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ダッシュボードはBIツールで作るか自社開発するかの判断基準

社内向けのダッシュボードはまずBIツール、顧客に見せる画面や複雑な権限が必要な画面は自社開発が基本です。見る人・権限・変更頻度・操作の有無の四つの判断基準と、埋め込みなど中間の選択肢、費用の比べ方を解説します。

ダッシュボードをBIツールで作るか、自社で開発するかは、「誰が見るのか」と「どこまで細かく見せ方や権限を制御する必要があるのか」でほぼ決まります。社内の経営会議や部門の管理に使う画面であれば、まずBIツールで作るのが基本です。一方、顧客や取引先にログインして見てもらう画面、顧客ごとにデータを厳密に分ける必要がある画面、自社サービスの機能の一部として組み込む画面などは、自社開発のほうが向いていることが多くなります。

ただし、実際の判断はこの二択ほど単純ではありません。BIツールの画面を自社サービスに埋め込む方法もあれば、社内向けでも業務の操作と一体になった画面が必要で開発したほうがよい場合もあります。また、どちらを選んでも、その手前にあるデータの集約と定義の整理は同じように必要です。

この記事は、ダッシュボードを新たに作る、あるいは既存の画面の作り替えを検討している事業責任者・プロダクト責任者・情報システム担当の方に向けたものです。両者の違い、判断基準、中間の選択肢、判断の手順、費用の考え方、よくある失敗までを順に整理します。

BIツールと自社開発の違い

まず、両者が何を得意とし、何を苦手とするかを整理します。

BIツールは、データに接続し、グラフや表を組み合わせて画面を作るための既製のソフトウェアです。ドラッグ操作で画面を作れるものが多く、プログラムを書かずに、短期間で多様な画面を作れます。画面の追加や変更も、事業側の担当者が自分で行えることが多いのが利点です。一方で、画面の見た目や操作の流れ、権限の制御はツールが用意した範囲に限られます。

自社開発は、Webアプリケーションとして画面を一から作る方法です。見た目、操作、権限、他の機能との連携を自由に設計できます。顧客が使うサービスの一部として違和感なく組み込むことも可能です。一方で、画面の追加や変更のたびに開発が必要になり、初期の開発と継続的な保守の手間がかかります。

比較軸BIツール自社開発
立ち上げの速さ速い。既存のデータがあれば短期間で画面を作れる設計と開発が必要で、時間がかかる
画面の変更事業側の担当者でも変更しやすい変更のたびに開発作業が必要
見た目・操作の自由度ツールの範囲内自由に設計できる
権限の細かさ標準的な権限は設定できるが、複雑な条件は工夫が必要業務の規則どおりに実装できる
社外への公開ツールやプランによって条件が異なる自社サービスとして提供できる
他機能との連携画面を見ることが中心画面から操作や入力に直接つなげられる
費用の構造利用者数や機能に応じた利用料が継続初期開発費と保守費、インフラ費
向いている利用者社内の経営層・管理職・分析担当顧客、取引先、現場の利用者

BIか自社開発かを分ける4つの判断基準

ここからは、方式を選ぶための判断基準を四つに分けて説明します。四つのうち一つでも自社開発が向く条件に強く当てはまる場合は、少なくともその画面については開発を検討する価値があります。反対に、四つすべてでBIツールが向く条件に当てはまるなら、迷わずBIツールから始めて構いません。判断は会社全体で一度に行うのではなく、画面ごとに行うのがポイントです。同じ会社の中でも、経営会議の画面と顧客向けのレポート画面では、答えがまったく違うことがよくあります。

判断基準1:見る人は社内か社外か

最も大きな判断軸は、見る人が社内か社外かです。

社内向けの画面では、多少の操作の分かりにくさは慣れや説明で補えますし、権限も部門や役職といった単純な単位で分ければ足りることが多いです。画面の要望も頻繁に変わるため、事業側で素早く直せるBIツールの利点が大きく効きます。

社外向けの画面では、事情が変わります。顧客は操作の説明を受けずに使うため、自社サービスと同じ見た目や操作感で、迷わず使えることが求められます。また、ある顧客に他の顧客のデータが見えることは、絶対にあってはならない事故です。ログインの仕組みも、自社サービスのアカウントと一体であることが望ましいでしょう。こうした要件をBIツールだけで満たそうとすると、利用条件や費用、権限の設定が複雑になりがちです。

