この事例の要点
- 2025年12月期の連結売上高は330,193百万円(前期比2.3%増、為替の影響を除くと2.6%増)、営業利益は18,467百万円(同6.3%増)で、連結売上高に占める海外売上高の割合は34.8%でした(2025年12月期決算短信〔日本基準〕(連結))。
- 化粧品事業は売上高262,303百万円で営業利益率6.4%、コスメタリー事業は売上高64,493百万円で営業利益率9.7%と、事業ごとに規模と利益率が異なります(2025年12月期決算短信〔日本基準〕(連結))。
- 北米ではオフラインチャネルが前期を下回った一方、既存ECチャネルの好調と大手ECプラットフォームとの新規取引開始に伴う出荷増がその減少分を補いました(2025年12月期決算短信〔日本基準〕(連結))。
どんな事業か
株式会社コーセーホールディングスのグループは、化粧品事業、コスメタリー事業、その他の区分で業績を示しています。化粧品事業はハイプレステージとプレステージからなり、ハイプレステージには「コスメデコルテ」やアルビオン事業の主要ブランド、「ジルスチュアート」など、プレステージには「ONE BY KOSÉ」「雪肌精」などが含まれます(2025年12月期決算短信〔日本基準〕(連結))。
コスメタリー事業には、コーセー事業のセルフメイクアップブランドや「メイクキープ」「ヴィセ」、コーセーコスメポート事業の「ソフティモ」などが含まれます。その他の事業は、主にアメニティ事業です(2025年12月期決算短信〔日本基準〕(連結))。
地域別の売上高は、日本215,333百万円(構成比65.2%)、アジア44,100百万円(13.4%)、北米61,848百万円(18.7%)、その他8,910百万円(2.7%)です。北米では「タルト」を展開し、アジアでは新規連結対象となったタイのピューリ事業の売上が上乗せされました(2025年12月期決算短信〔日本基準〕(連結))。
収益の仕組み
売上は、自社ブランドの化粧品を各流通チャネルに出荷・販売することで生まれます。決算短信では、チャネルごとの動きが説明されています。アジアでは、同社主導の出荷コントロールを実施した免税チャネルが減収となった一方、大型ECセールの取り組みが奏功した中国本土が増収となりました。北米ではオフラインチャネルが減少し、EC関連が補いました。コーセーブランドは大手流通への「雪肌精」の出荷が増加し、増収となりました(2025年12月期決算短信〔日本基準〕(連結))。
費用については、ブランドプレゼンスの向上を目的とした積極的なマーケティング投資によってタルト事業とアルビオン事業が減益となった一方、コーセー事業では販売費及び一般管理費の抑制が増益に寄与したと説明されています。2026年12月期は、原価低減と販売費及び一般管理費の見直しで、新設する南アルプス工場の減価償却費等の増加を吸収するとしています。ただし、今回参照した公開資料には費用の内訳は示されていません(2025年12月期決算短信〔日本基準〕(連結))。
数字で確かめる
- 連結売上高330,193百万円(前期比2.3%増)、営業利益18,467百万円(同6.3%増)、売上高営業利益率5.6%(2025年12月期決算短信〔日本基準〕(連結))。増収率を上回って営業利益が伸びたことが読み取れます。
- 化粧品事業の売上高262,303百万円(前期比2.7%増)、営業利益16,768百万円(同11.4%増)(2025年12月期決算短信〔日本基準〕(連結))。中国本土の構造改革の効果と販管費の抑制が、主力事業の増益につながったことが読み取れます。
- コスメタリー事業の売上高64,493百万円(前期比0.3%減)、営業利益6,252百万円(同10.4%減)(2025年12月期決算短信〔日本基準〕(連結))。メイクアップブランドの減収による粗利減が、利益を押し下げたことが読み取れます。
- アジアの売上高44,100百万円(前期比8.6%増)、北米の売上高61,848百万円(同0.3%減)(2025年12月期決算短信〔日本基準〕(連結))。地域によって伸びが大きく異なることが読み取れます。
- 2030年をマイルストーンとした定量目標は、売上高成長率CAGR+5%以上、営業利益率12%以上、ROIC10%以上(2025年12月期決算短信〔日本基準〕(連結))。現状の営業利益率5.6%からの引き上げを目標に据えていることが読み取れます。
Otsumuの読み解き:なぜ成り立つのか
ここからはOtsumuの考察です。この事例は「卸・ディストリビューター」と「店舗×EC(オムニチャネル)」の型から読むと整理しやすいと考えられます。同社は価格帯の異なる多数のブランドを持ち、それぞれを大手流通、免税、EC、オフラインの店頭など複数のチャネルに出荷しています。チャネルごとに売れ行きが異なっても、他のチャネルで補える構造が、北米での減少分をECが補った当期の動きに表れていると読めます。
裏側で必要な仕事は、チャネルごとの出荷量と在庫の管理です。同社が免税チャネルで自ら出荷コントロールを行ったことは、流通側に在庫が積み上がって値崩れが起きることを避け、ブランドの価値を守るための判断と考えられます。その代わりに短期の売上は減るため、出荷を絞る判断と売上目標の両立が難しい仕事になると読めます。
トレードオフとして、ブランドの認知を高めるマーケティング投資は、タルト事業やアルビオン事業のように当期の利益を押し下げます。2030年に営業利益率12%以上を目指す中で、投資を続けるブランドと費用を抑えるブランドをどう選ぶかが、事業全体の論点になると考えられます。
自社事業に持ち帰る問い
- 自社の商品は、どのチャネルで、どの価格帯の顧客に売れているか。チャネル別の売上と利益を把握しているか。
- ある販売チャネルが落ち込んだとき、他のチャネルで補える準備はあるか。
- 流通側の在庫が過剰になっていないか。短期の売上を下げてでも出荷を絞る判断基準を持っているか。
- ブランドへの投資と当期の利益のバランスを、ブランドごとにどう決めているか。
小さく試すなら
- 直近半年の売上をチャネル別(店頭、自社EC、外部EC、卸先など)に分け、それぞれの売上と粗利を一覧にする。
- 伸びているチャネルと落ちているチャネルを1つずつ選び、落ちているチャネルの在庫や値引きの状況を取引先に確認する。
- 伸びているチャネルで、落ちているチャネルの主力商品を2〜4週間重点的に扱い、販売数と値引き率を記録する。
- 値引きを増やさずに販売数が補えれば配分を見直し、補えなければ出荷量の調整を検討する。
関連するビジネスモデル
資料の位置づけ
企業・サービス:株式会社コーセーホールディングス / 化粧品・コスメタリーの製造販売。参照資料:2025年12月期決算短信〔日本基準〕(連結)。このページは公開情報にもとづく学習用の分析です。Otsumuの支援実績や当該企業との取引関係を示すものではありません。示唆と検証案はOtsumuの考察であり、企業自身の見解とは区別しています。
参考資料と編集について
上記の公開資料(企業の決算短信または年次報告書)をもとに、Otsumuが執筆しました。数値と企業の説明は資料の記載の範囲にとどめ、Otsumuの考察とは分けています。数値は資料の表記のままで、最新の情報は各社の開示をご確認ください。
執筆:Otsumu株式会社 / 編集日 2026.09.27