この事例の要点
- 同社の4ブランドの店舗は155の国・地域に63,285店あり、2025年12月31日時点で97%を独立したフランチャイジーまたはライセンシーが運営しています(Form 10-K、FY2025)。
- 店舗単位のフランチャイジーは、店舗売上の一定割合(通常4%〜6%)の継続フィーを毎月支払い、ブランドの広告・販促にも一定額を支出する義務があります(Form 10-K、FY2025)。
- 同社は資本を「アセットライトなフランチャイザーモデル」に沿って投じ、既存店売上の成長と新規出店で長期の成長を目指すとしています(Form 10-K、FY2025)。
どんな事業か
同社は KFC、Taco Bell、Pizza Hut、Habit Burger & Grill の4つのコンセプトで飲食店を展開し、セグメントもこの4ブランド別の Division で構成されています。KFC Division は33,897店・149の国と地域、Taco Bell Division は9,030店、Pizza Hut Division は19,974店、Habit Burger & Grill Division は384店です(Form 10-K、FY2025)。
同社は約1,500のフランチャイジーと契約しています。店舗単位のフランチャイズに加え、一定地域での出店とサブフランチャイズを任せるマスターフランチャイズも使い分けています。フランチャイズ店舗の約40%がマスターフランチャイズの下で運営されています(Form 10-K、FY2025)。
本部は各ブランドの運営マニュアルで食品安全、調理手順、設備基準などの標準を定め、日々の運営と従業員の雇用はフランチャイジー側の責任です。2025年には、注文アプリ、POS、キッチンと配達の最適化、在庫・労務管理などをまとめた自社プラットフォーム Byte by Yum! を導入しました(Form 10-K、FY2025)。
収益の仕組み
フランチャイジーは土地・建物・設備・在庫などに自ら資本を投じます。本部は、出店時の初期フィー、契約更新や譲渡時のフィーに加え、店舗売上に連動する継続フィーを受け取ります。最大のマスターフランチャイジーは、中国本土のシステム売上の3%を継続フィーとして支払っています(Form 10-K、FY2025)。
売上高の区分は、直営店の売上(Company sales)、フランチャイズ・不動産収入(Franchise and property revenues)、広告などのためのフランチャイズ拠出金(Franchise contributions for advertising and other services)の3つです。フランチャイズ店舗の売上そのものは同社の売上に含まれず、受け取るフィーだけが計上されます(Form 10-K、FY2025)。
費用面では、直営店の費用(食材・包材、店舗人件費、賃料など)、一般管理費、フランチャイズ関連の費用、そして拠出金に対応する広告などの費用が計上されています(Form 10-K、FY2025)。
数字で確かめる
- 2025年12月期の売上高(Total revenues)は$8,214 millionで、前期の$7,549 millionから9%増えました(Form 10-K、FY2025)。規模の拡大が続いていることが読み取れます。
- 同期のフランチャイズ・不動産収入は$3,473 million、直営店の売上は$2,945 millionでした(Form 10-K、FY2025)。加盟店からのフィー収入が直営店の売上を上回っていることが読み取れます。
- 広告などのためのフランチャイズ拠出金は$1,796 million、対応する費用は$1,799 millionでした(Form 10-K、FY2025)。拠出金はほぼそのまま広告などに使われていることが読み取れます。
- 全店舗のシステム売上(System Sales)は$68,295 millionでした(Form 10-K、FY2025)。本部の売上を大きく上回る規模の店舗売上がフィーの源になっていることが読み取れます。
- 2025年の新規出店は4,567店、閉店を差し引いた純増は1,939店でした(Form 10-K、FY2025)。加盟店の資本で出店が進んでいることが読み取れます。
- システム店舗のデジタル売上は$40 billionと全体の60%に近づきました(Form 10-K、FY2025)。デジタル基盤が店舗売上の大きな部分を支えていることが読み取れます。
Otsumuの読み解き:なぜ成り立つのか
ここからはOtsumuの考察です。フランチャイズ型が成り立つには、加盟店が自分で資本を投じてでも出店したいと思えるほど、1店舗の採算が良いことが前提になります。同社が2026年の優先事項の一つに「フランチャイジーの店舗単位の採算を高め、新規出店の後押しとする」ことを挙げているのは、この前提を守ることが成長の条件だからだと読めます。
本部の裏側の仕事は、ブランド管理、マニュアル整備、共通システムの提供です。同社はシステムを自社の規模を生かした有利な条件で加盟店に提供するとしており、本部の規模そのものが加盟店への価値になっていると考えられます。広告拠出金と広告費がほぼ同額であることは、集めたお金をブランドのために使い切る仕組みが、加盟店との信頼の土台になっていると読めます。
トレードオフは、日々の店舗運営を加盟店に任せるため、ブランドごとの体験の品質を本部が直接は管理できない点です。また、ブランドによって成績に差が出ると、そのブランドの加盟店全体が影響を受けます。Pizza Hut Division のシステム売上(為替影響除く)が(3)%となり、同ブランドの戦略的な選択肢の検討に入ったことは、その難しさを示していると考えられます。
自社事業に持ち帰る問い
- 自社のサービスを他者に運営してもらうとしたら、相手が自ら投資したくなるほど1拠点の採算は良いでしょうか。
- 売上連動のフィーの率を、相手の採算を壊さない水準でどう決めるでしょうか。
- 本部だからこそ提供できる価値(仕入れ、システム、ブランド)は何でしょうか。
- 運営を任せた先の品質を、どの基準と手順で保つでしょうか。
小さく試すなら
- 1週目に、自社の1拠点または1サービス単位の売上・費用・利益を整理し、他者が運営した場合の採算を試算します。
- 運営マニュアルの骨子(品質基準、手順、報告の仕方)を2週目までに作ります。
- 信頼できるパートナー1〜2社に、売上連動のフィーで一部の運営を任せる試行を3〜4週間行います。
- パートナー側の利益と品質の指標を毎週確認し、パートナーが続けたいと答え、品質基準も守られていれば、募集条件を整えて対象を広げます。
関連するビジネスモデル
資料の位置づけ
企業・サービス:Yum! Brands, Inc. / KFC・ピザハット・タコベルのフランチャイズ。参照資料:Form 10-K(FY2025)。このページは公開情報にもとづく学習用の分析です。Otsumuの支援実績や当該企業との取引関係を示すものではありません。示唆と検証案はOtsumuの考察であり、企業自身の見解とは区別しています。
参考資料と編集について
上記の公開資料(企業の決算短信または年次報告書)をもとに、Otsumuが執筆しました。数値と企業の説明は資料の記載の範囲にとどめ、Otsumuの考察とは分けています。数値は資料の表記のままで、最新の情報は各社の開示をご確認ください。
執筆:Otsumu株式会社 / 編集日 2026.09.27