この事例の要点
- eBay Inc.は1995年に創業した第三者型のマーケットプレイスで、190超の市場で売り手と買い手をつなぎ、2025年に約$80 billionの取扱高(GMV)を扱ったと説明しています(Form 10-K、FY2025)。
- 収益は主に、成立した取引に対する手数料、売り手向けの広告、配送サービスから得ており、FY2025の純収益は$11,100 million(前年比8%増)でした(Form 10-K、FY2025)。
- 純収益をGMVで割ったテイクレートは13.94%(前年13.77%)で、増収の主な要因としてGMVの増加、広告の浸透、英国の配送プログラムの拡大を挙げています(Form 10-K、FY2025)。
どんな事業か
同社は、www.ebay.comとその各国版、プラットフォーム外のマーケットプレイス、モバイルアプリ群を「Marketplace platforms」として運営しています。2025年末時点のアクティブ買い手は135 million、掲載中の出品は2.5 billionでした。自動車部品、コレクティブル、リファービッシュ品、アパレル、高級品などの重点カテゴリーに注力していると説明しています(Form 10-K、FY2025)。
売り手向けには、生成AIによる出品支援、Seller Capitalなどの金融サービス、広告のダッシュボード、配送プログラムを提供しています。買い手向けには、AIによる商品推薦や検索、ライブコマース「eBay Live」を展開しています。信頼の面では、商品が届かない・説明と異なる場合に返金する「eBay Money Back Guarantee」、高級品などの真贋を確認する「Authenticity Guarantee」を運営しています(Form 10-K、FY2025)。
収益の仕組み
同社は純収益を2つの活動から得ていると説明しています。一つはMarketplace収益で、売り手と買い手をつなぐサービスに対する手数料(落札手数料、出品手数料、機能追加手数料、外貨手数料)が中心で、ストア購読料や配送料も含まれ、割引・クーポンなどの顧客インセンティブで減額されます。もう一つはAdvertising収益で、売り手が出品を目立たせるために支払う広告料と第三者広告料からなります。FY2025はMarketplace収益$9,107 million(5%増)、Advertising収益$1,993 million(22%増)でした。地域別では米国$5,789 million(52%)、国際$5,311 million(48%)です(Form 10-K、FY2025)。
費用面では、純収益の原価$3,169 million、販売・マーケティング$2,394 million、製品開発$1,642 million、一般管理$1,198 million、取引損失$396 millionでした。営業利益率は20.5%(前年22.5%)に下がり、理由として法務関連と再編に伴う一時的な一般管理費の増加、配送プログラムの費用増を挙げています(Form 10-K、FY2025)。
数字で確かめる
- GMV $79,609 million(前年$74,667 million、7%増)、純収益$11,100 million(8%増)(Form 10-K、FY2025)。取扱高の伸びに手数料率の上昇が加わって増収したことが読み取れます。
- テイクレート13.94%(前年13.77%)(Form 10-K、FY2025)。広告や配送で1取引あたりの収益を積み増していることが読み取れます。
- Advertising収益$1,993 million(22%増)に対しMarketplace収益$9,107 million(5%増)(Form 10-K、FY2025)。売り手が支払う広告が成長の主役になっていることが読み取れます。
- 営業利益$2,277 million(前年$2,318 million)、純利益$2,031 million(Form 10-K、FY2025)。増収でも一時費用と配送費用で営業利益は前年を下回ったことが読み取れます。
- 継続事業の営業キャッシュフロー$2.0 billion、自己株式取得$2.5 billion(Form 10-K、FY2025)。現金の多くを株主還元に回していることが読み取れます。
Otsumuの読み解き:なぜ成り立つのか
ここからはOtsumuの考察です。この事業は「マーケットプレイス」の型で、同社が「売り手が成功するときに自社も成功する」と述べるとおり、収益は他者間の取引に比例します。GMVとテイクレートの2つの指標を掲げていることは、事業を「取引の量」と「1取引から得る率」に分解して管理していることを示すと考えられます。FY2025はGMVの7%増よりも純収益の8%増が大きく、広告と配送でテイクレートを上げた点が特徴と読めます。
裏側で必要な仕事は、見知らぬ売り手と買い手の間の信頼を仕組みで作ることです。返金保証や真贋確認などのプログラムは、買い手が安心して払える状態を作るための費用と読めます。取引損失$396 millionが費用項目として計上されていることも、信頼の担保にコストを払っていることを示すと考えられます。もう一つの型「オークション(競り)」については、今回参照した資料には出品形式ごとの内訳は示されていませんが、落札手数料や出品手数料という収益項目は、価格が取引の中で決まる形式でも手数料率で収益を得られる設計だと読めます。
トレードオフは、手数料率を上げると売り手の負担が増え、売り手の成功と自社の収益が離れてしまう点です。英国の個人間取引で手数料を下げたことが増収を一部相殺したという説明は、率と取扱高の綱引きを示していると考えられます。
自社事業に持ち帰る問い
- 自社が他者間の取引を仲介するなら、取引量と1取引あたりの収益率のどちらを優先して伸ばすか。両方を測っているか。
- 見知らぬ相手同士の取引で、買い手の不安をどの仕組み(保証、鑑定、返金)で下げ、その費用をどこまで負担するか。
- 取引手数料以外に、参加者が「見つけてもらうため」に払う収益(広告、上位表示)を設計できるか。
小さく試すなら
- 自社が仲介しうる取引について、直近の取引総額と自社の収益から現在の「率」を算出し、参加者側の負担感を聞き取る。
- 買い手の不安を下げる施策(返金条件の明示、品質の確認)を一つ導入し、2〜4週間で成約率の変化を測る。
- 売り手向けに「目立たせる」有料オプションを小規模に試し、利用率と利用した売り手の売上変化を記録する。取引量と率の両方が改善する組み合わせが見えたら、手数料体系として明文化する。
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資料の位置づけ
企業・サービス:eBay Inc. / オンラインマーケットプレイス。参照資料:Form 10-K(FY2025、期末 2025-12-31)。このページは公開情報にもとづく学習用の分析です。Otsumuの支援実績や当該企業との取引関係を示すものではありません。示唆と検証案はOtsumuの考察であり、企業自身の見解とは区別しています。
参考資料と編集について
上記の公開資料(企業の決算短信または年次報告書)をもとに、Otsumuが執筆しました。数値と企業の説明は資料の記載の範囲にとどめ、Otsumuの考察とは分けています。数値は資料の表記のままで、最新の情報は各社の開示をご確認ください。
執筆:Otsumu株式会社 / 編集日 2026.09.27