この事例の要点
- 同社は、.comと.netのトップレベルドメインについて登録サービスと権威DNS解決を提供し、世界の13のルートサーバーのうち2つを運用していると説明しています(Form 10-K、FY2025)。
- 収益は主に.comと.netのドメイン名登録によるもので、レジストラから年間の登録ごとにICANNとの契約に基づく料金を受け取っています(Form 10-K、FY2025)。
- 2025年のrevenuesは$1,656.6 million(前年比6%増)、operating incomeは$1,121.0 million(同6%増)でした(Form 10-K、FY2025)。
どんな事業か
同社は、.com、.net、.nameのジェネリックトップレベルドメインと、.ccのカントリーコードトップレベルドメインについて、権威ある台帳(authoritative directory)を運用しています。.eduについては技術面のバックエンドシステムを運用しています。インターネットのDNSの中核でRoot Zone Maintainerの機能も担っています(Form 10-K、FY2025)。
同社は、レジストラが新しいドメイン名の登録や変更、移管、更新を行うための共有登録システムを所有・運用しています。ドメイン名を実際に使う登録者(registrant)はレジストラやその再販業者と契約し、同社の直接の顧客はレジストラです。小売価格はレジストラが設定します(Form 10-K、FY2025)。
運用基盤として、米国内のデータセンターと世界200以上の拠点(points of presence)を持ち、サーバーは1日に数千億件規模の取引を処理していると説明しています(Form 10-K、FY2025)。
収益の仕組み
.comと.netのドメイン名は1年から10年の期間で登録でき、同社は登録1年ごとの料金をレジストラから受け取ります。収益の変化は、新規登録数、既存登録の更新率、ICANNとDOC(米国商務省)が認める範囲での値上げによって主に左右されると説明しています(Form 10-K、FY2025)。
価格には契約上の制約があります。2024年11月に更新した.comのRegistry Agreementにより、同社は2030年11月30日まで.comの唯一のレジストリ運営者であり、6年の期間ごとに最後の4年間、各年最大7%まで値上げが認められています。.comの年間卸売料金は、2024年9月1日付で$9.59から$10.26に引き上げられました。また、同社は.comの年間登録1件ごとに$0.2575をICANNに四半期ごとに支払っています(Form 10-K、FY2025)。
費用面では、2025年のcost of revenuesが$196.3 million、research and developmentが$103.6 million、selling, general and administrativeが$235.7 millionでした。cost of revenuesは主に運用システムを管理する人員の給与や減価償却費などで構成されるとしています(Form 10-K、FY2025)。
数字で確かめる
- revenues $1,656.6 million、operating income $1,121.0 million(Form 10-K、FY2025)。operating incomeはrevenuesの67.7%と示されており、売上の大半が利益として残る構造が読み取れます。
- net income $825.7 million(Form 10-K、FY2025)。revenuesの49.8%と示されており、高い収益性が保たれていることが読み取れます。
- .comと.netの登録数(domain name base)は173.5 million(前年末比2.6%増)(Form 10-K、FY2025)。収益の土台となる登録数が増加に転じたことが読み取れます。
- 2025年第3四半期の.comと.netの最終更新率は75.4%(前年同期72.2%)(Form 10-K、FY2025)。既存登録の継続が収益を支えていることが読み取れます。
- deferred revenues $1,035.1 million、long-term deferred revenues $349.4 million(2025年12月31日)(Form 10-K、FY2025)。登録料の前受けが負債として積み上がる形で、将来の収益が先に確保されていることが読み取れます。
Otsumuの読み解き:なぜ成り立つのか
ここからはOtsumuの考察です。この事例は、インフラ保有・利用料とサブスクリプションの組み合わせとして読めます。.comという台帳を唯一の運営者として保有し、そこに登録される一件ごとに毎年の料金を受け取る形です。登録者が同じドメイン名を使い続ける限り更新料が発生するため、継続課金に近い性質を持つと考えられます。
成り立つ条件は、同社が.comの唯一のレジストリ運営者である期間が契約で定められていることと、ドメイン名を使い続けたい登録者が多いことです。一方で、裏側で必要な仕事は、止まらない運用基盤の維持と、攻撃への備えです。同社がデータセンターのミラーリングや災害復旧の訓練を詳しく説明していることは、インフラの信頼性そのものが事業の前提になっていることを示していると読めます。レジストラを通じた販売により、小売や顧客対応を自ら抱えずに済む点も費用を抑える要因と考えられます。
トレードオフは、価格の決定に外部の制約がかかる点です。値上げの上限が契約で決まっており、自由な価格設定はできません。また、ソーシャルメディアやECプラットフォームなど、ドメイン名を登録せずにオンラインで存在を示す手段が需要に影響し得ると同社自身が述べています。
自社事業に持ち帰る問い
- 自社の事業に、顧客が使い続ける限り毎期の料金が発生する「台帳」や「登録」の性質を持つものはあるか。
- 小売や顧客対応を担うパートナーに任せ、自社は基盤の運用に集中できる領域はあるか。
- 前受けで料金を受け取る形にした場合、顧客にとっての利点をどう説明できるか。
- 自社の基盤が止まった場合の影響を、顧客に対してどう保証しているか。
小さく試すなら
- 自社のサービスの中で、顧客が一度登録すると継続して使い続ける要素を洗い出します。
- その要素について、年単位の更新料として切り出した場合の料金案と更新時の手続きを設計します。
- 2〜4週間で既存顧客の一部に年額前払いの選択肢を案内し、選ぶ顧客が一定数いれば再販パートナー経由の提供を検討します。
関連するビジネスモデル
資料の位置づけ
企業・サービス:VERISIGN, INC. / .comドメインのレジストリ運営。参照資料:Form 10-K(FY2025)。このページは公開情報にもとづく学習用の分析です。Otsumuの支援実績や当該企業との取引関係を示すものではありません。示唆と検証案はOtsumuの考察であり、企業自身の見解とは区別しています。
参考資料と編集について
上記の公開資料(企業の決算短信または年次報告書)をもとに、Otsumuが執筆しました。数値と企業の説明は資料の記載の範囲にとどめ、Otsumuの考察とは分けています。数値は資料の表記のままで、最新の情報は各社の開示をご確認ください。
執筆:Otsumu株式会社 / 編集日 2026.09.27