この事例の要点
- 同社は、300 millionを超える評価とレビューへの消費者の信頼を事業の土台と位置づけています(Form 10-K、FY2025)。
- 広告が2025年12月期の売上の95%を占め、広告売上の過半は、オークションで価格が決まるクリック課金(CPC)広告の販売によるものです(Form 10-K、FY2025)。
- 修理や住宅関連などの Services カテゴリーの広告売上が伸びる一方、飲食・小売など(RR&O)の広告売上は減少しました(Form 10-K、FY2025)。
どんな事業か
同社は創業から20年以上、「消費者と優れた地域のビジネスをつなぐ」ことを使命としてきたと説明しています。消費者は無料でレビューを読み、事業者を探します。事業者は広告商品で大きな利用者層に届き、サブスクリプション型のサービスで業務を支えられます(Form 10-K、FY2025)。
同社は、信頼されるコンテンツが購買意欲の高い利用者を集め、そのため集客のためのトラフィック獲得費用を低く抑えられていると述べています(Form 10-K、FY2025)。
事業者向けの商品は大きく3つです。一つ目は検索結果などに表示される Yelp Ads や、複数店舗向けの広告商品。二つ目は、競合の広告を自店ページから外す機能などを含む Upgrade Package や Verified License などのページ関連商品。三つ目は、飲食店向けの予約・待ち行列管理 Yelp Guest Manager、AIの電話応対 Yelp Host・Yelp Receptionist などのサブスクリプションや、データの利用料です。2026年2月には、AIを使った問い合わせ管理の Hatch を買収しました(Form 10-K、FY2025)。
収益の仕組み
売上の中心は広告です。個々のクリックの価格は、広告枠ごとのオークションで決まります。同社の入札アルゴリズムは、広告主の予算を効率よく使ってクリックを最大化するよう設計されていると説明されています(Form 10-K、FY2025)。
送客に対する課金もあります。自動車修理の RepairPal のネットワークでは、修理工場が月額料金を払い、さらに紹介客の修理代の一定割合か、紹介1人あたりの固定料金を支払います(Form 10-K、FY2025)。
広告以外の売上(Other)は、サブスクリプション、API を通じたデータのライセンス料、料理の注文連携などの取引手数料から成ります(Form 10-K、FY2025)。
費用について、売上原価は主にWebサイトの基盤費用で、第三者サイトへの広告配信費用、カード決済手数料、RepairPal の紹介パートナーへの収益分配も含みます。販売・マーケティング費は主に営業・マーケティング人員の人件費で、事業者と消費者の獲得費用も含むと説明されています(Form 10-K、FY2025)。
数字で確かめる
- 2025年12月期の純収益(Net revenue)は$1,464,955 thousandで、前期の$1,412,064 thousandから4%増えました(Form 10-K、FY2025)。緩やかな成長を続けていることが読み取れます。
- 同期の営業利益(Income from operations)は$184,521 thousandで22%増、純利益は$145.6 millionでした(Form 10-K、FY2025)。売上を上回る速さで利益が伸びたことが読み取れます。
- Services の広告売上は$947,564 thousandで8%増、RR&O は$443,696 thousandで(6)%でした(Form 10-K、FY2025)。業種によって需要の向きが分かれていることが読み取れます。
- Yelp Ads の平均クリック単価は9%上がり、広告クリック数は3%減りました(Form 10-K、FY2025)。量より単価で売上を伸ばしたことが読み取れます。
- 同期の販売・マーケティング費は$592,107 thousandで、総費用$1,280,434 thousandの中で最も大きい項目です(Form 10-K、FY2025)。広告を売る営業体制が費用の中心であることが読み取れます。
- Request-A-Quote のプロジェクト数は前年比で約5%増えました(Form 10-K、FY2025)。見積もり依頼という送客の入口が広がっていることが読み取れます。
Otsumuの読み解き:なぜ成り立つのか
ここからはOtsumuの考察です。広告と成果報酬(送客・リード課金)の型が成り立つには、事業者がお金を払ってでも届きたい利用者を、安く集め続けられることが条件です。同社はレビューという利用者自身が作るコンテンツで集客しているため、集客費用を抑えられていると説明しています。コンテンツの信頼が集客の原価を下げ、広告の価値を上げていると読めます。
裏側で必要な仕事は、レビューの品質管理と、小さな広告主への営業です。広告主の多くはいつでも出稿をやめられ、予算も限られると同社自身が述べており、販売・マーケティング費が最大の費用項目であることもそれを裏づけていると考えられます。継続してもらうには、広告の効果を示す仕組みや、広告以外の業務ツールで関係を深めることが必要になると読めます。
トレードオフは、地域の景気に広告需要が左右されやすい点です。RR&O の広告売上は減り、Services でも第4四半期に需要が弱まったと説明されています。同社がAIの電話応対や問い合わせ管理などのサブスクリプションを広げるのは、広告だけに頼らない収益の柱を作るためだと考えられます。
自社事業に持ち帰る問い
- 自社の集客は、顧客自身が作るコンテンツや口コミで費用を下げられる余地があるでしょうか。
- 広告枠の「掲載料」と、問い合わせ1件ごとの「送客料」の、どちらが顧客にとって納得しやすいでしょうか。
- いつでも解約できる小口の顧客に、続けてもらう理由を何で示しているでしょうか。
- 景気の影響を受けやすい業種に売上が偏っていないでしょうか。
小さく試すなら
- 1週目に、自社サイトやサービスへの問い合わせを業種・経路別に集計し、送客の実績を数字で示せる状態にします。
- 掲載先の事業者3〜5社に、定額掲載と問い合わせ1件ごとの課金の2案を示し、どちらを選ぶかと許容できる単価を聞きます。
- 2〜3週目に、選ばれた方式で少数の事業者と試験契約を結び、問い合わせ数と成約の報告を毎週共有します。
- 4週目に、事業者の継続意向と1社あたりの収益を確認します。継続意向が高ければ、問い合わせ管理などの付帯ツールを有料で加える検証に進みます。
関連するビジネスモデル
資料の位置づけ
企業・サービス:Yelp Inc. / ローカルビジネスのレビューと広告。参照資料:Form 10-K(FY2025)。このページは公開情報にもとづく学習用の分析です。Otsumuの支援実績や当該企業との取引関係を示すものではありません。示唆と検証案はOtsumuの考察であり、企業自身の見解とは区別しています。
参考資料と編集について
上記の公開資料(企業の決算短信または年次報告書)をもとに、Otsumuが執筆しました。数値と企業の説明は資料の記載の範囲にとどめ、Otsumuの考察とは分けています。数値は資料の表記のままで、最新の情報は各社の開示をご確認ください。
執筆:Otsumu株式会社 / 編集日 2026.09.27