この事例の要点
- Snap Inc.は、Snapchatの利用者に向けた広告(Snap Ads、AR Ads)を主な収益源とし、Snapchat+などのサブスクリプションも伸ばしています(Form 10-K、FY2025)。
- 2025年の売上高は$5.9 billionで、前年の$5.4 billionから11%増えました。広告の表示回数は約17%増えた一方、表示1回あたりの単価は約10%下がったと説明されています(Form 10-K、FY2025)。
- 売上の増加分のうち、その他の収益(主にサブスクリプション)の増加が$287.6 millionあり、広告の増加分$282.4 millionとほぼ並ぶ規模になっています(Form 10-K、FY2025)。
どんな事業か
Snap Inc.は、アプリSnapchatを運営しています。同社はDAUを「24時間のうちに少なくとも1回アプリやウェブサイトを訪れた、登録済みでログインしている利用者」と定義し、2025年第4四半期の平均DAUは474 millionで、前年同期から5%増えたと説明しています(Form 10-K、FY2025)。地域別には北米、欧州、その他の地域に分けて利用者数を開示しています。
同社は近年の戦略として3つの優先事項を掲げています。コミュニティを広げて製品への関与を深めること、売上の伸びを加速し多様化すること、そしてSpectaclesを含む拡張現実(AR)への投資です(Form 10-K、FY2025)。
利用者は無料でSnapchatを使い、同社は広告主にその利用者への広告枠を売ります。加えて、Snapchat+、Lens+、Snapchat Platinumといった有料プランで、限定機能や先行機能、Snapchat Platinumでは広告なしの体験を提供しています(Form 10-K、FY2025)。
収益の仕組み
同社は、売上の大部分をSnapchat上の広告商品(Snap Ads、AR Ads)の販売から得ていると説明しています。Snap Adsは、コンテンツパートナーとの収益分配の対象になる場合があります。広告以外では、サブスクリプション、写真などを保存するMemories Storage Plans、AIプラットフォームのパートナーとの契約などの提携、物理製品の販売からも収益を得ています(Form 10-K、FY2025)。
費用側では、売上原価にインフラ費用(ホスティング、ストレージ、計算資源、帯域)、コンテンツ・開発者パートナーへの支払い(パートナーのコンテンツ内に表示したSnap Adsの広告収入の一部を支払う収益分配)、決済手数料などが含まれます。2025年の売上原価の増加は、主にインフラ費用の$143.0 million増加によるもので、DAUの増加と機械学習・AIへの投資が背景だと同社は説明しています(Form 10-K、FY2025)。
同社は、広告需要の伸びが鈍化し広告予算を巡る競争が強まっていること、北米ではプラットフォームのポリシー変更がターゲティングや効果測定に影響していることもリスクとして挙げています(Form 10-K、FY2025)。
数字で確かめる
- 売上高:$5,931,447 thousand(2025年)、前年は$5,361,398 thousand(Form 10-K、FY2025)。広告中心のまま規模が伸びていることが読み取れます。
- 営業損失:$(532,167) thousand(2025年)、前年は$(787,294) thousand(Form 10-K、FY2025)。赤字幅は縮小しているものの、まだ営業段階で黒字化していないことが読み取れます。
- 純損失:$460.5 million、前年は$697.9 million。Adjusted EBITDAは$689.5 million(Form 10-K、FY2025)。非現金費用を除く指標では利益が出ていることが読み取れます。
- ARPU:2025年第4四半期$3.62、前年同期$3.44(Form 10-K、FY2025)。利用者1人あたりの収益化が少しずつ進んでいることが読み取れます。
- Free Cash Flow:$437.2 million、前年は$218.7 million(Form 10-K、FY2025)。会計上は赤字でも現金は生み出していることが読み取れます。
Otsumuの読み解き:なぜ成り立つのか
ここからはOtsumuの考察です。広告モデルは、無料で集めた利用者の時間を広告主に売る形です。Snapの場合、表示回数が約17%増えた一方で単価が約10%下がっており、広告在庫を増やすだけでは売上が比例して伸びないことがわかります。成り立つ条件は、在庫を増やしながら広告主にとっての効果を示し続けることで、そのためには効果測定やターゲティングの仕組みが裏側で欠かせないと考えられます。
サブスクリプションは、広告主の予算ではなく利用者自身から収益を得るため、広告市況の影響を受けにくい収益源になると考えられます。2025年の増収分のうち、その他の収益の増加が広告の増加とほぼ同じ規模だった点は、収益源の分散が進みつつあることを示していると読めます。一方で、広告なしプランは広告在庫を減らすことにもなるため、どの機能を有料にし、どこまで広告を残すかの線引きがトレードオフになります。
費用面では、研究開発費とインフラ費用が大きく、利用者が増えるほど計算資源の費用も増えます。規模で固定費を吸収できるかどうかが黒字化の鍵になると考えられます。
自社事業に持ち帰る問い
- 自社の無料利用者の時間や接点を、誰かに有料で提供できる形になっているでしょうか。
- 広告のような第三者からの収益と、利用者から直接得る収益のバランスはどうなっているでしょうか。
- 量を増やしたときに単価が下がる構造になっていないか、量と単価を別々に追えているでしょうか。
- 有料プランで何を「足す」のか、何を「取り除く」のか(広告なしなど)を決めているでしょうか。
小さく試すなら
- 1週目:自社サービスの利用者接点を洗い出し、無料で提供している価値と、有料化できそうな追加機能を一覧にします。
- 2週目:既存の利用者の一部に、限定機能や先行機能を付けた有料プランの案内を出し、申込率を測ります。
- 3週目:スポンサー枠など第三者向けの露出枠を1つ試作し、関心を持つ取引先があるかを数社に打診します。
- 4週目:利用者あたりの収益を、利用者課金と第三者収益に分けて記録し、どちらを先に伸ばすかを決めます。申込率と打診の反応が一定以上あれば、次の段階へ進みます。
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資料の位置づけ
企業・サービス:Snap Inc. / Snapchatの広告とサブスクリプション。参照資料:Form 10-K(FY2025)。このページは公開情報にもとづく学習用の分析です。Otsumuの支援実績や当該企業との取引関係を示すものではありません。示唆と検証案はOtsumuの考察であり、企業自身の見解とは区別しています。
参考資料と編集について
上記の公開資料(企業の決算短信または年次報告書)をもとに、Otsumuが執筆しました。数値と企業の説明は資料の記載の範囲にとどめ、Otsumuの考察とは分けています。数値は資料の表記のままで、最新の情報は各社の開示をご確認ください。
執筆:Otsumu株式会社 / 編集日 2026.09.27