この事例の要点
- The Walt Disney Companyは、Entertainment、Sports、Experiencesの3セグメントで事業を行う総合エンターテインメント企業で、FY2025の総収益は$94.4 billion(前年比3%増)、Disneyに帰属する純利益は$12.4 billion(前年$5.0 billion)でした(Form 10-K、FY2025)。
- Entertainmentセグメントは、Linear Networks、Direct-to-Consumer(Disney+、Hulu)、Content Sales/Licensingの3つの事業ラインで、同じ映像コンテンツを複数の窓口から収益化しています(Form 10-K、FY2025)。
- 2025年9月27日時点の有料会員数はDisney+が約132 million、Huluが約64 millionと説明されています(Form 10-K、FY2025)。
どんな事業か
Entertainmentセグメントは、スポーツ以外の映画・エピソード作品の制作と配信を担います。Linear Networksは、ABC Television Networkと8つの自社テレビ局、Disney、FXなどのブランドチャンネルを国内外で運営しています(Form 10-K、FY2025)。
Direct-to-Consumerは、Disney、Pixar、Marvel、Star Warsなどのブランド作品を並べるDisney+と、米国向けのHuluから成ります。Content Sales/Licensingは、劇場配給、テレビ・VOD向けのライセンス、ホームエンターテインメント、舞台、音楽を含みます。同社はFY2026に約20本の映画公開を見込んでいます。Experiencesについては、映像IPを使った商品ライセンス収益に対するロイヤルティがEntertainmentへのセグメント間配分として計上される仕組みが説明され、FY2025は「パークと体験事業の成長」が収益の増加要因として挙げられています(Form 10-K、FY2025)。
収益の仕組み
Entertainmentの収益は、配信サービスの購読料などの「サブスクリプション料」、「広告」、MVPD(ケーブル・衛星・通信事業者など)が番組を配信する権利に対して支払う「アフィリエイト料」、「劇場配給」、テレビ・VOD・ホームエンターテインメント向けの「ライセンス料」、「その他収益」に分かれます。Linear Networksの収益の大半はアフィリエイト料と広告、Direct-to-Consumerの大半は購読料と広告から得られると説明しています(Form 10-K、FY2025)。
費用は、制作費の償却、ライセンス番組権の償却、参加報酬などの「番組・制作費」に、配信費用、販売費・一般管理費(マーケティングを含む)、減価償却費が加わります。制作費の償却は各配信窓口の相対的な価値見積りに基づいてEntertainment内の事業に配分されます。劇場公開の前後には多額のマーケティング費用を発生時に費用計上するため、公開前の期間を含めて劇場配給で損失が出ることがあるとも記されています(Form 10-K、FY2025)。
数字で確かめる
- 総収益$94,425 million(前年$91,361 million、3%増)。うちサービス収益$84,588 million、製品収益$9,837 million(Form 10-K、FY2025)。収益の大半がサービスから来ていることが読み取れます。
- サービス原価$52,677 million、販売費・一般管理費等$16,501 million(5%増、マーケティング費用の増加)(Form 10-K、FY2025)。コンテンツと販促に費用の重心があることが読み取れます。
- 減価償却費$5,326 million(7%増)、パーク・リゾート等への投資$8,024 million(前年$5,412 million)(Form 10-K、FY2025)。施設事業への投資が増えていることが読み取れます。
- Disneyに帰属する純利益$12,404 million(前年$4,972 million)(Form 10-K、FY2025)。Huluの税務上の分類変更による非現金の税務便益$3,277 millionが含まれることが読み取れます。
- Disney+有料会員約132 million、Hulu有料会員約64 million(2025年9月27日時点)(Form 10-K、FY2025)。継続課金の基盤の規模が読み取れます。
Otsumuの読み解き:なぜ成り立つのか
ここからはOtsumuの考察です。「コンテンツIPの多面展開」の型では、1本の作品にかけた制作費を、劇場、ホームエンターテインメント、テレビ・VOD、配信、舞台、商品ライセンスと順に異なる窓口で回収します。同社が制作費の償却を各窓口の相対的な価値の見積りに基づいて配分している点は、この型の裏側にある会計上の仕事を示していると読めます。窓口の順序と間隔を管理し、各窓口の価値を見積もり続ける必要があると考えられます。
「施設運営・興行」の型は、パークやリゾートと舞台に表れています。パーク等への投資が$8,024 millionに増え、減価償却費も増加していることから、施設は先に大きな投資を必要とし、その後の来場者からの収益で回収する構造だと読めます。Experiencesセグメントの商品ライセンス収益に対するロイヤルティがEntertainmentに配分される流れも、セグメント間配分の説明から読み取れます。
トレードオフとしては、劇場公開前からマーケティング費用を計上するため作品によっては劇場配給で損失が出うること、前年に$3,595 millionの構造改革・減損費用があったように資産の価値見直しが利益を大きく揺らすことが挙げられます。
自社事業に持ち帰る問い
- 自社が作った1つの成果物(コンテンツ、ノウハウ、ブランド)を、いくつの窓口で収益化しているか。
- 窓口ごとの提供の順序と間隔を決めているか。早い窓口が後の窓口の価値を下げていないか。
- 大きな初期投資が必要な事業(施設、設備)を、既存の資産(IP、顧客基盤)でどう補強できるか。
小さく試すなら
- 過去1年に作った主要な成果物を一覧にし、それぞれが現在いくつの窓口(販売、ライセンス、イベント、サブスクリプション)で収益を生んでいるかを書き出す。
- 1つの成果物を選び、まだ使っていない窓口での提供(例:既存コンテンツの有料イベント化、他社へのライセンス)を1件だけ試す。
- その窓口での収益と既存窓口への影響を2〜3か月追い、順序と間隔のルールを仮決めする。
関連するビジネスモデル
資料の位置づけ
企業・サービス:The Walt Disney Company / 映像IPの配信・劇場・テーマパークへの多面展開。参照資料:Form 10-K(FY2025)。このページは公開情報にもとづく学習用の分析です。Otsumuの支援実績や当該企業との取引関係を示すものではありません。示唆と検証案はOtsumuの考察であり、企業自身の見解とは区別しています。
参考資料と編集について
上記の公開資料(企業の決算短信または年次報告書)をもとに、Otsumuが執筆しました。数値と企業の説明は資料の記載の範囲にとどめ、Otsumuの考察とは分けています。数値は資料の表記のままで、最新の情報は各社の開示をご確認ください。
執筆:Otsumu株式会社 / 編集日 2026.09.27