判断基準2:権限とデータの分け方の複雑さ

二つ目の軸は、誰にどのデータを見せるかの規則がどれだけ複雑かです。

  • 部門ごと、役職ごとに見られる画面を分ける程度であれば、多くのBIツールの標準機能で対応できます。
  • 担当者は自分の担当顧客だけ、マネージャーは自分のチームの顧客だけ、というように行単位で見られる範囲を変える場合も、BIツールの機能で対応できることがありますが、設定と検証の手間が増えます。
  • 顧客企業ごとにデータを分け、さらにその企業の中で役割ごとに見られる範囲を変える、といった多層の権限が必要な場合は、自社開発のほうが確実に制御できます。

権限の考え方はRBAC(ロールベースアクセス制御)、顧客ごとにデータを分けて一つのサービスを提供する仕組みはマルチテナントの解説も参考になります。権限が複雑になるほど、設定の誤りが情報漏えいに直結するため、テストのしやすさも含めて判断します。

判断基準3:画面の変更頻度と見せ方の自由度

三つ目の軸は、画面がどのくらいの頻度で変わり、どこまで見せ方にこだわる必要があるかです。

事業の立ち上げ期や、指標を試行錯誤している段階では、画面は頻繁に変わります。この時期に自社開発で作り込むと、変更のたびに開発が必要になり、試行錯誤の速度が落ちます。見るべき指標が固まるまではBIツールで回し、定着した画面だけを必要に応じて開発に移す、という順序が合理的です。

反対に、画面の構成がほぼ固まっていて、顧客に提供する価値の一部として見せ方そのものが重要な場合は、自社開発が向いています。たとえば、顧客の業績を分かりやすく示すレポート画面が、サービスを選んでもらう理由の一つになっているような場合です。

判断基準4:画面から操作につなげる必要があるか

四つ目の軸は、画面を「見る」だけでよいのか、画面から「操作する」必要があるのかです。

BIツールは、基本的にデータを見るための道具です。数字を見て気づいた問題に対して、別のシステムを開いて対応する流れになります。これで困らないなら、BIツールで十分です。

一方、在庫が少ない商品の一覧から直接発注をかけたい、対応が必要な顧客の一覧から担当者を割り当てたい、といった「見てすぐ操作する」流れが業務の中心になる場合は、画面と操作を一体にした自社開発の価値が高まります。この場合、ダッシュボードというより、業務システムの一画面として設計することになります。

中間の選択肢:埋め込みと段階的な移行

BIツールか自社開発かの二択にせず、組み合わせる方法もあります。

BIツールの画面を埋め込む

多くのBIツールは、作った画面を自社のWebサービスの中に埋め込む機能を提供しています。自社サービスにログインした顧客に、その顧客のデータだけを表示したBIの画面を見せる、といった使い方です。画面の作成はBIツールで素早く行い、ログインや他の機能は自社サービス側で持つことができます。

ただし、埋め込みの機能や条件、利用料の考え方はツールごとに大きく異なり、社外向けの利用には別の契約や上位のプランが必要になることがあります。見た目を自社サービスに合わせられる範囲にも限りがあります。採用する前に、最新の条件を公式情報で確認し、想定する顧客数で費用を試算しておく必要があります。

社内はBI、社外は開発と分ける

同じデータを使いながら、社内の管理用画面はBIツールで、顧客に見せる画面は自社開発で作る方法です。データの集約と指標の定義は共通にし、出口だけを分けます。社内では素早く試行錯誤し、そこで固まった見せ方を顧客向けの画面に反映する、という流れが作れます。

BIで始めて、固まったら開発に移す

最初はBIツールで画面を作り、利用者の反応と使われ方を確かめてから、本当に必要な画面だけを開発に移す方法です。最初から作り込みすぎる失敗を避けられます。移行を見越して、データの集約と定義をBIツールの外(データ基盤)に置いておくと、移行の手間が小さくなります。データ基盤の作り方は複数システムのデータを集約するで説明しています。

