← 企業事例

OTSUMU KNOWLEDGE

イオンの総合小売・金融・ディベロッパー事業に学ぶ事業設計

小売を軸に金融・ディベロッパー・サービスを束ね、営業収益10兆7,153億42百万円に至った事業です。店舗とEC、決済アプリ、ポイントの購買データをどうつなぎ、どの事業で利益を出しているかを決算短信から確かめます。

この事例の要点

  • 2026年2月期の連結営業収益は10兆7,153億42百万円(対前期比105.7%)、営業利益は2,704億59百万円(前期より327億12百万円の増益)で、営業収益・営業利益・経常利益が過去最高を更新しました(2026年2月期 決算短信〔日本基準〕(連結))。
  • 営業利益はディベロッパー事業709億16百万円、総合金融事業608億71百万円、ヘルス&ウエルネス事業523億68百万円が大きく、営業収益の中心であるGMS事業の営業利益は214億30百万円です(2026年2月期 決算短信〔日本基準〕(連結))。
  • 「AEON Pay」は約415万カ所で利用可能、アプリ「iAEON」のダウンロード数は約2,200万で、購買データを一元的に活用する1to1マーケティングへの転換を進めていると説明しています(2026年2月期 決算短信〔日本基準〕(連結))。

どんな事業か

イオン株式会社は、地域のお客さまの暮らしを支える生活インフラとしての役割を最優先に位置づけ、8つの報告セグメントで事業を展開しています。営業収益は、GMS事業3兆6,918億64百万円、SM事業3兆857億49百万円、ヘルス&ウエルネス事業1兆6,333億18百万円、サービス・専門店事業7,596億17百万円、国際事業5,682億84百万円、総合金融事業5,675億44百万円、ディベロッパー事業5,224億28百万円、DS事業4,305億12百万円です(2026年2月期 決算短信〔日本基準〕(連結))。

小売では、GMSのイオンリテール株式会社、首都圏でドミナント出店を進めるまいばすけっと株式会社(期末店舗数1,323店舗)、ドラッグストアのウエルシアとツルハなどが店舗網を持ちます。2026年1月にツルハが連結子会社となりました。小売以外では、イオンフィナンシャルサービス株式会社がカード・銀行・決済を、イオンモールが商業施設の開発・運営を、イオンディライトが施設管理を担っています(2026年2月期 決算短信〔日本基準〕(連結))。

収益の仕組み

小売事業の収益は商品販売です。PB「トップバリュ」は調達から製造、物流、店舗オペレーションまでを包括するサプライチェーンで荒利益率の改善に取り組んでいると説明しています。費用面では、イオンリテールで原材料価格の高騰による商品原価の上昇や賃上げを含む人的投資等のコスト増があり、営業利益は71億96百万円(同90.7%)と減益でした(2026年2月期 決算短信〔日本基準〕(連結))。

店舗とECの接点では、ネット専用スーパー「Green Beans」の会員数が約90万人となり、イオンリテールのネットスーパーは物流費の低減で営業利益が黒字となりました。決済やポイント等の機能を集約したアプリ「iAEON」、電子マネーWAONと統合した「AEON Pay」、「WAON POINT」を通じて購買データを一元的に活用する方針です(2026年2月期 決算短信〔日本基準〕(連結))。

小売以外では、ディベロッパー事業が専門店売上高の伸びとコストコントロールにより営業利益709億16百万円(前期より178億81百万円の増益)となりました。総合金融事業は営業債権残高の拡大で増収となった一方、金利上昇に伴う金融費用の増加で営業利益は608億71百万円(前期より2億93百万円の減益)でした(2026年2月期 決算短信〔日本基準〕(連結))。

