この事例の要点
- EPAM Systems, Inc.はデジタルエンジニアリング、クラウド、AIを活用した変革サービスとコンサルティングをグローバル企業に提供しており、FY2025の売上高(Revenues)は$5.457 billion、前年比15.4%増でした(Form 10-K、FY2025)。
- 売上の99.5%はProfessional services(専門サービス)で、売上原価(減価償却を除く)は売上の71.2%を占め、主な構成は給与、賞与、福利厚生、株式報酬、出張費、外注費です(Form 10-K、FY2025)。
- 2025年の売上のうち64.4%は5年以上の利用顧客からで、上位5社への集中は13.7%と前年の15.8%から低下しています(Form 10-K、FY2025)。
どんな事業か
EPAM Systems, Inc.は、EPAM Continuumの戦略・体験・技術コンサルティングと30年以上のエンジニアリング実行力を組み合わせ、顧客の市場投入までの時間を短縮することを支援していると説明しています。サービス領域はEngineering、Cloud、Data, Analytics and Artificial Intelligence、Customer Experience、Marketing、Cybersecurityにわたり、専用デリバリーセンターに人材を配置し、多職種のチームが案件を担う枠組みを持ちます(Form 10-K、FY2025)。
顧客は5つの主要業種とEmerging Verticalsに分類され、FY2025の業種別売上はFinancial Servicesが$1,316,487千(24.1%)で最大、Consumer Goods, Retail & Travelが$1,077,513千(19.7%)でした。顧客所在地別ではAmericasが58.7%、EMEAが39.3%、APACが2.0%です(Form 10-K、FY2025)。
収益の仕組み
売上のほぼ全てはProfessional servicesで、FY2025は$5,427,623千(99.5%)です。同社は既存顧客との案件の範囲と規模を拡大することで売上を伸ばすとし、複数年プロジェクトの開始・完了や外部経済環境によって顧客ごとの売上は変動すると説明しています。FY2025の増収15.4%のうち、2024年第4四半期の買収(NEORIS、First Derivative)が9.2%、為替が1.3%の寄与でした(Form 10-K、FY2025)。
費用の中心は売上原価(減価償却を除く)で、FY2025は$3.884 billion(前年比18.5%増)でした。デリバリー担当者の給与は顧客向けの作業をしているかどうかにかかわらず売上原価に計上されると明記され、同社は採用、人員の動的な管理、効率的な配員を通じて稼働率を管理していると説明しています。原価率が69.3%から71.2%に上がった主因は、報酬の増加を価格引き上げで完全には相殺できなかったこと、2024年の買収、変動報酬の増加、ポーランドでのR&D関連の政府インセンティブの$13.6 million減少などです。販売費及び一般管理費は$928.7 million、売上の17.0%でした(Form 10-K、FY2025)。
数字で確かめる
- 売上高$5,457,056千(前年$4,727,940千)、前年比15.4%増(FY2025)(Form 10-K、FY2025)。増収の多くが買収と為替による寄与であることが読み取れます。
- 営業利益(Income from operations)$520,003千、売上高比9.5%(前年$544,584千、11.5%)(FY2025)(Form 10-K、FY2025)。増収でも営業利益が減っており、人件費の上昇を価格に転嫁しきれていないことが読み取れます。
- 純利益(Net income)$377,678千、売上高比6.9%(前年$454,533千、9.6%)(FY2025)(Form 10-K、FY2025)。為替差損$25,925千の拡大も利益を押し下げていることが読み取れます。
- 上位5社の売上比率13.7%、上位20社以外68.1%、年間売上$20 Million超の顧客数53社(前年43社)(FY2025)(Form 10-K、FY2025)。特定顧客への依存が低く、大口顧客の数も増えていることが読み取れます。
Otsumuの読み解き:なぜ成り立つのか
ここからはOtsumuの考察です。「時間・工数課金」の型で見ると、この事業の売上はデリバリー担当者の人数と稼働率、単価の掛け合わせで決まる構造だと読めます。10-Kが稼働率の管理を費用の説明の中心に置いているのは、人が空いている時間がそのまま利益の減少になるためだと考えられます。原価率上昇の主因が「報酬の増加を価格引き上げで完全には相殺できなかった」ことである点は、この型のトレードオフを示しています。給与を上げる必要がある一方、顧客への単価転嫁には時間差があり、その差が利益率の変動として表れます。
「プロジェクト受託(一括請負)」の型で見ると、複数年プロジェクトの開始・完了で顧客ごとの売上が変動すると説明されている点が要になると読めます。売上の64.4%が5年以上の顧客から生じ、上位20社以外の顧客が68.1%を占める分散は、個々の案件の終了が全体に与える影響を抑える仕組みとして機能していると考えられます。裏側で必要な仕事は、業種別の知見を蓄積して案件の範囲を広げる営業と、人材の配置・再配置です。
買収による売上増9.2%とAIサービスへの重点は、人の時間を売る事業の成長上限を広げる試みと読めますが、買収は原価率上昇の要因にも挙げられています。売上原価が売上の7割を占め、その主な構成要素が人件費である事業では、単価を上げられる専門性への移行と稼働率を保つ配員の両方が成立条件だと考えられます。
自社事業に持ち帰る問い
- 自社の売上は「人数×稼働率×単価」で説明できるか。そのうち自社で動かせる変数はどれか。
- 人件費や仕入価格の上昇を、顧客への価格にどのくらいの時間差で転嫁できているか。
- 案件の終了で売上が途切れないよう、既存顧客から次の案件を得る仕組みがあるか。
小さく試すなら
- 直近1年の売上と原価を「人数×稼働率×単価」に分解し、原価率の変動がどの変数によるものかを一枚にまとめる。
- 過去の値上げ交渉の記録から、コスト上昇から価格反映までの期間と反映率を把握する。反映率が低い顧客群が分かれば、契約更新時の交渉方針を決める。
- 顧客ごとに取引年数と年間売上を並べ、長期顧客の売上比率と上位数社への集中度を出して、分散の目標値を置く。
関連するビジネスモデル
資料の位置づけ
企業・サービス:EPAM Systems, Inc. / デジタルエンジニアリング・ソフトウェア開発受託。参照資料:Form 10-K(FY2025、期末2025年12月31日)。このページは公開情報にもとづく学習用の分析です。Otsumuの支援実績や当該企業との取引関係を示すものではありません。示唆と検証案はOtsumuの考察であり、企業自身の見解とは区別しています。
参考資料と編集について
上記の公開資料(企業の決算短信または年次報告書)をもとに、Otsumuが執筆しました。数値と企業の説明は資料の記載の範囲にとどめ、Otsumuの考察とは分けています。数値は資料の表記のままで、最新の情報は各社の開示をご確認ください。
執筆:Otsumu株式会社 / 編集日 2026.09.27