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OTSUMU KNOWLEDGE

トレンドマイクロ株式会社のセキュリティ製品・サービスに学ぶ事業設計

トレンドマイクロはサイバーセキュリティに事業を集中し、法人と個人に製品・サービスを中間販売業者などを通じて届けています。繰延収益やARRを重視する姿勢から、継続課金の事業を会計上の売上とは別の物差しで捉える考え方を学べます。

この事例の要点

  • トレンドマイクロはサイバーセキュリティ事業に集中し、2025年12月期の売上高は275,984百万円(前期比1.2%増)でした(2025年12月期 決算短信〔日本基準〕(連結))。
  • 売上の伸びは小さかった一方、人件費や外注費などの費用を抑え、営業利益は57,777百万円(前期比20.1%増)となりました(2025年12月期 決算短信〔日本基準〕(連結))。
  • 同社はPre-GAAP(繰延収益考慮前売上高)ベースの営業利益額の成長とARR(Annual Recurring Revenue)の継続的増加を重要な指標として掲げています(2025年12月期 決算短信〔日本基準〕(連結))。

どんな事業か

同社の企業集団は、コンピュータセキュリティ対策製品の開発、販売及び関連サービスの提供を行う同社と、アメリカズ、欧州、アジア・パシフィックの子会社などで構成されています。同社は連結売上高のほとんどをウイルス対策やその他のセキュリティ製品、サービスの販売に依存していると説明しています(2025年12月期 決算短信〔日本基準〕(連結))。

顧客は法人と個人の両方です。法人向けでは統合セキュリティプラットフォーム「Trend Vision One」(以下、Vision One)を背景に、AI活用次世代SOC関連セキュリティが伸長したと説明されています。個人向けでは、日本で携帯電話ショップでの販売が成長を続けた一方、PC向けセキュリティは低調でした(2025年12月期 決算短信〔日本基準〕(連結))。

地域別の売上高は、日本87,840百万円、アメリカズ地域55,187百万円、欧州地域61,439百万円、アジア・パシフィック地域71,516百万円です(2025年12月期 決算短信〔日本基準〕(連結))。同社はVision Oneについて、SaaS型/オンプレミス型の双方に対応するハイブリッド構成の提供を推進するとしています。

収益の仕組み

同社の各種製品及びサービスの多くは、競合先企業の製品も同時に取り扱っている中間販売業者を経由して販売されていると説明されています(2025年12月期 決算短信〔日本基準〕(連結))。個人向けではECビジネスパートナーの変更がアメリカズ地域やアジア・パシフィック地域の売上に影響したとしており、販売の多くを外部の担い手に頼っていることがうかがえます。

継続課金の性格については、同社がARRの継続的増加を目標に置き、当期末の負債が「繰延収益が大幅に増加したこと等」により291,111百万円に増えたと説明している点に表れています(2025年12月期 決算短信〔日本基準〕(連結))。代金を先に受け取り、提供期間に応じて売上として計上する構造だと読めます。

費用は、売上原価並びに販売費及び一般管理費の合計が218,207百万円(前年同期比2.8%減)で、人件費をはじめ外注費が大きく減少したとされています(2025年12月期 決算短信〔日本基準〕(連結))。なお、今回参照した資料には、製品ごとの料金プランや価格の段階の内容は示されていません。

数字で確かめる

  • 売上高275,984百万円(前期比1.2%増)、営業利益57,777百万円(前期比20.1%増)(2025年12月期 決算短信〔日本基準〕(連結))。売上がほぼ横ばいでも、費用の抑制で利益が伸びたことが読み取れます。
  • Pre-GAAPベースの営業利益80,799百万円(前年同期比4.1%増)(2025年12月期 決算短信〔日本基準〕(連結))。同社が会計上の売上とは別の物差しで事業を見ていることが読み取れます。
  • アメリカズ地域の売上高55,187百万円(前年同期比6.2%減)(2025年12月期 決算短信〔日本基準〕(連結))。地域によって伸び方に差があることが読み取れます。
  • 営業活動によるキャッシュ・フロー64,637百万円(2025年12月期 決算短信〔日本基準〕(連結))。同社は主に未払金及び未払費用の増加によると説明しており、利益に加えて手元に資金が残っていることが読み取れます。
  • 2026年12月期の予想は売上高301,500百万円、営業利益56,400百万円(2025年12月期 決算短信〔日本基準〕(連結))。同社は全体コストが売上高増加率よりも若干高い増加率になると見込んでおり、営業利益率が一時的に若干悪化する見通しであることが読み取れます。

Otsumuの読み解き:なぜ成り立つのか

ここからはOtsumuの考察です。サブスクリプションの型で見ると、この事業が成り立つ条件は、顧客が守りを止められない状態が続き、契約が更新され続けることだと考えられます。同社の資料では、新しい脅威の発生や頻繁な製品アップデートの必要性が業界の特徴として挙げられており、継続的に価値を届け続けること自体が課金の根拠になっていると読めます。繰延収益の増加は、先に受け取った代金が今後の売上として積み上がっている状態と考えられ、同社がARRやPre-GAAPを重視するのもこの時間差を捉えるためだと読めます。

裏側で必要な仕事は、脅威の調査と製品の更新、誤検知や障害を起こさない品質管理、そして中間販売業者との関係づくりです。同社自身が、信頼の失墜を他の会社よりも重大な影響を受けるリスクとして挙げている点は、継続課金の土台が信頼であることを示していると考えられます。

段階制プランの観点では、今回の資料に料金の段階は示されていません。ただ、端末の防御から侵入後の対策まで幅広いソリューションをVision Oneで提供するとしていることから、顧客が必要に応じて利用範囲を広げる余地を設計していると読めます。トレードオフは、単一の事業領域に集中しているため、市場の変化や競争の激化が業績に直接響きやすいことだと考えられます。

自社事業に持ち帰る問い

  • 自社のサービスは、顧客が「止めると困る」状態を継続的につくれているか。
  • 会計上の売上とは別に、先に受け取った代金や年間の継続収益を追う指標を持っているか。
  • 販売を担うパートナーが競合の商品も扱う中で、自社を選んでもらう理由は何か。
  • 利用範囲や機能で段階を設けるなら、顧客が上の段階へ進みたくなるきっかけは何か。

小さく試すなら

  1. 既存顧客を継続期間ごとに並べ、解約した顧客と続いている顧客の利用状況の違いを書き出す。
  2. 現在の提供内容を「最低限の守り」と「追加の対策」に分け、2段階の料金案を作る。
  3. 販売パートナーや既存顧客数社に案を見せ、どの段階を選ぶか、何があれば上の段階に進むかを聞く。
  4. 2〜4週間で集めた回答から、上の段階を選ぶ理由が具体的に語られるかを確認し、語られれば試験販売に進む。

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資料の位置づけ

企業・サービス:トレンドマイクロ株式会社 / セキュリティソフト・サービス。参照資料:2025年12月期 決算短信〔日本基準〕(連結)。このページは公開情報にもとづく学習用の分析です。Otsumuの支援実績や当該企業との取引関係を示すものではありません。示唆と検証案はOtsumuの考察であり、企業自身の見解とは区別しています。

参考資料と編集について

上記の公開資料(企業の決算短信または年次報告書)をもとに、Otsumuが執筆しました。数値と企業の説明は資料の記載の範囲にとどめ、Otsumuの考察とは分けています。数値は資料の表記のままで、最新の情報は各社の開示をご確認ください。

執筆:Otsumu株式会社 / 編集日 2026.09.27

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