この事例の要点
- 株式会社アイスタイルは、コスメ・美容の総合サイト「@cosme(アットコスメ)」を基盤に4つの事業を展開し、2026年6月期の売上高は81,807百万円(前年同期比19.0%増)、営業利益は4,085百万円(同29.1%増)でした(2026年6月期決算短信〔日本基準〕(連結))。
- 売上高の大半はリテール事業の61,695百万円ですが、営業利益ではマーケティング支援事業の3,516百万円とリテール事業の3,599百万円がほぼ並びます(2026年6月期決算短信〔日本基準〕(連結))。
- 同社は、リテール事業(EC・店舗)で利用者との接点やデータを増やし、マーケティング支援事業(BtoBサービス)でマネタイズする中期事業方針を掲げています(2026年6月期決算短信〔日本基準〕(連結))。
どんな事業か
マーケティング支援事業には、「@cosme」を基盤とした化粧品ブランド向けの広告ソリューションやデータドリブンソリューションが属します。2026年6月期は、小売の接点を活用した販売促進施策が好調で、大手および中堅ブランドとの取引規模が増加し、売上高12,083百万円(前年同期比25.2%増)、営業利益3,516百万円(同24.6%増)でした(2026年6月期決算短信〔日本基準〕(連結))。
リテール事業には、ECサイト「@cosme SHOPPING」、専門店「@cosme STORE」など国内の小売業が属します。ECは「@cosme BEAUTY DAY」などの販売イベントで17.0%の増収、店舗は「@cosme NAGOYA」等の新店寄与で14.6%の増収となり、セグメント全体で売上高61,695百万円(同15.4%増)、営業利益3,599百万円(同15.6%増)でした(2026年6月期決算短信〔日本基準〕(連結))。
グローバル事業は日本国外のEC・卸売、店舗、メディア等で、中国越境ECの復調と香港旗艦店の寄与により売上高5,757百万円(同37.9%増)となった一方、同店のオープン関連費用251百万円の計上などで営業利益は△356百万円でした。その他事業には美容部員の人材派遣、投資育成事業などが属します(2026年6月期決算短信〔日本基準〕(連結))。
収益の仕組み
お金の入り口は二つです。一つは利用者から入る小売の売上(リテール事業)、もう一つは化粧品ブランドから入る広告・データソリューションの売上(マーケティング支援事業)です。同社はマーケティング支援事業について「限界利益率の高い事業モデルが効率的な利益拡大につながり」と説明し、小売で増やした接点をブランド向けの販売促進施策に活用していると記載しています(2026年6月期決算短信〔日本基準〕(連結))。
2026年6月期は「戦略的投資の年」と位置づけ、人材採用やシステム投資、新規事業への投資を拡大したと説明しています。費用の内訳は今回参照した公開資料には示されていませんが、投資活動では有形固定資産の取得1,625百万円、無形固定資産の取得1,802百万円を支出しています(2026年6月期決算短信〔日本基準〕(連結))。
数字で確かめる
- 売上高81,807百万円(前年同期比19.0%増)、営業利益4,085百万円(同29.1%増)、売上高営業利益率5.0%(2026年6月期)(2026年6月期決算短信〔日本基準〕(連結))。小売の比重が大きく利益率は低めですが、利益は売上より速く伸びていると読み取れます。
- マーケティング支援事業の売上高12,083百万円、営業利益3,516百万円(2026年6月期決算短信〔日本基準〕(連結))。売上規模に対して利益が大きく、限界利益率の高さが数字に表れていると読み取れます。
- リテール事業の売上高61,695百万円、営業利益3,599百万円(2026年6月期決算短信〔日本基準〕(連結))。売上規模はマーケティング支援事業を大きく上回りますが、営業利益はほぼ同水準だと読み取れます。
- 2027年6月期の業績予想は売上高90,000百万円、営業利益5,000百万円(2026年6月期決算短信〔日本基準〕(連結))。中期事業目標の連結売上高1,000億円、連結営業利益80億円に向けた途中段階だと読み取れます。
Otsumuの読み解き:なぜ成り立つのか
ここからはOtsumuの考察です。広告の型で見ると、この事業が成り立つ条件は、広告主である化粧品ブランドにとって「他では買えない接点」を持っていることだと読めます。同社の接点はメディアの閲覧者だけでなく、ECと店舗で実際に化粧品を買う利用者です。販売促進施策が小売の接点を活用して好調だったという説明からは、購買の場そのものが広告の在庫になっている構造が読み取れます。小売は利益率が低い一方、その接点がなければ高い限界利益率の広告事業も成り立たない、という分担だと考えられます。
店舗×EC(オムニチャネル)の型で見ると、裏側で必要な仕事は、店舗、EC、メディアを一人の利用者として結びつけるデータ基盤と、それを支える人材・システムへの投資です。同社が「戦略的投資の年」と位置づけて投資を拡大していることは、この基盤づくりの費用と読めます。小売の拡大自体が目的ではなく、ブランドに売れる接点とデータを増やす手段として小売を広げている順序が重要だと考えられます。
トレードオフは、小売を広げるほど在庫、物流、店舗の固定費と先行投資が増えることです。香港旗艦店のオープン関連費用による赤字拡大は、接点を増やす代償として現れた費用と読めます。接点への投資がブランド向け売上に転換するまでの資金と時間を持てるかが問われると考えられます。
自社事業に持ち帰る問い
- 自社の顧客接点は、メーカーやブランドが対価を払う価値のある「他では得られない接点」になっていますか。
- 利益率の低い事業を、利益率の高い事業のための接点づくりと位置づけたとき、評価指標をどう設計しますか。
- 店舗、EC、メディアの利用者を一人の顧客として結びつけるデータ基盤に、どこまで投資できますか。
- 接点を増やす先行投資(新店、物流、海外)が収益に転換するまでの時間を、どう見積もり、説明しますか。
小さく試すなら
- 自社の顧客接点(店舗、EC、会員、コンテンツ)を書き出し、それぞれで取れているデータを整理します。
- 取引先メーカーやブランドに、その接点を使った販促の試験企画を1件持ち込み、対価を払う意思があるかを確かめます。
- 試験では接点の種類(店頭、EC、コンテンツ)ごとに反応の差を記録し、どの接点に価値があるかを見極めます。
- 対価を払う意思と反応の差が確認できれば、接点を増やす小売側の投資と、ブランド向け商品の設計を並行して進めます。
関連するビジネスモデル
資料の位置づけ
企業・サービス:株式会社アイスタイル / 「@cosme」のメディア・EC・店舗。参照資料:2026年6月期 決算短信〔日本基準〕(連結)。このページは公開情報にもとづく学習用の分析です。Otsumuの支援実績や当該企業との取引関係を示すものではありません。示唆と検証案はOtsumuの考察であり、企業自身の見解とは区別しています。
参考資料と編集について
上記の公開資料(企業の決算短信または年次報告書)をもとに、Otsumuが執筆しました。数値と企業の説明は資料の記載の範囲にとどめ、Otsumuの考察とは分けています。数値は資料の表記のままで、最新の情報は各社の開示をご確認ください。
執筆:Otsumu株式会社 / 編集日 2026.09.27