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Robinhood Marketsの手数料無料の証券アプリに学ぶ事業設計

売買手数料を無料にし、注文の回送で受け取る対価と金利収入で稼ぐRobinhood Markets, Inc.。FY2025の純収入$4.47 billionのうち取引関連が59%、純金利収入が34%の構成から、無料を入口にした金融事業の成り立ちを読みます。

この事例の要点

  • Robinhood Markets, Inc.は2013年創業で、米国の個人向け証券会社として初めて口座最低額なしの手数料無料株式取引を提供したと説明しています。FY2025の純収入合計(Total net revenues)は$4.47 billion(前年比52%増)、純利益は$1.88 billion(同33%増)でした(Form 10-K、FY2025)。
  • 収入は、注文の回送対価などから成る取引関連収入$2,628 million、信用取引金利などの純金利収入$1,514 million、Goldサブスクリプション等のその他収入$331 millionで構成されます(Form 10-K、FY2025)。
  • 入金済み顧客(Funded Customers)は27.0 million、プラットフォーム総資産は$322.1 billion(前年比67%増)、顧客1人当たり平均収入(ARPU)は$171(同40%増)です(Form 10-K、FY2025)。

どんな事業か

同社は「すべての人のために金融を民主化する」ことを使命とし、モバイルファーストのアプリで米国上場株式やETF、関連するオプション、ADRの手数料無料取引を提供しています。アクティブトレーダー向けのデスクトップ版Robinhood Legendは追加費用なしで利用でき、$1からの端株取引、定期積立、信用取引、貸株、待機資金を提携銀行に預けるCash Sweep、IRAへの拠出に対するマッチ、24時間・週5日の個別株取引(24 Hour Market)などを揃えています(Form 10-K、FY2025)。

暗号資産はRobinhood Crypto(RHC)を通じて58銘柄を扱い、注文はマーケットメイカーや提携取引所に回送され、同社自身は顧客の売買の相手方にはなりません。予測市場(イベント契約)や先物では1契約ごとに手数料を課しています。2024年からは英国でも証券サービスを提供しています(Form 10-K、FY2025)。

収益の仕組み

取引関連収入は、顧客のオプション、暗号資産、株式の注文をマーケットメイカーに回送し、その対価として受け取るものです。オプションは1契約当たり、株式は公表されている売り気配と買い気配の差の一定割合、暗号資産は約定金額の一定割合で計算されます。FY2025の内訳はオプション$1,123 million(純収入の25%)、暗号資産$901 million(20%)、株式$302 million(7%)、予測市場や即時出金などのその他$302 million(7%)です(Form 10-K、FY2025)。

純金利収入は、信用取引の貸付金利$573 million、分別保管資産等の利息$319 million、Cash Sweep $229 million、貸株純収入$190 millionなどから成ります。2025年12月31日時点の信用取引残高(Margin Book)は$16,823 million、金利を生む資産の合計は$61,644 millionでした。同社は、今後の利下げが純金利収入に悪影響を及ぼすと見込んでいます(Form 10-K、FY2025)。

費用は、ブローカレッジ・取引$211 million、技術開発$897 million、オペレーション$130 million、貸倒引当$114 million、マーケティング$399 million、一般管理$628 millionの合計$2,379 millionです(Form 10-K、FY2025)。

数字で確かめる

  • 純収入合計$4,473 million(前年$2,951 million)、純利益$1,883 million(前年$1,411 million)(Form 10-K、FY2025)。費用の増加(25%)を収入の増加(52%)が上回ったことが読み取れます。
  • 取引関連収入は純収入の59%、純金利収入は34%(Form 10-K、FY2025)。取引が活発な市況に依存する部分と、預り資産の規模に連動する部分の二本立てであることが読み取れます。
  • 入金済み顧客27.0 million(新規2.5 million、復帰0.4 million、買収による取得0.6 million、離脱1.7 million)(Form 10-K、FY2025)。
  • Robinhood Gold加入者4.18 million(前年2.64 million、58%増)(Form 10-K、FY2025)。無料の利用者の一部が有料会員に移っていることが読み取れます。

Otsumuの読み解き:なぜ成り立つのか

ここからはOtsumuの考察です。取引所・仲介の型として見ると、同社は売買手数料をゼロにして利用者を集め、集まった注文の流れそのものをマーケットメイカーに回送することで対価を得ています。この型が成り立つ条件は、注文が十分な量と多様性を持ち、マーケットメイカーが対価を払ってでも受けたいと考える流れになっていることです。同社も収入の増減要因として、取引された銘柄の構成による回送対価の違いを挙げています。

金利差(貸出・与信)の型として見ると、無料で口座を開いた利用者が資金と株式を預けることで、信用取引の貸付、待機資金の運用、貸株という金利収入の源泉が生まれます。取引が細っても預り資産があれば収入が出るため、二つの型を重ねることが市況変動への備えになっていると読めます。裏側に必要な仕事は、信用供与の審査と貸倒の管理、分別保管や規制対応、そして提携銀行やマーケットメイカーとの条件交渉です。

トレードオフは、収入の大部分が市況(取引量、金利水準、資産価格)に連動し、同社が制御できない点にあります。Goldサブスクリプションのような定額収入や、口座数と預り資産を増やし続けることが、その変動を薄める方向の取り組みと考えられます。

自社事業に持ち帰る問い

  • 自社の「無料」の部分は、誰から、何の対価として回収されているか。回収先が単一なら、それが細ったときの備えはあるか。
  • 利用者が集まることで生まれる副次的な資産(データ、預り資金、注文の流れ)を、収入に変える道筋があるか。
  • 市況に連動する収入と、定額で入る収入の比率をどの水準にしたいか。

小さく試すなら

  1. 自社サービスの利用者を「利用頻度」「預けている資産や情報」「有料化に応じそうな層」の3つの軸で分類する。
  2. 無料利用者に有料プランの試験提案を100人程度に行い、転換率を測る。
  3. 利用者が集まることで第三者(提携先)に価値が生まれる部分を1つ選び、提携先候補に対価を払う意思があるか聞き取る。
  4. 収入を「取引連動」「残高連動」「定額」に分け、月ごとの変動幅を1年分並べて比べる。

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資料の位置づけ

企業・サービス:Robinhood Markets, Inc. / 手数料無料の証券アプリ。参照資料:Form 10-K(FY2025、期末2025年12月31日)。このページは公開情報にもとづく学習用の分析です。Otsumuの支援実績や当該企業との取引関係を示すものではありません。示唆と検証案はOtsumuの考察であり、企業自身の見解とは区別しています。

参考資料と編集について

上記の公開資料(企業の決算短信または年次報告書)をもとに、Otsumuが執筆しました。数値と企業の説明は資料の記載の範囲にとどめ、Otsumuの考察とは分けています。数値は資料の表記のままで、最新の情報は各社の開示をご確認ください。

執筆:Otsumu株式会社 / 編集日 2026.09.27

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