数字で確かめる

  • 連結営業収益10兆7,153億42百万円、営業利益2,704億59百万円、親会社株主に帰属する当期純利益726億77百万円(2026年2月期)(2026年2月期 決算短信〔日本基準〕(連結))。純利益はツルハの連結子会社化に伴う段階取得に係る差益を含むと説明されており、一時的な要因が大きいことが読み取れます。
  • GMS事業の営業収益3兆6,918億64百万円に対し営業利益214億30百万円、ディベロッパー事業の営業収益5,224億28百万円に対し営業利益709億16百万円(2026年2月期 決算短信〔日本基準〕(連結))。収益規模と利益貢献が事業によって大きく異なることが読み取れます。
  • ヘルス&ウエルネス事業の営業収益1兆6,333億18百万円(対前期比123.5%)、営業利益523億68百万円(前期より163億61百万円の増益)(2026年2月期 決算短信〔日本基準〕(連結))。利益の柱が一つ増えたことが読み取れます。
  • 総資産15兆3,696億58百万円、自己資本比率7.9%(金融を除く14.3%)(2026年2月期 決算短信〔日本基準〕(連結))。金融事業を含むことで連結の資産が大きくなっていることが読み取れます。

Otsumuの読み解き:なぜ成り立つのか

ここからはOtsumuの考察です。この事業は「店舗×EC(オムニチャネル)」と「ポイント経済圏」の2つの型を、複数の事業会社をまたいで組み立てています。GMS事業のイオンリテールでは原価と人件費の上昇が利益を圧迫しています。それでも全体として利益が伸びているのは、小売の店舗網が集めた来店客と購買データが、モールの賃料や金融の債権残高といった別の事業の収益に転換されているからだと読めます。

この型を成り立たせる裏側の仕事は、共通の顧客IDと決済手段の整備です。iAEONやAEON Payでデータをまとめ、グループ外の店舗にも決済を広げる取り組みは、小売の来店を「グループ全体の顧客接点」に変える基盤づくりだと考えられます。同時に、PBのサプライチェーンやセルフレジ導入といった原価・人時の管理がなければ、価格訴求と利益の両立は難しいと読めます。

トレードオフは、規模と資本効率です。統合や完全子会社化で規模と利益の柱を増やす一方、借入や資産の増加、事業構造改革のコストが発生しています。規模の拡大と収益力の強化を同時に進める難しさが、純利益の内訳に表れていると考えられます。

自社事業に持ち帰る問い

  • 自社の中核事業で得ている顧客接点(来店、購買、会員登録)は、別の収益源に転換できているか。
  • 顧客IDや決済といった共通基盤を持つことで、事業ごとの施策が全体の収益につながる仕組みになっているか。
  • 中核事業の利益率が薄いとき、原価管理でどこまで守り、周辺事業でどこまで補うのかを決めているか。

小さく試すなら

  1. 自社の顧客接点を1つ選び(会員登録、購買履歴、来店など)、そこで得られる情報が他の商品・サービスの提案に使えるかを洗い出す(1週間)。
  2. 既存顧客の一部に、その情報を使った提案を1種類だけ実施し、反応率と追加購買額、提案にかかった費用を記録する(2〜3週間)。
  3. 追加購買額が費用を上回れば提案の種類を増やす。上回らなければ、対象顧客の絞り込みや提案内容を変えて再試行する。

関連するビジネスモデル

資料の位置づけ

企業・サービス:イオン株式会社 / 総合小売・金融・不動産(イオン生活圏)。参照資料:2026年2月期 決算短信〔日本基準〕(連結)。このページは公開情報にもとづく学習用の分析です。Otsumuの支援実績や当該企業との取引関係を示すものではありません。示唆と検証案はOtsumuの考察であり、企業自身の見解とは区別しています。

参考資料と編集について

上記の公開資料(企業の決算短信または年次報告書)をもとに、Otsumuが執筆しました。数値と企業の説明は資料の記載の範囲にとどめ、Otsumuの考察とは分けています。数値は資料の表記のままで、最新の情報は各社の開示をご確認ください。

執筆:Otsumu株式会社 / 編集日 2026.09.27

あわせて読む

次の一手を、一緒に。

事業の検証から開発・運用まで、現在の段階に合わせて支援します。

事業について相談する ↗
FROM KNOWLEDGE TO ACTION

知識を、次の一手へ。

30分の無料診断で、次の一手を整理する ↗