Chain-of-Thought(思考の連鎖)とは
Chain-of-Thought(チェーン・オブ・ソート、CoT)とは、生成AIに対して、いきなり結論を出させるのではなく、結論に至るまでの考えを一歩ずつ順に書き出させることで、計算や推論、判断の正確さを高める手法です。日本語では「思考の連鎖」と訳されます。
人間も、暗算でいきなり答えを出すより、途中式を書きながら解く方が間違いにくいものです。同じように、生成AIにも「まず条件を整理し、次に該当する規則を確認し、最後に結論を出す」という過程を書かせると、複数の条件が絡む問題で誤りが減ることが知られています。
もともとは研究論文で提案された考え方で、例の中に考える過程を含めて示す方法と、「段階を追って考えてください」と指示するだけの方法があります。近年は、内部で考える過程を経てから回答する機能を備えたモデル(推論モデルなどと呼ばれます)も登場しています。
仕組み・ポイント
生成AIは、前に書いた文章を踏まえて次の言葉を作ります。考える過程を書かせると、その過程自体が次の判断の材料になり、条件の見落としや飛躍が起きにくくなります。
| 方法 | やり方 | 特徴 |
|---|---|---|
| 指示による誘導 | 「手順を追って考えてから結論を書いて」と指示する | 手軽。効果はモデルや問題によって差がある |
| 例による誘導 | 考える過程を含んだ解答例を示す(Few-shotと組み合わせる) | 考え方の型を伝えられる |
| 手順の明示 | 「1. 条件を列挙 2. 規則に当てはめる 3. 結論」と手順を指定する | 業務ルールに沿った判断をさせやすい |
| 推論機能のあるモデルの利用 | モデル側が内部で考えてから回答する | 指示の工夫が少なくても複雑な問題に強い傾向 |
効果が出やすいのは、計算、条件分岐の多い判断、複数の資料の突き合わせなど、「途中の手順」がある問題です。逆に、単純な要約や言い換えでは効果が小さく、出力が長くなるだけのこともあります。
実務での使い方・具体例
架空の例として、ある旅行会社が、予約の取り消し料をAIで計算し、顧客への案内文を作る仕組みを考えます。取り消し料は、出発日までの日数、プランの種類、繁忙期かどうかによって変わります。
単に「取り消し料を計算して」と頼むと、条件の当てはめを誤ることがあります。そこで次のように手順を指定します。
- 予約情報から、出発日、取り消し日、プランの種類を抜き出す
- 出発日までの日数を計算する
- 規定表に当てはめて、該当する区分を特定する
- 区分の料率で取り消し料を計算する
- 計算の根拠を添えて、顧客向けの案内文を作る
業務システムでは、考える過程(1〜4)は担当者の確認用に記録し、顧客には5の案内文だけを見せる、という使い分けがよく行われます。過程が残っていると、誤りがあったときにどの段階で間違えたのかを特定しやすく、改善にもつなげやすくなります。
計算はプログラムに任せる選択肢も
ただし、金額の計算のように正確さが必須の処理は、生成AIの推論に頼るのではなく、日数計算や料率の適用をプログラムで行い、AIには条件の読み取りと案内文の作成だけを任せる設計の方が確実です。AIにツールを呼び出させるFunction Callingを使えば、AIの柔軟さとプログラムの正確さを組み合わせられます。
Chain-of-Thoughtを使うかどうかは、次の観点で判断すると整理しやすくなります。
- 判断に使う条件が三つ以上あるか
- 途中の計算や、資料同士の突き合わせが必要か
- 誤ったときの影響が大きく、根拠を後から確認したいか
- 応答時間や費用の増加を許容できるか
当てはまるものが多いほど、考える過程を書かせる効果が期待できます。
よくある誤解と注意点
- 「過程が書かれていれば正しい」わけではない:もっともらしい過程を書きながら、結論を誤ることがあります。重要な判断は人やプログラムで検証します。
- 費用と時間が増える:過程を書かせる分、出力のトークンが増え、応答が遅くなります。必要な処理に絞って使います。
- すべての作業に効くわけではない:単純な作業では効果が小さく、冗長になるだけのことがあります。
- 利用者に見せる内容を分ける:考える過程には、顧客に見せるべきでない内部情報が含まれる場合があります。表示する部分と記録する部分を設計で分けます。
関連用語
- プロンプトエンジニアリング:Chain-of-Thoughtを含む、指示文設計の技術全般
- Few-shotプロンプト:考える過程を含む例を示す方法と組み合わせやすい
- Function Calling(ツール呼び出し):計算などを外部の処理に任せる仕組み
- LLM-as-a-Judge:AIに出力を評価させる手法。判定理由を書かせる際にも使われる
- Human-in-the-Loop:人が確認する工程を組み込む考え方
Otsumuに相談できること
「AIに判断を任せたいが、条件が複雑で誤りが心配」という業務では、AIに考えさせる部分、プログラムで確実に処理する部分、人が確認する部分を切り分ける設計が重要です。Otsumuは生成AIシステム開発やAIエージェント開発で、業務の流れに合わせた役割分担の設計から実装・運用まで支援しています。
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執筆:Otsumu株式会社 / 編集日 2026.10.01