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OTSUMU KNOWLEDGE

LINEヤフー「LINE」「Yahoo! JAPAN」のメディア・コマースに学ぶ事業設計

「LINE」「ヤフー」「PayPay」の利用者基盤で広告を稼ぎ、eコマースと決済・金融へ利用を広げるグループ経済圏の事業です。売上収益2,036,366百万円の決算短信から、広告とポイント経済圏を組み合わせる仕組みを確かめます。

この事例の要点

  • 売上収益は2,036,366百万円(前期比6.2%増)、調整後EBITDAは496,681百万円(同5.5%増)で、ともに6期連続で過去最高を更新しました(2026年3月期決算短信〔IFRS〕(連結))。
  • 事業はメディア事業、コマース事業、戦略事業に大別され、当期の成長を主に担ったのはPayPay連結を中心とする戦略事業(売上収益4,457億円、前年同期比30.6%増)でした(2026年3月期決算短信〔IFRS〕(連結))。
  • 同社は「LINE」「ヤフー」「PayPay」の3つの起点をつなげてクロスユースを促し、グループ経済圏を拡大することを掲げています(2026年3月期決算短信〔IFRS〕(連結))。

どんな事業か

メディア事業では、多様なメディアサービスを提供して多くの利用者を集め、企業等の広告を掲載することで収益を上げています。主なサービスは検索広告、「LINE公式アカウント」などのアカウント広告、ディスプレイ広告のほか、「LINEスタンプ」「LYPプレミアム」などです(2026年3月期決算短信〔IFRS〕(連結))。

コマース事業では、「Yahoo!ショッピング」などのショッピング事業、「Yahoo!オークション」「Yahoo!フリマ」などのリユース事業、「一休.com」などのサービスEC事業に加え、「ZOZOTOWN」や「ASKUL」「LOHACO」を展開しています。戦略事業では、国内のコード決済でシェア約3分の2を占めるとする「PayPay」を起点に、クレジットカード、銀行、証券、保険などの金融サービスの拡大を図っています(2026年3月期決算短信〔IFRS〕(連結))。

財務以外の主要指標として、同社はYahoo! JAPANの1日あたりの利用ブラウザ数(DUB)、LINEの月間アクティブユーザー数(MAU)とDAU/MAU比率を重視していると説明しています(2026年3月期決算短信〔IFRS〕(連結))。

収益の仕組み

メディア事業は広告収益が中心です。当期はアカウント広告が有償アカウント数の増加や従量課金の拡大を背景に売上収益が前年同期比15.3%増となり、ディスプレイ広告も増加した一方、検索広告は減少しました。同社は「LINE公式アカウント」と法人向けサービスを連携する「Connect One」構想や「LINEミニアプリ」により、広告にとどまらない収益機会の拡大も目指しています(2026年3月期決算短信〔IFRS〕(連結))。

コマース事業と戦略事業では、グループ横断の有料会員プログラム「LYPプレミアム」で特典を組み合わせ、eコマース取扱高の拡大と、「PayPay」や「PayPayカード」の会員数・取扱高の増加につなげていると説明しています(2026年3月期決算短信〔IFRS〕(連結))。

費用の内訳は今回参照した公開資料には詳しく示されていません。調整後EBITDAについては、販促費、人件費、減価償却費及び償却費を中心に販管費が増加したと説明されています。メディア事業では販促費や生成AI関連費用等、コマース事業では販売促進費や広告宣伝費等、戦略事業では販売促進費や支払手数料の増加が挙げられています(2026年3月期決算短信〔IFRS〕(連結))。

