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OTSUMU KNOWLEDGE

MercadoLibre, Inc.のEC・フィンテック一体型エコシステムに学ぶ事業設計

中南米でマーケットプレイスと決済・与信を一体で運営する事業です。Net revenues and financial incomeは$28,893 million。取引の流れを押さえた決済が、融資の回収や物流・広告の収益にどうつながるかが学べます。

この事例の要点

  • 同社は、EC基盤「Mercado Libre Marketplace」とフィンテック基盤「Mercado Pago」を中核に、物流のMercado Envios、広告のMercado Ads、クラシファイドを組み合わせたエコシステムを中南米で運営していると説明しています(Form 10-K、FY2025)。
  • 収益はCommerceとFintechの2本立てで、地域別にはBrazilが売上の52.6%を占めます(Form 10-K、FY2025)。
  • マーケットプレイスの取引はMercado Pagoで処理・決済されるため、出店者向け融資の元利をその売上から回収でき、回収不能のリスクを下げられると同社は説明しています(Form 10-K、FY2025)。

どんな事業か

同社のEC基盤は18か国、Mercado Pagoは8か国で展開していると説明しています。対象地域は人口が「over 650 million people」とされ、小売に占めるECの比率が米国などに比べて低い地域と位置づけています(Form 10-K、FY2025)。

マーケットプレイスでは、流通総額(GMV)の大半を第三者の出店者(3P)が占め、同社が在庫を持って直接販売する1Pは一部カテゴリーに限られGMVの10%未満です。物流のMercado Enviosでは、出店者が同社倉庫に在庫を置くフルフィルメントセンターが出荷の半分超を担います(Form 10-K、FY2025)。

Mercado Pagoは当初、マーケットプレイスでの安全な支払いのために作られ、その後、外部のオンライン加盟店、POS端末やQRコードによる実店舗の決済へと広がりました。デジタル口座では送金、カード、融資、保険、資産運用などを提供しています。報告セグメントはBrazil、Mexico、Argentina、Other Countriesの地域別です(Form 10-K、FY2025)。

収益の仕組み

Commerceは、ServicesとProduct Salesから成ります。Servicesの中心はマーケットプレイスの手数料で、決済利用を含む成約手数料(final value fees)、一定金額未満の取引の定額手数料、配送料、保管料、広告販売、会員サブスクリプション料などが含まれます。Product Salesは1Pの商品販売と関連する配送料です(Form 10-K、FY2025)。

Fintechは3つです。外部加盟店での決済手数料や分割払い、口座残高の運用益などの「Financial services and income」、融資やクレジットカードの金利・手数料の「Credit Revenues」、モバイルPOS端末の販売の「Fintech Product Sales」です(Form 10-K、FY2025)。

費用面では、出店者向けの送料補助や第三者の配送業者の利用が言及されています。為替感応度の表では、売上原価・金融費用と営業費用を合わせたExpensesが$25,692 millionと示されていますが、今回参照した公開資料の範囲では費用の内訳は示されていません(Form 10-K、FY2025)。

数字で確かめる

  • Net revenues and financial incomeは$28,893 million(Form 10-K、FY2025。為替感応度分析の表のActual欄)。ECと金融を合わせた事業規模が読み取れます。
  • Income from operationsは$3,201 million、Net Incomeは$1,997 million(Form 10-K、FY2025)。多数のサービスを抱えつつ営業段階で利益を出していることが読み取れます。
  • 売上の地域別構成はBrazil 52.6%、Mexico 22.4%、Argentina 20.6%、Other countries 4.4%(Form 10-K、FY2025)。上位3か国への集中が読み取れます。
  • credit card receivables and other means of payments, netは$7,046 million(Form 10-K、FY2025)。決済と与信が大きな債権を抱える事業であることが読み取れます。
  • Argentinaの年間インフレ率は31.5%で、アルゼンチン子会社は機能通貨を米ドルとしています(Form 10-K、FY2025)。為替・物価が業績に直接影響する環境が読み取れます。

Otsumuの読み解き:なぜ成り立つのか

ここからはOtsumuの考察です。マーケットプレイスの型として見ると、この事業は「売り手と買い手が集まる場」に、配送・広告・決済を同社自身が付け足している点が特徴と読めます。送料補助やフルフィルメントセンターは費用がかかる仕組みですが、配送体験を同社が管理できれば購入のためらいが減り、出店者の売上が増え、成約手数料や広告の収入も増える、という循環が前提になっていると考えられます。

決済の型として見ると、Mercado Pagoが展開する国ではマーケットプレイスの取引をすべてMercado Pagoが処理していることが、融資事業の土台になっていると読めます。出店者の売上データを与信に使い、返済をその売上から回収できるため、外部の金融機関よりも有利な条件で貸せる余地があると考えられます。一方で、裏側では独自の与信モデルの運用、資金調達、各国の金融規制への対応といった重い仕事が必要になります。

トレードオフは、サービスを重ねるほど固定的な投資と国ごとのリスクが増える点です。インフレや為替の変動が大きい国で事業を行う以上、ECの取扱いが伸びても、ドル建ての業績は為替で目減りし得ます。

自社事業に持ち帰る問い

  • 自社の取引の「お金の流れ」を自社で通しているか。通すことで、どんな追加サービス(与信、前払い、保証など)が可能になるか。
  • 売り手の体験のうち、外部に任せているために品質を管理できていない部分(配送、決済、問い合わせ)はどこか。
  • 送料補助のような「利用を促すための費用」を、どの収益で回収する設計になっているか。
  • 取引データを、広告や与信など別の収益源に使える形で蓄積できているか。

小さく試すなら

  1. 直近の取引から、代金の受け渡しで問題が起きた件数と理由を洗い出し、決済を自社で仲介した場合に減らせる問題を書き出す(1週目)。
  2. 取引実績のある売り手数社に、売上の前払いや仕入れ資金の立替に需要があるかをヒアリングする(2週目)。
  3. 取引実績から「立替えても回収できそうな売り手」の条件を仮に定め、少額・短期の立替を手作業で試す(3〜4週目)。
  4. 回収が予定どおりに進み、売り手の取引量が増える兆しがあれば、決済仲介と立替の仕組み化に進む。

関連するビジネスモデル

資料の位置づけ

企業・サービス:MercadoLibre, Inc. / 中南米のEC「Mercado Libre」とフィンテック「Mercado Pago」。参照資料:Form 10-K(FY2025)。このページは公開情報にもとづく学習用の分析です。Otsumuの支援実績や当該企業との取引関係を示すものではありません。示唆と検証案はOtsumuの考察であり、企業自身の見解とは区別しています。

参考資料と編集について

上記の公開資料(企業の決算短信または年次報告書)をもとに、Otsumuが執筆しました。数値と企業の説明は資料の記載の範囲にとどめ、Otsumuの考察とは分けています。数値は資料の表記のままで、最新の情報は各社の開示をご確認ください。

執筆:Otsumu株式会社 / 編集日 2026.09.27

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