この事例の要点
- S&P Global Inc.は、資本市場、エネルギー・コモディティ市場、自動車市場に向けて、ベンチマーク、データ、分析、業務ソリューションを提供しており、事業はMarket Intelligence、Ratings、Energy、Mobility、Indicesの5つです(Form 10-K、FY2025)。
- 収入の形は事業ごとに異なり、データの購読料、格付けの手数料、指数に連動した資産連動フィー、取引所などへの価格データや指数の使用料(sales usage-based royalties)が組み合わさっています(Form 10-K、FY2025)。
- 2025年の売上高は$15,336 million(前年比8%増)、営業利益は$6,478 millionで、営業利益率は42%でした。同社は全報告セグメントで増収になったとしています(Form 10-K、FY2025)。
どんな事業か
同社の顧客は、資産運用会社、投資銀行、商業銀行、保険会社、取引所などの資本市場の参加者、エネルギーや化学、海運、金属、農業などの生産者やトレーダー、そして自動車メーカー、部品メーカー、販売店などです。自社と第三者の両方の販売経路を通じて製品を届けていると説明しています(Form 10-K、FY2025)。
Market Intelligenceは、Capital IQのプラットフォームなどでデータと分析、業務ソフトウエアを提供します。Ratingsは、発行体の信用力についての将来を見据えた意見である信用格付けを提供し、25を超える国に拠点を持ち、150年以上にわたり投資家に情報と独立したベンチマークを提供してきたとしています。Energyはエネルギー・コモディティ市場向けの価格評価(Price Assessments)やベンチマーク、Mobilityは自動車のバリューチェーン向けのデータ、IndicesはS&P Dow Jones Indicesとして指数を提供しています(Form 10-K、FY2025)。
同社は2025年4月、Mobilityセグメントを分離して新たな上場会社とする方針を発表し、2026年半ばの完了を見込んでいます。戦略としては、市場でのリーダーシップの強化、成長分野への展開、全社の機能とAIの統合の3つを掲げています(Form 10-K、FY2025)。
収益の仕組み
Ratingsの収入は、取引型と非取引型に分かれます。取引型は、社債や政府債、証券化商品の新規発行に伴う格付け、銀行ローンの格付けの手数料です。非取引型は、格付けの継続的な監視(surveillance)の手数料や、顧客との関係にもとづく年間料金などです(Form 10-K、FY2025)。
Indicesは、投資家が同社の指数に連動するETFや投資信託に資金を入れたときに得る資産連動フィー、取引所に上場されたデリバティブの取引量に応じた使用料、指数のライセンス料、データの購読料から収入を得ています。Energyも、購読料に加えて、独自の市場価格データや価格評価を商品取引所にライセンスして使用料を得ています。Market Intelligenceは購読料が中心で、処理した取引件数や運用資産額などに応じた変動型の継続収入もあります(Form 10-K、FY2025)。
費用面では、2025年のOperating-related expensesが$4,563 million、Selling and general expensesが$3,417 million、買収に伴う無形資産の償却が$1,069 millionでした(Form 10-K、FY2025)。
数字で確かめる
- 売上高:$15,336 million(2025年)、前年は$14,208 million(Form 10-K、FY2025)。複数の事業がそろって伸びていることが読み取れます。
- 営業利益:$6,478 million、営業利益率42%(2025年)(Form 10-K、FY2025)。売上の多くが利益として残る構造であることが読み取れます。
- S&P Global Inc.に帰属する純利益:$4,471 million(2025年)(Form 10-K、FY2025)。高い利益率が最終利益まで続いていることが読み取れます。
- 株主還元:2025年12月31日までの3年間で約$15.1 billion(Form 10-K、FY2025)。自社株買いと配当で株主に還元していることが読み取れます。
- 従業員数:約44,500人(2025年12月31日時点)、うちアジアが約26,200人(Form 10-K、FY2025)。人員の多くがアジアに置かれていることが読み取れます。
Otsumuの読み解き:なぜ成り立つのか
ここからはOtsumuの考察です。データ事業の強さは、同じデータを多くの顧客に繰り返し提供できる点にあります。一度つくった価格評価や指数、格付けの仕組みは、利用者が増えても追加の費用が大きく増えにくいため、高い営業利益率につながっていると考えられます。
ロイヤリティ(IP使用料)の観点では、指数や価格評価が市場で「基準」として使われていることが前提になります。指数に連動する金融商品や、価格評価を参照する取引所の商品が増えるほど、同社は使用料や資産連動フィーを受け取れます。基準として使われ続けるには、方法の透明性と長年の信頼が欠かせず、それを維持する調査・検証の仕事が裏側で必要になると考えられます。
トレードオフとしては、格付けの取引型収入や資産連動フィーが、債券の発行量や市場の資産額に左右される点が挙げられます。同社は購読料や監視手数料といった継続的な収入と組み合わせることで、市場の変動の影響をならしていると読めます。
自社事業に持ち帰る問い
- 自社が持つデータや評価基準のうち、顧客が繰り返し参照しているものはあるでしょうか。
- 同じデータを、購読・使用料・成果連動など、複数の形で販売できないでしょうか。
- 自社の基準が「業界の物差し」として使われるために、何を公開し、何を守るべきでしょうか。
- 市況に連動する収入と、継続的な収入の比率を把握しているでしょうか。
小さく試すなら
- 1週目:自社が日常的に集めているデータや評価の項目を棚卸しし、外部の人が使いそうなものを選びます。
- 2週目:選んだデータを一覧表や簡単な指標にまとめ、算出方法を1枚の資料に書きます。
- 3週目:取引先の数社に無料で提供し、どの場面で参照したか、継続して見たいかを聞き取ります。
- 4週目:継続希望が一定数あれば、月額の購読料案を示して有料化の可否を確かめます。
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資料の位置づけ
企業・サービス:S&P Global Inc. / 格付け・指数・データ。参照資料:Form 10-K(FY2025)。このページは公開情報にもとづく学習用の分析です。Otsumuの支援実績や当該企業との取引関係を示すものではありません。示唆と検証案はOtsumuの考察であり、企業自身の見解とは区別しています。
参考資料と編集について
上記の公開資料(企業の決算短信または年次報告書)をもとに、Otsumuが執筆しました。数値と企業の説明は資料の記載の範囲にとどめ、Otsumuの考察とは分けています。数値は資料の表記のままで、最新の情報は各社の開示をご確認ください。
執筆:Otsumu株式会社 / 編集日 2026.09.27