この事例の要点
- ソフトバンク株式会社は、コンシューマ、エンタープライズ、ディストリビューション、メディア・EC、ファイナンスの5つの報告セグメントを持ち、中核は個人・法人向けのモバイルとブロードバンドの通信サービスです(2026年3月期 決算短信〔IFRS〕(連結))。
- 2026年3月期の売上高は7,038,680百万円(前期比7.6%増)、営業利益は1,042,576百万円(同5.4%増)で、同社は全セグメントで増収になったと説明しています(2026年3月期 決算短信〔IFRS〕(連結))。
- コンシューマ事業のモバイル売上は、通信料の平均単価が安定基調にある中、「ワイモバイル」ブランドを中心にスマートフォン契約数が伸び、前期比173億円(1.1%)増えました(2026年3月期 決算短信〔IFRS〕(連結))。
どんな事業か
コンシューマ事業は、主に国内の個人のお客さまにモバイルサービス、ブロードバンドサービス、「おうちでんき」などの電力サービスを提供しています。携帯端末はメーカーから仕入れ、ソフトバンクショップ等を運営する代理店や個人のお客さまに販売しています(2026年3月期 決算短信〔IFRS〕(連結))。
エンタープライズ事業は、法人のお客さまにモバイル回線や端末レンタル、固定電話やデータ通信、データセンター、クラウド、セキュリティ、AI、IoTなどのソリューションを提供しています。ほかに、法人・個人向けの商材を扱うディストリビューション事業、LINEヤフーグループによるメディア・EC事業、PayPay㈱などによるファイナンス事業があります(2026年3月期 決算短信〔IFRS〕(連結))。
同社は2030年までの長期ビジョンとして「デジタル化社会の発展に不可欠な次世代社会インフラを提供する企業」を掲げています。2027年3月期から2031年3月期までの中期経営計画では、成長戦略「Activate AI for Society」のもとで、2031年3月期に連結営業利益1兆7,000億円を目指すとしています(2026年3月期 決算短信〔IFRS〕(連結))。
収益の仕組み
コンシューマ事業の売上は、毎月の利用料にあたるサービス売上(モバイル、ブロードバンド、でんき)と、端末などの物販等売上に分かれています。2026年3月期のサービス売上は22,215億円、物販等売上は7,936億円でした。物販等売上の増加は、主に携帯端末の平均単価の上昇によるものと説明されています(2026年3月期 決算短信〔IFRS〕(連結))。
費用面では、コンシューマ事業の営業費用が24,643億円で、そのうち減価償却費及び償却費が3,743億円です。営業費用の増加は、でんきの原価が減った一方で、販売促進費やスマートフォンなどの仕入原価が増えたためとしています。また、一部の顧客獲得施策はモバイル売上から控除して計上しています(2026年3月期 決算短信〔IFRS〕(連結))。
料金面では、2025年8月に携帯電話とブロードバンドの各種手数料を改定し、2025年9月から「ワイモバイル」で新料金プラン「シンプル3」の提供を始めています(2026年3月期 決算短信〔IFRS〕(連結))。
数字で確かめる
- コンシューマ事業の売上高:30,151億円、セグメント利益:5,508億円(2026年3月期 決算短信〔IFRS〕(連結))。個人向け通信が大きな利益を生んでいることが読み取れます。
- モバイル売上(コンシューマ):15,918億円、前期比1.1%増(2026年3月期 決算短信〔IFRS〕(連結))。単価より契約数で伸ばしていることが読み取れます。
- ブロードバンド売上(コンシューマ):4,194億円、前期比2.6%増(2026年3月期 決算短信〔IFRS〕(連結))。「SoftBank 光」の契約数増加が売上を支えていることが読み取れます。
- エンタープライズ事業のソリューション等売上:4,950億円、前期比13.2%増(2026年3月期 決算短信〔IFRS〕(連結))。回線の上に載せるサービスが伸びていることが読み取れます。
- 調整後EBITDA:18,196億円、前期比3.8%増(2026年3月期 決算短信〔IFRS〕(連結))。設備の償却前で大きな現金を生む構造が読み取れます。
Otsumuの読み解き:なぜ成り立つのか
ここからはOtsumuの考察です。通信・回線契約のモデルは、先に大きな設備を用意し、その上で多数の契約者から毎月の利用料を受け取る形です。コンシューマ事業で減価償却費が営業費用の中で大きな位置を占めていることは、設備を長く使い続けることが前提の事業であることを示していると読めます。一度契約した利用者が長く使い続けるほど、設備費用を回収しやすくなると考えられます。
サブスクリプションの観点では、単価が安定している中で契約数を積み上げることが売上の伸びにつながっています。一方で、顧客獲得のための施策は売上から差し引かれ、販売促進費も増えています。新しい契約を取るための費用と、既存の契約から得る収入のバランスが収益性を左右するトレードオフだと考えられます。
さらに同社は、通信の上に法人向けのクラウドやセキュリティ、AIのサービスを重ねています。回線という接点を持っていることが、上位のサービスを売る入口になっていると読めます。裏側では、ネットワークの品質維持と、料金プランや手数料の見直しを継続する運営が必要になると考えられます。
自社事業に持ち帰る問い
- 自社の収益のうち、毎月続けて入ってくるものと、一度きりのものの割合はどうなっているでしょうか。
- 新規顧客の獲得費用を、何か月分の利用料で回収できる設計になっているでしょうか。
- 既存の契約という接点の上に、追加で提供できるサービスはあるでしょうか。
- 料金プランや手数料を、費用の変化に合わせて見直す仕組みを持っているでしょうか。
小さく試すなら
- 1週目:自社の売上を継続課金と単発に分け、継続課金の顧客数と平均単価を一覧にします。
- 2週目:直近の新規顧客について、獲得にかかった費用と月々の収入を並べ、回収までの期間を概算します。
- 3週目:継続顧客の一部に、既存契約に追加できるオプションを1つ案内し、申込率を測ります。
- 4週目:回収期間と申込率を見て、獲得を増やすか、既存顧客への追加提案を増やすかを決めます。
関連するビジネスモデル
資料の位置づけ
企業・サービス:ソフトバンク株式会社 / 移動通信・固定通信サービス。参照資料:2026年3月期 決算短信。このページは公開情報にもとづく学習用の分析です。Otsumuの支援実績や当該企業との取引関係を示すものではありません。示唆と検証案はOtsumuの考察であり、企業自身の見解とは区別しています。
参考資料と編集について
上記の公開資料(企業の決算短信または年次報告書)をもとに、Otsumuが執筆しました。数値と企業の説明は資料の記載の範囲にとどめ、Otsumuの考察とは分けています。数値は資料の表記のままで、最新の情報は各社の開示をご確認ください。
執筆:Otsumu株式会社 / 編集日 2026.09.27