数字で確かめる

  • 売上収益:2,036,366百万円(前期比6.2%増)、営業利益:341,322百万円(同8.3%増)(2026年3月期決算短信〔IFRS〕(連結))。グループ全体で増収増益だったことが読み取れます。
  • メディア事業:売上収益7,351億円(前年同期比0.4%増)、調整後EBITDA2,806億円(同2.2%減)(2026年3月期決算短信〔IFRS〕(連結))。売上はほぼ横ばいでも、利益の大きな柱であることが読み取れます。
  • コマース事業:eコマース取扱高4兆6,729億円(前年同期比7.1%増)、売上収益8,576億円(同1.1%増)(2026年3月期決算短信〔IFRS〕(連結))。取扱高の伸びに比べ売上収益の伸びが小さいことが読み取れます。
  • 戦略事業:PayPay(株)の連結取扱高19.3兆円(前年同期比22.9%増)、調整後EBITDA939億円(同85.0%増)(2026年3月期決算短信〔IFRS〕(連結))。決済を起点とする事業が成長を担っていることが読み取れます。
  • 2027年3月期の予想:売上収益2兆2,400億円(前年同期比10.0%増)(2026年3月期決算短信〔IFRS〕(連結))。同社がさらなる増収を見込んでいることが読み取れます。

Otsumuの読み解き:なぜ成り立つのか

ここからはOtsumuの考察です。この事業は「広告」と「ポイント経済圏」の型で読むことができます。広告の型は、日常的に使われるメディアで多くの利用者を集め、その接点を企業に提供することで成り立ちます。同社がDUBやMAU、DAU/MAU比率を主要指標に置いていることは、広告の価値が利用者の数と接触の頻度に支えられていることを示していると読めます。

ポイント経済圏の型は、決済、買い物、会員特典をつなぎ、一つのサービスの利用が別のサービスの利用を呼ぶ状態をつくることで成り立ちます。同社が「LYPプレミアム」などでクロスユースを促していることは、利用者を経済圏の中で回遊させる仕組みづくりと考えられます。裏側では、サービスを横断するデータの活用、加盟店や出店者の獲得、販促費の配分といった仕事が続きます。

トレードオフは、経済圏を広げるための販促費が利益を圧迫しうることです。当期のコマース事業では、アスクル(株)のシステム障害影響のほか、販売促進費や広告宣伝費等の増加などにより、調整後EBITDAが12.8%減となりました。また同社はパーソナルデータの保護をはじめとするセキュリティの強化を最優先課題としており、データを横断的に使うほど、その信頼を守る責任も重くなる構造と読めます。

自社事業に持ち帰る問い

  • 自社の複数のサービスや商品は、一方の利用がもう一方の利用につながるように設計されていますか。
  • 顧客との接点を、広告や告知だけでなく、予約・注文・決済まで一続きにできないでしょうか。
  • 利用を促すための割引や特典に使う費用を、どの指標で回収できたと判断していますか。

小さく試すなら

  1. 自社の既存顧客を、利用しているサービス・商品の数で分け、併用している顧客とそうでない顧客の購入額を比べます。
  2. 単一のサービスだけを使う顧客に向けて、別のサービスの初回利用で使える特典を一つ用意します。
  3. 2〜4週間案内し、併用に移った割合と、特典にかけた費用を記録します。
  4. 併用に移った顧客のその後の購入額が特典の費用を上回る見込みが立てば、対象と特典の種類を広げるかを判断します。

関連するビジネスモデル

資料の位置づけ

企業・サービス:LINEヤフー株式会社 / 「LINE」「Yahoo! JAPAN」のメディア・コマース・Fintech。参照資料:2026年3月期 決算短信。このページは公開情報にもとづく学習用の分析です。Otsumuの支援実績や当該企業との取引関係を示すものではありません。示唆と検証案はOtsumuの考察であり、企業自身の見解とは区別しています。

参考資料と編集について

上記の公開資料(企業の決算短信または年次報告書)をもとに、Otsumuが執筆しました。数値と企業の説明は資料の記載の範囲にとどめ、Otsumuの考察とは分けています。数値は資料の表記のままで、最新の情報は各社の開示をご確認ください。

執筆:Otsumu株式会社 / 編集日 2026.09.27

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