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店舗×EC(オムニチャネル)

店舗×EC(オムニチャネル)は、店舗と通販の在庫・顧客情報を一つにつなぎ、顧客がどちらの窓口からでも同じ条件で買える状態を作る型です。在庫と顧客データを本当に統合できる運用体制があるかどうかが成立の条件になります。

この型の要点

  • 店舗と通販を別々の事業として持つのではなく、在庫と顧客情報を一つに統合し、顧客が店舗・通販のどちらからでも同じ商品を同じ条件で買える状態を作る型です。
  • 収益の増分は、片方の窓口では取りこぼしていた購買を拾うことと、在庫を全社で一つとして扱うことによる欠品・過剰の同時削減から生まれます。
  • 表からは見えない仕事の中心は、システム連携だけでなく、店舗と通販で別々だった在庫の数え方、値付け、返品の受け方といった業務ルールを揃える作業です。

収益が生まれる仕組み

お金を払うのは最終顧客で、支払いの対象は商品そのものです。この点は通常の小売と変わりません。違いは、同じ顧客が店舗と通販を行き来しながら買うことを前提に設計する点にあります。店舗で試して通販で買う、通販で注文して店舗で受け取る、店舗で在庫がない商品をその場で取り寄せる。こうした動線を一つひとつ整えることで、片方の窓口だけでは失っていた売上が回収されます。

収益の増え方には二つの経路があります。一つは売上側で、来店客が店頭に在庫のない商品を諦めずに買える、通販客が送料を嫌って離脱せずに店舗受け取りを選べる、といった取りこぼしの回収です。もう一つは費用側で、店舗ごと・倉庫ごとに持っていた安全在庫を全社で一つの在庫として扱うことで、同じ販売量をより少ない在庫で支えられるようになり、値引き処分と欠品の両方を減らせる余地があります。

費用は、在庫と受注を一元管理する仕組みの導入と維持、店舗から通販注文を出荷する場合の店頭作業、店舗受け取り分の保管スペースと引き渡し対応、そして店舗と通販の間で売上をどちらの成績にするかを整理する管理業務にかかります。特に最後の点は金額に見えにくいものの、現場の協力を得られるかどうかを左右するため、費用と同じ重さで考える必要があります。

成り立つ条件と、裏側の仕事

顧客側の条件は、同じ人が場面によって店舗と通販を使い分けることです。店舗客と通販客が完全に別の層であれば、統合しても回収できる取りこぼしは少なく、費用だけが増えます。まず自社の顧客がどの程度重なっているかを把握することが、この型を選ぶかどうかの出発点になります。

供給側の条件は、店舗と倉庫の在庫を一つの正確な数字として見られることです。店頭の在庫が実際の棚と一致していなければ、通販で注文を受けたのに出荷できない事態が起き、統合はかえって信用を落とします。棚卸の頻度、返品や破損の記録の仕方、店間移動の記録といった、地味な業務の精度が前提条件になります。

自社の能力として問われるのは、店舗部門と通販部門の利害を調整する力です。店舗で接客した顧客が通販で買えば店舗の売上は減って見えます。店舗受け取りは店頭作業を増やします。こうした負担を評価制度と売上の帰属ルールで吸収しないと、現場は統合に協力しません。裏側の仕事の中心は、システムではなく、この利害調整と業務ルールの統一です。商品コードの統一、価格とキャンペーンの同期、返品の受付窓口の統一、顧客情報を一つの識別子にまとめる作業も、目立たないものの避けて通れません。

向く事業・向かない事業

向くのは、顧客が実物を確かめたい商品を扱いながら、再購入や買い足しでは通販が便利、という性格を持つ事業です。店舗で試して選び、以後は通販で繰り返し買うという動線が自然に生まれる商材では、統合の効果が出やすくなります。また店舗数がある程度あり、店舗在庫を通販の出荷元として使えるなら、配送の距離と日数を縮められます。

