この事例の要点
- Manchester United plcは、商業収益(スポンサーシップと物販・ライセンス)、放映収益、試合日収益の3つで収益を上げています。2026年6月期の売上高は677.6百万ポンド(前期666.5百万ポンド)で、商業収益は売上の46.8%でした(Form 20-F、2026年6月期)。
- 放映収益は206.8百万ポンドで前期より19.6%増えました。男子トップチームがプレミアリーグで前期の15位から3位に上がったことが主因と説明されています(Form 20-F、2026年6月期)。
- 一方で当期は42,954千ポンドの損失でした。収益が成績と試合数に左右される事業で、費用は選手の登録権の償却を含めて固定的に積み上がる構造が見えます(Form 20-F、2026年6月期)。
どんな事業か
Manchester United plcは英国マンチェスターのオールド・トラッフォードに本社を置き、Class A普通株式がニューヨーク証券取引所に上場しているサッカークラブの運営会社です。男子のトップチームはイングランドのプレミアリーグに所属し、女子チームの試合や、スタジアムでのその他のイベントも運営しています(Form 20-F、2026年6月期)。
同社は、トップチームの成績が、スポンサーシップ、物販・ライセンス、放映、試合日の4つの収益に影響すると説明しています。スタジアムの収容人数は74,500人で、プレミアリーグの試合の観客数は過去28年間、収容人数の99%超を維持していると述べています(Form 20-F、2026年6月期)。
収益の仕組み
収益は3つの区分で開示されており、それぞれ課金の相手と時期が異なります。
- 商業収益:スポンサーシップと、物販・アパレル・商品ライセンス。主要な商業契約の期間は通常2〜5年で、スポーツウェア、通信、ベッティング、清涼飲料、旅行、金融などの業種と結ばれます。2024年10月からは、SCAYLEと組んだ自社運営のEコマースに切り替えています。
- 放映収益:プレミアリーグやUEFAが一括して交渉する放映契約からの分配金で、成績に応じた配分や欧州大会の賞金・分配を含みます。
- 試合日収益:チケット販売と飲食などで、ホームゲームの数と成績に左右されます。
売上の依存先は開示されており、売上への寄与が最も大きい顧客はプレミアリーグで30.1%、2番目はadidasで12.7%でした(Form 20-F、2026年6月期)。
数字で確かめる
- 売上高は677.6百万ポンドで、前期より11.1百万ポンド(1.7%)増えました。放映収益の増加が、商業収益と試合日収益の減少を上回ったことが読み取れます(Form 20-F、2026年6月期)。
- 商業収益は317.3百万ポンドで4.8%減りました。スポンサーシップは160.5百万ポンドで14.8%減り、前期にあったトレーニングキットのスポンサー契約が終わったことが主因です。一方、物販・商品ライセンスは156.8百万ポンドで8.2%増え、自社運営ECが通期で稼働したことが要因とされています。単一の契約の終了が収益を動かすこと、自社で売る範囲を広げると物販が伸びることが読み取れます(Form 20-F、2026年6月期)。
- 放映収益は206.8百万ポンドで前期の172.9百万ポンドから増えました。UEFA大会に出なかったことによる減少を、リーグ順位の上昇による分配の増加が上回ったことが読み取れます(Form 20-F、2026年6月期)。
- 試合日収益は153.5百万ポンドで4.2%減りました。ホームゲームが前期より10試合少なかったためで、一般席とホスピタリティの需要は強かったと説明されています。収益は試合数に比例するため、試合の数が収益の上限を決めることが読み取れます(Form 20-F、2026年6月期)。
- 営業費用は701.9百万ポンドで、うち従業員費用は302.0百万ポンド、選手の登録権などの償却は211.8百万ポンドでした。売上677.6百万ポンドを営業費用が上回り、当期の損失は42,954千ポンドでした。費用の多くが固定的であることが読み取れます(Form 20-F、2026年6月期)。
Otsumuの読み解き:なぜ成り立つのか
ここからはOtsumuの考察です。この事業は「スポンサーシップ・協賛」の型で読むことができます。ファンという注目の集まりを、企業に向けて売る構造です。注目の源は試合の成績とブランドで、そこから協賛、物販、放映の分配、観戦の売上が派生します。成績が一つ上がると、複数の収益が同時に動くことが、今期の放映収益の増加からも読み取れます。
注目したいのは、物販を自社運営のECに切り替えた点です。同社は自社運営のEコマースによって、ブランドと商品への管理を強め、ファンへの体験を高めると説明しています。他社に売り場と顧客データを渡す形から、自社で売る形に移すと、物販の収益が増えたと読めます。ただし、切り替え条件の変更に伴う一回限りの計上が含まれると資料に書かれており、増加のすべてが継続的な伸びとは言えない点には注意が必要です。
この型の弱点も数字に出ています。収益のかなりの部分が、リーグの分配とスポンサー契約という外部の決定に結びついています。収益が成績と試合数に左右される一方、費用は固定的なので、利益は大きく振れます。収益の「変動」と費用の「固定」の組み合わせが、この事業の中心的な課題だと読めます。
自社事業に持ち帰る問い
- 自社の収益は、一つの外部要因(大口の契約や取引先)にどれだけ左右されていますか。
- 自社の注目や信用を、広告・協賛・物販・サービスなど、複数の形で収益に変えられていますか。
- 他社に任せている販売や顧客接点を、自社で運営した場合、何が増え、何が重くなりますか。
小さく試すなら
- 過去2年の売上を、課金の形(契約型・取引型・イベント型)に分け、外部要因で動いた部分に印を付けます。
- 最も大きい1社への依存度を計算し、その契約が終わった場合の影響を試算します。
- 他社経由で売っている商品の一部を、自社サイトで試験的に販売し、売上・粗利・顧客データの量を比べます。
- 2〜4週間の結果をもとに、自社で売る範囲を広げるかどうかを決めます。
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資料の位置づけ
企業・サービス:Manchester United plc / サッカークラブの運営。参照資料:Form 20-F(2026年6月期)。このページは公開情報にもとづく学習用の分析です。Otsumuの支援実績や当該企業との取引関係を示すものではありません。示唆と検証案はOtsumuの考察であり、企業自身の見解とは区別しています。
参考資料と編集について
上記の公開資料(目論見書・年次報告書・企業の公式発表など)をもとに、Otsumuが執筆しました。数値と企業の説明は資料の記載の範囲にとどめ、Otsumuの考察とは分けています。数値は資料の表記のままで、最新の情報は各社の開示をご確認ください。
執筆:Otsumu株式会社 / 編集日 2026.10.25