事前承認事項(拒否権条項)とは
事前承認事項とは、会社が特定の重要な事項を実行する前に、投資家などの同意を得る必要があると、契約で定めたものです。承認が得られなければ実行できないという意味で、拒否権条項とも呼ばれます。
投資家は、出資した会社が、自分の意図しない方向に進まないよう、重要な事項に関与する権利を求めます。会社側にとっては、機動的な経営が妨げられないかが、注意すべき点です。
仕組み・ポイント
一般に対象となりやすい事項と、設計の観点です。
- 資本に関する事項:新たな株式の発行や、定款の変更など。
- 組織に関する事項:合併、会社の分割、事業の売却など。
- 財務に関する事項:大きな借入、配当の実施など。
- 経営に関する事項:役員の選任や、事業の大幅な変更など。
- 金額の基準:一定の金額以下の取引は、対象外とする設計。
事前承認の設計では、投資家の安心感と、会社の機動力の、両方を保つことが目標です。重要な事項に絞って承認を求めることで、投資家は必要な関与を確保でき、会社は日常の判断を素早く行えます。
また、承認を求める窓口や、判断の期限を決めておくと、運用がスムーズになります。
承認の対象となる事項の範囲は、投資家の立場からは、守るべき利益と深く結びついています。会社側は、投資家が何を守りたいのかを理解したうえで、対象の範囲を話し合うと、折り合いがつけやすくなります。
承認を求める際の資料の準備も、事前に決めておくと、手続きが滞りません。
実務での使い方・具体例
架空の例として、新規事業の会社が、出資を受ける際に、事前承認事項の案を受け取った場面を考えます。担当者は、一覧にある事項を、日常の業務で頻繁に発生するものと、年に一度あるかないかの重要なものに分類します。
日常的な採用や、小さな投資まで承認が必要だと、経営の速度が落ちます。そのため、金額の基準を設けて、一定以下は対象外にする交渉を検討します。
承認を求める手続きの方法や、回答の期限も、あらかじめ決めておくと、実行の遅れを防げます。
たとえば、承認事項に「一定の金額を超える借入」とある場合、どの金額から対象になるかが事業の実態に合っているかを確認します。金額の基準が低すぎると、日常の資金繰りの判断にまで、承認が必要になってしまいます。
進め方の例
- 契約案に挙がっている事項を、一覧に書き出す。
- 日常的な事項と、重要な事項に分類する。
- 金額の基準や、対象の範囲を調整する交渉を行う。
- 承認の窓口と、回答の期限を運用ルールとして決める。
よくある誤解と注意点
- 事前承認が必要な範囲が広いと、経営の自由度が大きく制限されます。
- 承認の手続きや期限が曖昧だと、必要な場面で動けなくなる恐れがあります。
- 投資家の同意が得られない場合の扱いを、決めておく必要があります。
- 契約に違反すると、重大な結果になる場合があります。社内でも内容を共有します。
- 承認を求める事項が発生したときの社内の流れ、たとえば誰が投資家に連絡し、どの資料を添えるかを、あらかじめ決めておくと、実行の遅れを防げます。
- 承認の記録は、メールなどの書面で残し、後から確認できるようにします。
制度や基準は変わるため、最新情報は公的機関・専門家で確認してください。
関連用語
- 投資契約・株主間契約:条項を定める契約
- 取締役指名権:経営への関与に関する別の権利
- 情報開示条項(情報請求権):報告に関する条項
- 株主総会の特別決議:重要事項を決める株主総会の決議
Otsumuに相談できること
契約で経営への関与を取り決める場面では、承認が必要な事項を、重要度と頻度で整理することが役に立ちます。詳しくは事業戦略・調査の支援をご覧ください。状況の整理から始めたい場合は、30分の無料相談をご利用ください。
執筆:Otsumu株式会社 / 編集日 2026.10.04