BIか自社開発かを判断する手順

迷ったときは、次の手順で整理すると結論が出しやすくなります。

  1. 見る人を列挙する:画面を見る人を、社内(役職・部門)と社外(顧客・取引先)に分けて書き出します。
  2. 画面ごとの目的を書く:画面ごとに、見る人が何を判断し、次に何をするのかを一文で書きます。
  3. 権限の規則を書く:誰がどのデータを見てよいか、見てはいけないかを、例外も含めて書き出します。
  4. 操作の有無を確認する:画面から入力や操作に直接つなげる必要があるかを確認します。
  5. 変更頻度を見積もる:指標や画面の構成が、今後どのくらいの頻度で変わりそうかを見積もります。
  6. BIツールで作れるかを試す:社内向けの画面や、埋め込みで足りそうな画面は、実データでBIツールの試作を作り、権限や見た目の要件を満たせるかを確かめます。
  7. 費用を同じ期間で比べる:BIツールの利用料と構築費、自社開発の初期費用と保守費・インフラ費を、同じ年数で比べます。利用者や顧客が増えた場合の変化も試算します。
  8. 画面ごとに方式を決める:全体を一つの方式にそろえる必要はありません。画面ごとに、最も合う方式を選びます。

社内向けのBIツールの選び方は、BIツールの選び方で比較軸を詳しく説明しています。

費用の考え方:初期費用と継続費用を分けて比べる

BIツールと自社開発の費用は、構造がまったく違うため、単純に比べると判断を誤ります。具体的な相場ではなく、比べ方の枠組みを示します。

BIツールの場合、かかる費用は主に、ツールの利用料(作成者・閲覧者の人数や機能に応じて継続)、画面とデータの構築作業、データの保管や処理の費用、運用・保守の作業です。初期の構築は比較的小さく済む一方、利用者が増えるほど利用料が増える構造のものが多いため、社外の顧客に見せる場合は顧客数の増加とともに費用がどう変わるかを必ず試算します。

自社開発の場合、かかる費用は主に、設計と開発の作業(作業量 × 単価)、サーバーやデータベースなどのインフラ費用、リリース後の保守と改修の作業です。初期の費用は大きくなりやすい一方、利用者が増えても費用が比例して増えるとは限りません。ただし、画面の追加や変更のたびに開発費がかかり、ライブラリの更新などの保守も継続的に必要です。

比較するときは、三年程度の期間で、初期費用と継続費用を合計して比べると、構造の違いが見えやすくなります。また、どちらの方式でも共通してかかるデータの集約と定義の整理の費用は、別に分けて考えます。この部分を片方の見積もりにだけ含めて比べると、判断を誤ります。

具体例:顧客向けレポート画面の作り方を決めた場面

ここでは架空の一般例として、店舗向けに予約管理のSaaSを提供している会社を想定します。

この会社では、社内の経営会議用にBIツールでダッシュボードを作り、契約数や解約、利用状況を見ていました。あるとき、顧客である店舗から「自分の店の予約数や来店の傾向を見たい」という要望が増え、顧客向けのレポート画面を作ることになりました。

最初に検討したのは、社内で使っているBIツールの画面を埋め込む方法です。試作してみると、画面自体は短期間で作れたものの、店舗ごとにデータを分ける設定、自社サービスのログインとの連携、顧客数が増えたときの利用料の見通しに不安が残りました。また、店舗のオーナーは操作の説明なしで使うため、自社サービスと同じ見た目と操作感で表示したいという要望もありました。

そこで、顧客向けのレポート画面は自社サービスの機能として開発し、社内の分析は引き続きBIツールで行うと決めました。ただし、最初から多くの指標を載せるのではなく、社内のBIで「店舗がよく見ている指標」を先に検証し、反応のよかった三つの指標だけで最初の画面を作りました。データの集約と定義は共通のデータ基盤に置き、社内の画面と顧客向けの画面で同じ数字が出るようにしています。

この例のように、社内と社外で方式を分け、社内のBIを顧客向け画面の試作の場として使うと、開発する範囲を必要最小限に絞れます。

よくある失敗と避け方

社外向けの要件を後から追加する:社内向けにBIツールで作った画面を、後から顧客にも見せようとして、権限や利用条件の壁に当たることがあります。将来社外に見せる可能性があるなら、最初の段階で要件として書き出しておきます。

指標が固まる前に自社開発する:何を見せるべきかが定まらないまま開発すると、リリース後に作り直しが続きます。指標の検証はBIツールで行い、固まったものを開発に移します。

