この事例の要点
- 同社グループは、印刷・集客支援のプラットフォーム「ラクスル」やテレビCM・動画広告のプラットフォーム「ノバセル」を中核サービスとし、その周辺領域のM&Aを連続的に行っています(2025年7月期 決算短信〔日本基準〕(連結))。
- 2025年7月期の売上高は61,950百万円(前期比21.2%増)、売上総利益は21,684百万円(同26.1%増)、営業利益は3,819百万円(同51.3%増)でした(2025年7月期 決算短信〔日本基準〕(連結))。
- 同社は、ECサイトによるトランザクションの事業を軸に、ソフトウエアとファイナンスの機能を発展させ「End-to-Endで中小企業の経営課題を解決するテクノロジープラットフォーム」を目指すとしています(2025年7月期 決算短信〔日本基準〕(連結))。
どんな事業か
同社の事業は調達プラットフォームとマーケティングプラットフォームの2つのセグメントで報告されています(2025年7月期 決算短信〔日本基準〕(連結))。
調達プラットフォームセグメントは、中小企業や個人事業主を主な顧客とし、印刷・ソリューション領域、ビジネスサプライ・周辺領域、梱包材領域で構成されています。大企業向けサービスも売上成長に大きく貢献したとされ、サービス間のIDや決済システムの統合、複数カテゴリの商品購入に向けたキャンペーンの試行を進めています。当期には新たにネットスクウェア株式会社の株式を取得しました(2025年7月期 決算短信〔日本基準〕(連結))。
マーケティングプラットフォームセグメントは、中堅・大企業を対象とした広告代理店及びSaaS/Professional Serviceの領域と、中小企業向けの動画広告やウェブサイト作成などのマーケティングサービスからなります。デジタルマーケティングの支援体制を強めるため、株式会社オールマーケの株式も取得しています。このほか同社は、内製による新規事業として、日用品が買える「ラクスルモール」や、中小企業向けのネット銀行サービス「ラクスルバンク」を加える計画です(2025年7月期 決算短信〔日本基準〕(連結))。
収益の仕組み
お金の入口の中心は、調達プラットフォームでの商品購入です。同社は、既存領域のオーガニック成長、大企業向けサービス、前期に取得した子会社の業績貢献を増収の要因に挙げています。2026年7月期は、ラクスル上でのクロスセルを促すため、IDの統合、導線の改善、広告投資の増加を通じて複数種類の商品購入を促し、大企業向けの「ラクスルエンタープライズ」を中心に営業人員を拡充するとしています(2025年7月期 決算短信〔日本基準〕(連結))。
マーケティングプラットフォームでは、中堅・大企業との長期的な関係の構築と費用構造の見直しで収益性が改善し、中小企業向けでは動画広告やウェブサイト作成サービスを中心に売上総利益が拡大したと説明されています(2025年7月期 決算短信〔日本基準〕(連結))。
費用面では、印刷や梱包材の生産を誰がどのように担っているか、また費用の内訳は、今回参照した公開資料には示されていません。資料から分かるのは、のれん償却費が1,284百万円計上されていること、期末の固定資産のうち建物及び構築物が745百万円、機械装置及び運搬具が451百万円増えたことです(2025年7月期 決算短信〔日本基準〕(連結))。
数字で確かめる
- 調達プラットフォームセグメント:売上高57,641百万円(前年同期比22.4%増)、セグメント利益7,390百万円(同43.8%増)(2025年7月期 決算短信〔日本基準〕(連結))。売上の大半をこのセグメントが占め、利益の伸びが売上の伸びを上回っていることが読み取れます。
- マーケティングプラットフォームセグメント:売上高3,833百万円(前年同期比7.9%増)、セグメント損失260百万円(前年同期はセグメント損失363百万円)(2025年7月期 決算短信〔日本基準〕(連結))。赤字幅が縮小していることが読み取れます。
- 売上高営業利益率:6.2%(前期4.9%)(2025年7月期 決算短信〔日本基準〕(連結))。規模の拡大とともに利益率が上がっていることが読み取れます。
- 2027年7月期の目標:売上総利益30,000百万円、non-GAAP EBITDA 10,000百万円(2025年7月期 決算短信〔日本基準〕(連結))。売上高ではなく売上総利益を成長の目標に置いていることが読み取れます。
Otsumuの読み解き:なぜ成り立つのか
ここからはOtsumuの考察です。この事業は「管理型マーケットプレイス」と「アセットライト運営」の型で読むことができます。同社は自らを印刷・集客支援の「プラットフォーム」と位置付け、中期の目標を売上高ではなく売上総利益とEBITDAで置いています。これは、取扱高そのものよりも、取引から自社にどれだけの粗利が残るかを重視する設計だと読めます。
管理型マーケットプレイスが成り立つ条件は、注文の受け付けから品質・納期の管理までを自社が引き受け、顧客に「ここで頼めば任せられる」と思ってもらうことだと考えられます。そのうえで同社は、IDや決済の統合、複数カテゴリの購入促進で、一度来た顧客に買う品目を増やしてもらうことを狙っています。顧客基盤を一度つくれば、日用品やネット銀行といった隣の領域を同じ入口から売れることが、この型の広がり方だと読めます。
一方でトレードオフもあります。今回の資料には生産の担い手が書かれていないため、どこまで資産を持たずに運営しているかは判断できません。建物や機械装置が増えていることからは、完全に資産を持たない運営ではない可能性も考えられます。また、M&Aで領域を広げる方法は、買収後の統合(PMI)の手間と、のれん償却という費用を伴います。同社が当期にPMIの推進に取り組んだと述べているのは、その裏側の仕事の表れと考えられます。
自社事業に持ち帰る問い
- 自社の成長目標は売上高で置いていますか、それとも手元に残る粗利で置いていますか。
- 一度取引した顧客に、隣の品目やサービスを買ってもらう導線はありますか。
- 外部の会社や事業を取り込むとき、統合の作業を誰が担うかを決めていますか。
小さく試すなら
- 既存顧客の購入履歴を集計し、1品目だけ買っている顧客と複数品目を買っている顧客の割合を出します。
- 1品目だけの顧客に向けて、関連する品目を1つ組み合わせた提案を用意します。
- 2〜4週間、その提案を既存顧客の一部に案内し、2品目目の購入件数と粗利を記録します。
- 追加購入が生まれ粗利が確保できれば、案内の対象と組み合わせる品目を広げるかを判断します。
関連するビジネスモデル
資料の位置づけ
企業・サービス:ラクスル株式会社 / 印刷・集客支援のプラットフォーム「ラクスル」など。参照資料:2025年7月期 決算短信。このページは公開情報にもとづく学習用の分析です。Otsumuの支援実績や当該企業との取引関係を示すものではありません。示唆と検証案はOtsumuの考察であり、企業自身の見解とは区別しています。
参考資料と編集について
上記の公開資料(企業の決算短信または年次報告書)をもとに、Otsumuが執筆しました。数値と企業の説明は資料の記載の範囲にとどめ、Otsumuの考察とは分けています。数値は資料の表記のままで、最新の情報は各社の開示をご確認ください。
執筆:Otsumu株式会社 / 編集日 2026.09.27