向きにくいのは、店舗と通販の顧客層がほとんど重ならない事業や、店舗数が少なく在庫統合の余地が小さい事業です。この場合は統合の費用に対して回収できる売上が限られます。また、店頭在庫の精度を保つ運用が難しい商材、たとえば量り売りや個体差の大きい商品では、通販に店舗在庫を見せることが受注後に出荷できない事態につながるおそれがあり、慎重な設計が必要です。店舗と通販を別会社や別の管理体系で運営している場合も、統合の前に組織の整理が必要になり、時間がかかります。

追いかける指標

  • 併用顧客の割合:全購買顧客のうち、一定期間内に店舗と通販の両方で購買した顧客の割合。分母は同じ期間に購買した識別済み顧客とし、月または四半期で見ます。
  • 取り寄せ・店舗受け取りの利用件数:店頭在庫がない商品の通販取り寄せと、通販注文の店舗受け取りの件数。分母を全注文数にして割合でも見ます。
  • 在庫の一致率:システム上の在庫数と実棚の数が一致した品目の割合。棚卸ごとに算出し、店舗別に比べます。
  • 総在庫に対する販売量:一定期間の販売数量を期間中の平均在庫数量で割った値。統合前後で同じ定義のまま比べます。
  • 併用顧客の購買頻度:店舗のみ、通販のみの顧客と比べた年間購買回数。統合が購買行動を変えたかを確かめます。

新規事業として小さく試すなら

  1. 既存の顧客データから、店舗と通販の両方を使っている顧客がどの程度いるかを、識別できる範囲で数えます。重なりが確認できれば、統合に投資する意味があると判断できます。
  2. 一店舗を選び、店頭に在庫がない商品をその場で通販在庫から取り寄せて自宅へ届ける運用を、既存の通販の仕組みを使って手作業で始めます。専用システムは作りません。
  3. 同じ店舗で、通販注文の店舗受け取りを受け付けます。保管場所、引き渡し手順、受け取られなかった場合の扱いを紙の手順書で決めて回します。
  4. 数週間の利用件数と、店舗スタッフの作業時間、発生した不一致や苦情を記録します。件数が作業負担に見合う水準なら、在庫連携の仕組み化と売上帰属ルールの設計に進みます。

設計時の注意点

価格の面では、店舗と通販で価格や割引が異なると、統合した瞬間に顧客はその差に気づきます。どちらかに揃えるのか、差を残すなら理由を説明できる形にするのかを先に決めておく必要があります。通販の送料を店舗受け取りで無料にする場合、その費用を誰が負担するかも同時に決めます。

契約と組織の面では、売上の帰属と評価制度が大きな論点です。店舗で接客し通販で購買が起きた場合、通販で注文し店舗で受け取った場合、それぞれの売上をどう扱うかを明文化しないと、現場の協力は得られません。統合の効果を測るためにも、帰属ルールは早い段階で固定しておくべきです。

運用の面では、在庫の正確さが全体の信用を左右します。店頭在庫を通販に見せる場合は、実棚との誤差を見込んで表示上の在庫を控えめにする、あるいは一定数以下は表示しないといった安全策を設けます。返品も、通販購入品を店舗で受け付ける場合の検品と在庫戻しの手順を決めておかないと、在庫の数字がずれる原因になります。

法規制の面では、通販には店舗販売とは異なる表示や返品に関する規律が適用される場合があります。店舗で受け取る通販注文がどちらの扱いになるか、顧客情報を店舗と通販で共用する際の告知や同意の取り方は、個別に専門家へ確認してください。

この型が見られる企業事例

この記事について

Otsumu株式会社が執筆しました。統計値や他社の事例には依拠せず、収益の構造、成り立つ条件、検証の進め方を中心にまとめています。法務・税務・会計の制度は、専門家や公的窓口で最新の情報をご確認ください。

執筆:Otsumu株式会社 / 編集日 2026.09.27

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