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Visa Inc.の決済ネットワーク「VisaNet」に学ぶ事業設計

カードの発行や与信を金融機関に任せ、自らは取引の承認・清算・決済を担う「four-party」モデルで、FY2025のnet revenueは$40,000 million。取引件数に応じて収益を得る設計を学べる事例です。

この事例の要点

  • 同社は、消費者、カードを発行する金融機関(issuer)、加盟店側の金融機関(acquirer)、売り手をつなぐ「four-party」モデルの中で、承認・清算・決済という取引処理サービスを提供しています(Form 10-K、FY2025)。
  • 同社は金融機関ではなく、カードの発行、与信、カード会員向けの金利や手数料の設定を行わず、それらによる収益も信用リスクも負わないと説明しています(Form 10-K、FY2025)。
  • FY2025のnet revenueは$40,000 million(前年比11%増)で、主な要因として処理件数、クロスボーダー取引量、決済額の伸びが挙げられています(Form 10-K、FY2025)。

どんな事業か

同社は、自社の取引処理ネットワークVisaNetを通じて、200を超える国と地域で資金の移動を仲介しています。典型的な取引では、売り手から取引データを受けたacquirerがVisaNet経由でVisaに送り、Visaがissuerに照会して承認を得る流れが説明されています(Form 10-K、FY2025)。

同社の決済商品を使ってサービスを組み立てる顧客には、14,500近くの金融機関が含まれます。クレジット、デビット、プリペイドなどの商品を、金融機関が個人・法人・政府向けに提供する形です。FY2025には5 billion近くの決済用クレデンシャルが、175 million以上の加盟店拠点で利用可能だったとしています(Form 10-K、FY2025)。

このモデルはデジタルウォレットやフィンテック、政府などにも広げられています。発行・加盟店受け入れ・リスク管理・アドバイザリーなどの付加価値サービスも提供しています(Form 10-K、FY2025)。

収益の仕組み

同社は、net revenueの構成としてservice revenue、data processing revenue、international transaction revenue、other revenueを挙げています。data processing revenueは承認・清算・決済などの対価、international transaction revenueはクロスボーダー取引の処理と通貨換算の対価です。一方で、取扱量の拡大や加盟店での受け入れ促進のために、金融機関や売り手などに支払うclient incentivesも構成項目として示されています(Form 10-K、FY2025)。

売り手が負担する手数料(MDR)はacquirerが設定し、interchange reimbursement fee(IRF)は一般にacquirerからissuerに支払われます。同社は、自社がissuerとacquirerから受け取る手数料はIRFやMDRから得ているものではないと説明しています(Form 10-K、FY2025)。

費用面では、損益計算書にoperating expensesの内訳が示されています。FY2025はPersonnelが$6,961 million、Marketingが$1,684 million、Network and processingが$894 million、Litigation provisionが$2,562 millionでした。operating expensesは前年比30%増で、主因は訴訟引当と人件費の増加と説明されています(Form 10-K、FY2025)。

数字で確かめる

  • net revenue $40,000 million、operating income $23,994 million(Form 10-K、FY2025)。売上の大半が営業利益として残る構造が読み取れます。
  • net income $20,058 million(前年$19,743 million)(Form 10-K、FY2025)。訴訟引当の増加がある中でも利益水準が保たれていることが読み取れます。
  • Visaブランドの支払い・現金取引329 billion件のうち、258 billion件をVisaが処理(Form 10-K、FY2025)。ネットワークを流れる取引件数が収益の土台であることが読み取れます。
  • 支払い・現金取引の総額$17 trillion(Form 10-K、FY2025)。取引額に対して同社が得る収益は一部分であり、薄く広く受け取る形であることが読み取れます。
  • Network and processingの費用$894 million(Form 10-K、FY2025)。処理件数の規模に比べ、ネットワーク運用の費用項目が小さく抑えられていることが読み取れます。

Otsumuの読み解き:なぜ成り立つのか

ここからはOtsumuの考察です。この事例は、決済ネットワークという型の典型として読めます。同社は、カードを発行する側と加盟店を集める側の双方に金融機関を置き、自らは両者をつなぐ処理と規則の提供に役割を絞っています。与信や加盟店開拓を金融機関に任せることで、信用リスクや営業の負担を抱えずに取引件数に比例した収益を得られる構造と考えられます。

成り立つ条件は、発行されたカードの数と受け入れる加盟店の数が互いを呼び込む状態にあることです。5 billion近くのクレデンシャルと175 million以上の加盟店拠点という規模は、その循環が大きく回っていることを示していると読めます。裏側で必要な仕事は、止まらない処理基盤、不正検知、参加者間の規則の運営です。client incentivesを支払ってでも取扱量を増やそうとする点は、ネットワークの規模そのものが競争力の源泉だという認識の表れと考えられます。

トレードオフは、参加者間の手数料をめぐる紛争や規制の影響を受けやすいことです。FY2025に訴訟引当が$2,562 millionに増え、operating expensesが30%増えたことは、ネットワークの中心に立つ事業者が負うコストの一例と読めます。

自社事業に持ち帰る問い

  • 自社は、取引の当事者になっているのか、当事者同士をつなぐ役割に徹しているのか。
  • リスクや営業を担うパートナーに任せられる機能は何か。
  • 参加者の双方が増えるほど価値が高まる仕組みを、自社の事業のどこかに組み込めるか。

小さく試すなら

  1. 自社の取引の流れを図にし、誰がリスクを負い、誰が顧客を集め、誰が手数料を決めているかを書き出します。
  2. そのうち一つの機能を外部パートナーに任せる仮説を立て、候補となる相手を数社選びます。
  3. 2〜4週間で候補先に聞き取りを行い、取扱量に連動する手数料で合意できる見込みが立てば、小規模な試験運用に進みます。

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資料の位置づけ

企業・サービス:Visa Inc. / 決済ネットワーク「VisaNet」。参照資料:Form 10-K(FY2025)。このページは公開情報にもとづく学習用の分析です。Otsumuの支援実績や当該企業との取引関係を示すものではありません。示唆と検証案はOtsumuの考察であり、企業自身の見解とは区別しています。

参考資料と編集について

上記の公開資料(企業の決算短信または年次報告書)をもとに、Otsumuが執筆しました。数値と企業の説明は資料の記載の範囲にとどめ、Otsumuの考察とは分けています。数値は資料の表記のままで、最新の情報は各社の開示をご確認ください。

執筆:Otsumu株式会社 / 編集日 2026.09.27

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