この事例の要点
- Apple Inc.はスマートフォン、パソコン、タブレット、ウェアラブルなどのデバイスを設計・製造・販売し、あわせて広告、AppleCare、クラウド、デジタルコンテンツ、決済といった関連サービスを提供しています(Form 10-K、FY2025)。
- 2025年度の総売上高は$416,161 million(前年比6%増)で、うちProductsが$307,003 million、Servicesが$109,158 millionです(Form 10-K、FY2025)。
- 売上総利益率はProductsが36.8%、Servicesが75.4%と、デバイスとサービスで利益率の構造が異なります(Form 10-K、FY2025)。
どんな事業か
同社は「スマートフォン、パソコン、タブレット、ウェアラブルとアクセサリを設計・製造・販売し、さまざまな関連サービスを販売している」と説明しています。製品はiOSを基盤とするiPhoneのほか、Mac、iPad、Apple Watch、AirPods、Apple Vision Pro、Apple TV 4KやHomePodなどです。サービスは、広告、有料のサポート・保証であるAppleCare、顧客のコンテンツを複数のデバイスで保管・同期するクラウドサービス、App Storeなどのプラットフォームとサブスクリプション型コンテンツ、Apple CardとApple Payの決済サービスの5つに整理されています(Form 10-K、FY2025)。
顧客は主に消費者、中小企業、教育、エンタープライズ、政府の各市場で、直営の店舗・オンラインストア・直販部隊のほか、通信キャリアや再販業者などの間接チャネルでも販売しています。2025年度は直接チャネルが総売上高の40%、間接チャネルが60%でした。報告セグメントは地域別で、Americas、Europe、Greater China、Japan、Rest of Asia Pacificの5つです(Form 10-K、FY2025)。
収益の仕組み
売上は「Products」と「Services」の2区分で開示されています。2025年度はProductsが$307,003 million、Servicesが$109,158 millionで、Servicesには一部製品の販売価格に含まれるサービスの繰延価値の償却分が含まれると注記されています。カテゴリ別ではiPhoneが$209,586 millionと最大で、Servicesの増収は広告、App Store、クラウドサービスの増加が主因と説明されています(Form 10-K、FY2025)。
費用側では、売上原価もProductsとServicesに分かれ、それぞれ$194,116 millionと$26,844 millionでした。営業費用は研究開発費$34,550 million(総売上高の8%)と販売費及び一般管理費$27,601 million(同7%)です。製造は複数の外部委託パートナーが最終組立・検査を担い、部品の一部は単一または限られた供給元から調達しています。関税が価格や粗利益率に影響しうるとも説明されています(Form 10-K、FY2025)。
数字で確かめる
- 総売上高:$416,161 million、前年比6%増(Form 10-K、FY2025)。Products、Servicesともに増収であることが読み取れます。
- Services売上高:$109,158 million、前年比14%増(Form 10-K、FY2025)。iPhoneの4%増を上回る伸びで、サービスが成長の担い手になっていることが読み取れます。
- 売上総利益率:Products 36.8%、Services 75.4%、全体46.9%(Form 10-K、FY2025)。サービスの比率が高まるほど全体の利益率が押し上げられる構造が読み取れます。
- 営業利益:$133,050 million、当期純利益:$112,010 million(Form 10-K、FY2025)。営業費用が総売上高の15%にとどまることが読み取れます。
- 販売チャネル:直接40%、間接60%(Form 10-K、FY2025)。キャリアや再販業者を通じた販売が過半であることが読み取れます。
Otsumuの読み解き:なぜ成り立つのか
ここからはOtsumuの考察です。この事業は「ハードウェア+サービス」の型で読むことができます。デバイスの販売で顧客との接点と利用基盤をつくり、その上にAppleCare、クラウド、App Store、決済といったサービスを重ねる構造です。同社が「ハードウェア、OS、多数のソフトウェア、関連サービスまでほぼすべてを自社で設計・開発している」と述べているように、デバイスとサービスが同じ設計の下にあることが、サービスを自然に使ってもらう前提になっていると読めます。
もう一つは「アプリストア・配信手数料」の型です。App Storeはアプリやデジタルコンテンツを発見・ダウンロードする場であり、Servicesの増収要因として挙げられています。この型が成り立つには開発者や広告主が集まるだけの利用者基盤が必要で、その基盤はデバイス販売がつくっています。Productsの36.8%に対しServicesは75.4%という利益率の差からは、デバイスで基盤を広げ、サービスで利益率を高める役割分担が読み取れます。一方で同社は部品の単一・限定調達、外部委託先での製造、関税、季節性を挙げており、ハードウェアを起点にする限り供給網と在庫の管理から逃れられないというトレードオフがあると考えられます。
自社事業に持ち帰る問い
- 自社の「モノ」や初回取引は、その後に継続的なサービスを乗せられる接点になっているでしょうか。
- 利益率の異なる商品群を持っているとき、どちらで顧客基盤を広げ、どちらで利益を確保するかを分けて設計していますか。
- 第三者(開発者、パートナー、広告主)が自社の顧客基盤の上に価値を乗せる仕組みはありますか。
小さく試すなら
- 自社の売上を「モノ」「サービス」「第三者からの手数料」に分け、それぞれの粗利率を出します。
- 既存顧客のうち、購入後に有料サービス(保証、サポート、定期利用)を使っている割合を調べ、利用率の低い接点を候補にします。
- 候補となる1つの継続サービスを、既存顧客の一部に2〜4週間案内し、申込率と継続意向を確かめます。
- 申込が見込めるなら、提供に必要な裏側の仕事(サポート体制、外部パートナーとの分配)を書き出し、粗利が残るかを見て本格展開を判断します。
関連するビジネスモデル
資料の位置づけ
企業・サービス:Apple Inc. / iPhoneなどのデバイスとサービス。参照資料:Form 10-K(FY2025)。このページは公開情報にもとづく学習用の分析です。Otsumuの支援実績や当該企業との取引関係を示すものではありません。示唆と検証案はOtsumuの考察であり、企業自身の見解とは区別しています。
参考資料と編集について
上記の公開資料(企業の決算短信または年次報告書)をもとに、Otsumuが執筆しました。数値と企業の説明は資料の記載の範囲にとどめ、Otsumuの考察とは分けています。数値は資料の表記のままで、最新の情報は各社の開示をご確認ください。
執筆:Otsumu株式会社 / 編集日 2026.09.27