BIツールで無理に複雑な権限を実現する:標準機能の範囲を超えた権限を工夫で実現すると、設定が複雑になり、誤設定に気づきにくくなります。権限の誤りが重大な事故につながる場合は、開発で確実に制御するほうが安全です。

保守の手間を見積もらない:自社開発の画面は、作った後も改修やライブラリの更新が必要です。BIツールも、データの取り込みや定義の変更に追従する作業が続きます。どちらを選んでも、誰が保守するかを決めておきます。

データの定義を画面ごとに持つ:BIツールと自社開発の画面で、それぞれ別に計算式を持つと、同じ指標で数字が食い違います。定義はデータ基盤など一か所に置き、どの画面もそこから数字を取る構成にします。

判断前のチェックリスト

  • 画面を見る人を、社内と社外に分けて書き出した
  • 画面ごとに、何を判断し次に何をするかが一文で書けている
  • 誰がどのデータを見てよいかの規則を、例外も含めて書き出した
  • 画面から入力や操作につなげる必要があるかを確認した
  • 指標と画面構成が、今後どのくらい変わりそうかを見積もった
  • 社内向けの画面は、BIツールの試作で要件を満たせるか確かめた
  • 埋め込みを検討する場合、社外利用の条件と費用を公式情報で確認した
  • 初期費用と継続費用を、同じ期間で比べた
  • データの集約と指標の定義を、画面の外の一か所に置く計画がある
  • 公開後に保守を担う人と範囲が決まっている

よくある質問

Q. 社内向けでも自社開発したほうがよい場合はありますか?

あります。画面から直接入力や操作を行う業務が中心で、見ることと操作することを一体にしたい場合や、現場の担当者が日常的に使い、操作の手数を極力減らしたい場合です。この場合は、ダッシュボードというより業務システムの一部として設計することになります。

Q. BIツールの埋め込みと自社開発は、どちらが早く提供できますか?

画面を作る作業だけを見れば、一般にBIツールの埋め込みのほうが早く形になります。ただし、ログインの連携、顧客ごとのデータの分離、見た目の調整、利用条件の確認に想定以上の時間がかかることもあります。試作で要件を満たせるかを早めに確かめることが大切です。

Q. 最初にBIで作り、後で開発に移すと二重投資になりませんか?

BIツールで作った画面そのものは移行できませんが、そこで検証した指標、画面の構成、データの集約と定義は、そのまま開発に引き継げます。何を見せるべきか分からないまま開発して作り直すよりも、検証にBIを使ったほうが結果的に無駄が少なくなることが多いです。

Q. 自社開発する場合、グラフの表示はすべて一から作る必要がありますか?

いいえ。グラフを描画するための既製のライブラリが多く存在するため、それらを使えば、グラフ自体を一から作る必要はありません。開発の手間がかかるのは、データの取得、権限の制御、画面の構成と操作の設計の部分です。

Otsumuに相談できること

見る人が社内に限られていて、権限も部門や役職の単位で分ければ足りる場合は、この記事の判断基準に沿ってBIツールを選び、自社で画面を作るのが最も効率的です。外部に開発を頼む必要はほとんどありません。

一方で、顧客や取引先に見せる画面が必要な場合、顧客ごとにデータを厳密に分ける権限が必要な場合、画面から業務の操作に直接つなげたい場合などは、BIツールで足りるのか、どこから開発すべきかの判断自体に技術的な見極めが必要です。判断を誤ると、作った後に作り直しや情報管理上の問題が生じるため、早い段階で相談したほうが安全です。

Otsumuは自らも事業を手がける立場から、画面の目的と見る人から逆算して、BIツールで済ませる部分と開発する部分を切り分け、データの集約から画面の構築、運用後の改善までを一気通貫で支援しています。社内外のダッシュボードはダッシュボード開発で、自社サービスの機能として組み込む場合はSaaS開発でご相談いただけます。範囲に応じて個別にお見積もりします。

BIで足りるのか開発が必要なのか、判断に迷っている段階でも構いません。30分の無料相談で、見せたい相手と画面のイメージをお聞かせください。

この記事について

Otsumu株式会社が執筆しました。統計値や他社の事例には依拠せず、進め方と判断の枠組みを中心にまとめています。法務・税務・会計などの制度は、専門家や公的窓口で最新の情報をご確認ください。

執筆:Otsumu株式会社 / 編集日 2026.10.01

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