2025)。

事業はIndex、Analytics、Sustainability and Climate、Real Assets、Private Capital Solutionsの5つの事業セグメントからなり、Index、Analytics、Sustainability and Climateの3つの報告セグメントと、残りを合わせたAll Other – Private Assetsとして開示されています(Form 10-K、FY2025)。

Indexセグメントの指数は、ETFなどの指数連動型金融商品の組成、パフォーマンスのベンチマーク、ポートフォリオの構築などに使われます。時価総額指数(MSCI Market Cap Indexes)は2025年12月31日時点で80を超える先進国・新興国・フロンティアなどの株式市場をカバーしており、顧客の条件を加えたカスタム指数も提供しています(Form 10-K、FY2025)。

収益の仕組み

同社は収益を、継続的なサブスクリプション(recurring subscriptions)、資産連動手数料(asset-based fees)、非継続収益(non-recurring revenues)の3種類に分けています。サブスクリプションは主に更新可能な契約によるもので、ライセンス期間にわたって収益計上され、通常はライセンス開始前に請求されます。資産連動手数料は主に同社の指数に連動するAUMに基づいて計算され、指数に連動する先物・オプションの取引量に基づく収益も含みます(Form 10-K、FY2025)。

BlackRockからの営業収益のうち96.5%は、同社の指数に基づくETFなどの資産に基づく手数料でした(Form 10-K、FY2025)。

費用は、売上原価(データセンターやクラウド、市場データの取得、既存製品を支える調査などの費用)、販売・マーケティング、研究開発、一般管理、無形資産償却、減価償却に分類されています。2025年12月期の売上原価(減価償却を除く)は550,366千ドル、販売・マーケティング費は319,829千ドル、研究開発費は177,596千ドルでした(Form 10-K、FY2025)。

数字で確かめる

  • 営業収益3,134,459千ドル(前期2,856,128千ドル)(Form 10-K、FY2025)。継続的な契約を土台に収益が積み上がっていることが読み取れます。
  • 営業利益1,713,567千ドル、営業費用合計1,420,892千ドル(Form 10-K、FY2025)。営業利益が営業費用の合計を上回る収益構造であることが読み取れます。
  • 最大顧客BlackRockの比率10.8%、そのうち96.5%が同社の指数に基づく商品の資産に連動する手数料(Form 10-K、FY2025)。資産連動手数料が大口顧客の商品を通じて入っていることが読み取れます。
  • 営業活動によるキャッシュ・フロー1,588,446千ドル、うち繰延収益(Deferred revenue)の増加96,426千ドル(Form 10-K、FY2025)。前払いで請求するサブスクリプションの性質が資金面にも表れていることが読み取れます。

Otsumuの読み解き:なぜ成り立つのか

ここからはOtsumuの考察です。「ロイヤルティ(IP使用料)」の観点では、同社の指数そのものが知的財産であり、それを基にした投資商品の資産残高や取引量に応じて手数料が入る仕組みと読めます。指数を一度確立すれば、その上に組成される商品が増えるほど収益が伸びる一方、同社の追加費用は商品の数ほどには増えにくいと考えられます。ただし同社自身が、変動する料金は市場水準や顧客の活動によって変動しうると述べている通り、相場の影響を直接受けます。

「サブスクリプション」の観点では、データや分析ツールを年間契約で提供し、前払いで請求することで、収益と現金の見通しを立てやすくしています。同社が、継続的な固定・変動の料金体系が安定した収益とキャッシュフローの予見可能性に寄与してきたと説明しているのは、この二つの型を組み合わせた効果と読めます。

裏側で必要な仕事は、市場データの取得と検証、指数算出の方法論の維持、研究開発です。トレードオフとして、同社は資産運用業界で手数料圧力や統合が進むと、顧客のコスト圧力が契約の見直しや解約につながる可能性があると述べています。顧客業界の構造変化がそのまま自社の継続率に響く点が、この型の弱点と考えられます。

自社事業に持ち帰る問い

  • 自社が持つ知見やデータで、他者が自社商品の「基準」として使えるものはあるか。
  • 固定料金と、顧客の成果や規模に連動する変動料金を組み合わせる余地はあるか。
  • 前払いで請求できる形にしたとき、顧客にとっての利点は何か。
  • 顧客業界の再編やコスト削減が起きたとき、自社の契約はどれだけ残るか。

小さく試すなら

  1. 自社が継続的に集めているデータや評価基準を棚卸しし、外部が使えそうなものを一つ選ぶ。
  2. それを指標やレポートの形にまとめ、既存顧客3〜5社に2〜4週間試用してもらう。
  3. 試用後に、固定の年間契約と、利用規模に連動する料金のどちらを好むかを聞き取る。
  4. 有料で継続したいという回答が複数得られれば料金表を作り、得られなければ指標の中身を見直す。

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資料の位置づけ

企業・サービス:MSCI Inc. / 指数・分析ツール。参照資料:Form 10-K(FY2025)。このページは公開情報にもとづく学習用の分析です。Otsumuの支援実績や当該企業との取引関係を示すものではありません。示唆と検証案はOtsumuの考察であり、企業自身の見解とは区別しています。

参考資料と編集について

上記の公開資料(企業の決算短信または年次報告書)をもとに、Otsumuが執筆しました。数値と企業の説明は資料の記載の範囲にとどめ、Otsumuの考察とは分けています。数値は資料の表記のままで、最新の情報は各社の開示をご確認ください。

執筆:Otsumu株式会社 / 編集日 2026.09.27

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