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Datadog, Inc.のクラウド監視に学ぶ事業設計:使った分だけ広がる契約

約32,700顧客に向けたSaaSで売上$3,427.2 million(FY2025、前年比28%増)。売上増加の約75%が既存顧客からの成長で生まれる「land-and-expand」と使用量連動の契約構造を一次資料から読みます。

この事例の要点

  • Datadog, Inc.は、クラウドアプリケーション向けのAIを活用した可観測性・セキュリティプラットフォームを提供し、2025年12月期の売上は$3,427.2 million(前年比28%増)で、実質的にすべてがサブスクリプションソフトウェアの販売によるものです(Form 10-K、FY2025)。
  • 2025年の売上増加$742.9 millionのうち約75%は既存顧客からの成長、残り25%が新規顧客からの成長で、トレーリング12か月のドルベース純継続率は約120%でした(Form 10-K、FY2025)。
  • 売上総利益率は80%、純利益は$107.7 millionで、営業損益は$(44,373) thousandの損失でした(Form 10-K、FY2025)。

どんな事業か

同社は、インフラ監視、アプリケーション性能監視、ログ管理、ユーザー体験監視、クラウドセキュリティ、サービス管理など多くの機能を統合・自動化したSaaSプラットフォームを提供し、顧客の技術スタック全体に対してリアルタイムの可観測性とセキュリティを提供すると説明しています(Form 10-K、FY2025)。

顧客数は2025年12月31日時点で約32,700(前年約30,000)です。年間ランレート収益(ARR)$100,000以上の顧客は約4,310(前年3,610)でARRの90%を占め、ARR $1.0 million以上の顧客は約603(前年462)です。製品は20製品以上に広がり、約84%の顧客が2製品以上を利用しています。北米以外の売上は総売上の約29%です(Form 10-K、FY2025)。

収益の仕組み

売上はサブスクリプション販売から生じます。契約期間は主に月次または年次で、顧客は監視対象コンテナの追加、カスタムメトリクスパッケージなどの追加製品を購入できます。同社が用いるMRR(月次ランレート収益)は、コミット済み契約額、追加使用量、使用に応じて提供されるコミット使用量、月次サブスクリプションの各月の売上を合計して算出されます。ただし同社は、ARRとMRRは収益とは独立に見るべき運用指標で、GAAP上の収益を表すものではないとしています。同社は「価値が出るまでの時間が非常に短い製品」を軸とするland-and-expandモデルを採り、顧客はセルフサービスで利用範囲を拡大できると説明しています(Form 10-K、FY2025)。

費用面では、2025年の売上原価は$686,957 thousand(売上の20%)で、増加分$171.4 millionのうち$149.8 millionが第三者クラウドインフラのホスティング・ソフトウェア費用です。研究開発費は$1,548,451 thousand(45%)、販売・マーケティング費は$956,423 thousand(28%)、一般管理費は$279,700 thousand(8%)で、営業費用合計は売上の81%に達し、営業損益は損失でした。利息収入等の他の収益$171,394 thousandにより、純利益は$107,741 thousandです(Form 10-K、FY2025)。

数字で確かめる

  • 売上$3,427.2 million、前年比28%増(2025年)(Form 10-K、FY2025)。2024年の$2,684.3 millionから、既存顧客の利用拡大を主因に伸びたことが読み取れます。
  • ドルベース純継続率約120%(2024年末はhigh-110%'s)(Form 10-K、FY2025)。同じ顧客群からのARRが1年で約2割増えており、使用量の増加が売上を押し上げていることが読み取れます。
  • ARR $100,000以上の顧客約4,310社がARRの90%(Form 10-K、FY2025)。大口顧客が収益の大半を占めることが読み取れます。
  • 売上総利益率80%(前年81%)、売上原価の増加分のうち$149.8 millionが第三者クラウドインフラ費用(Form 10-K、FY2025)。顧客の使用量が増えると同社側のインフラ費用も増える構造が読み取れます。
  • 純利益$107.7 million、営業キャッシュ・フロー$1,050.1 million(Form 10-K、FY2025)。会計上の営業損失でも現金は積み上がっていることが読み取れます。

Otsumuの読み解き:なぜ成り立つのか

ここからはOtsumuの考察です。この事業は「従量課金」の型で読むことができます。MRRの定義にコミット済み契約額に加えて「追加使用量」「使用に応じて提供されるコミット使用量」が含まれているように、顧客がクラウドの利用を増やせば同社のMRRも増える構造と読めます。売上増加の約75%が既存顧客からであることは、既存顧客の使用量増加が成長の主動力であることを示していると読めます。この型が成り立つ条件は、使い始める障壁が低いことと、使い続けるほど価値が増すことで、「価値が出るまでの時間が非常に短い」製品設計とセルフサービスでの拡張がそれに当たると考えられます。

裏側で必要な仕事は、顧客の使用量に追随するインフラの運用と、複数製品への横展開です。売上原価の増加の大半が第三者クラウドインフラ費用であることから、使用量が増えれば同社側の費用も増え、売上総利益率に下押しの圧力がかかると読めます。また同社は、顧客が使用量を急増させた後に「最適化」して支出を減らしうると述べています。従量課金は成長時には売上を押し上げますが、顧客側の使用量削減がそのまま売上減につながるトレードオフを持つと考えられます。

研究開発費に売上の45%を投じる判断は、20製品以上への拡張で一顧客あたりの使用範囲を広げ、将来の使用量増加につなげる狙いと読めます。

自社事業に持ち帰る問い

  • 自社の収益は顧客の「使う量」に連動しているか。連動していない場合、顧客の成長を自社の売上に取り込む仕組みはあるか。
  • 顧客の使用量が増えたとき、自社側で増える費用(インフラ、人手)は何か。粗利率はどう動くか。
  • 既存顧客が別の製品・機能を使い始める割合を追い、横展開を営業の目標にしているか。

小さく試すなら

  1. 既存顧客を「使用量」で並べ、過去1年で使用量が増えた顧客と減った顧客の売上への影響を一枚にまとめる。
  2. 主力製品の顧客のうち、他の製品・機能を使っていない顧客を10〜20社選び、2〜4週間の無料試用を案内して利用開始率を記録する。
  3. 同じ期間に、顧客一件あたりの使用量が増えたときに自社で増える費用を洗い出し、粗利率がどこまで下がるかを試算する。
  4. 利用開始率が見込め、粗利率が許容範囲なら、使用量に応じた料金表を一部顧客に提示して継続率と単価の変化を追う。

関連するビジネスモデル

資料の位置づけ

企業・サービス:Datadog, Inc. / クラウド向け可観測性・セキュリティプラットフォーム。参照資料:Form 10-K(FY2025)。このページは公開情報にもとづく学習用の分析です。Otsumuの支援実績や当該企業との取引関係を示すものではありません。示唆と検証案はOtsumuの考察であり、企業自身の見解とは区別しています。

参考資料と編集について

上記の公開資料(企業の決算短信または年次報告書)をもとに、Otsumuが執筆しました。数値と企業の説明は資料の記載の範囲にとどめ、Otsumuの考察とは分けています。数値は資料の表記のままで、最新の情報は各社の開示をご確認ください。

執筆:Otsumu株式会社 / 編集日 2026.09.27

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