この事例の要点
- 同社はMarketplace、Fintech、USを柱とし、グループの売上収益は229,293百万円(前年同期比19.0%増)、コア営業利益は過去最高を更新したと説明しています(2026年6月期 決算短信〔IFRS〕(連結))。
- MarketplaceのGMVは前年同期比14.7%増の12,856億円で、2023年6月期以来の二桁成長に戻ったとしています(2026年6月期 決算短信〔IFRS〕(連結))。
- Fintechの債権残高は前年同期比44.4%増の3,581億円に伸び、債権回収率は99.4%でした(2026年6月期 決算短信〔IFRS〕(連結))。
どんな事業か
同社は「あらゆる価値を循環させ、あらゆる人の可能性を広げる」をグループミッションに掲げています。国内ではフリマアプリ「メルカリ」のMarketplaceと、決済・与信のFintechを運営し、これらを報告セグメント「Japan Business」としています。海外ではUSで同様のマーケットプレイスを展開しています(2026年6月期 決算短信〔IFRS〕(連結))。
Marketplaceでは、安心・安全な取引環境の構築を中心とするコア体験の強化を最優先に進めたと説明しています。注力領域の越境取引は、エンタメ・ホビーカテゴリーの需要を捉えてGMVが1,122億円(Marketplace GMV全体の約9%)となり、駿河屋との提携による取扱在庫の拡充や、グローバルアプリの提供開始にも取り組みました(2026年6月期 決算短信〔IFRS〕(連結))。
Fintechでは、日常の決済・与信の場面で選ばれるプロダクトを目指すとしています。「メルカリ」内の取扱高に加え、「メルカード」の会員獲得と利用シーンの拡大で外部取扱高が伸びたと説明しています。与信は「メルペイのあと払い(翌月払い・定額払い・分割払い)」と「メルペイスマートマネー」が対象で、独自のAI与信による厳格な与信コントロールを行っているとしています(2026年6月期 決算短信〔IFRS〕(連結))。
収益の仕組み
収益の入口は、MarketplaceのGMV、つまり個人間の取引の流通総額と、Fintechの決済・与信の取扱高です。決算短信では、GMVの成長がMarketplaceのコア営業利益を押し上げ、Creditの成長がFintechの収益力を高めたと説明しています。一方で、手数料率など売上収益の内訳の詳細は、今回参照した決算短信には示されていません(2026年6月期 決算短信〔IFRS〕(連結))。
費用面では、USでカテゴリー特化のCRM施策や送料値引きキャンペーンなどのマーケティング投資を行ったとしていますが、費用の内訳は示されていません。資金面では、あと払い等の利用増加で営業債権及びその他の債権が増え、営業活動によるキャッシュ・フローは9,512百万円の支出でした。債権の流動化などで社債及び借入金が増えたとも説明しています(2026年6月期 決算短信〔IFRS〕(連結))。
数字で確かめる
- 売上収益229,293百万円(前年同期比19.0%増)、営業利益43,905百万円(前年同期比57.7%増)(2026年6月期 決算短信〔IFRS〕(連結))。増収以上に利益が伸びていることが読み取れます。
- Marketplaceのコア営業利益は429億円(前年同期比40.6%増)(2026年6月期 決算短信〔IFRS〕(連結))。GMVの伸びが利益に直結しやすい構造が読み取れます。
- Fintechの売上収益は651億円(前年同期比29.2%増)、コア営業利益は前年同期比46億円増の91億円(2026年6月期 決算短信〔IFRS〕(連結))。与信が収益の柱に育ちつつあることが読み取れます。
- Japan Businessは売上収益180,858百万円、セグメント利益51,316百万円(2026年6月期 決算短信〔IFRS〕(連結))。国内事業が利益の中心であることが読み取れます。
- USのGMVは810百万米ドル(前年同期比11.2%増)、売上収益40,782百万円、セグメント利益1,664百万円(2026年6月期 決算短信〔IFRS〕(連結))。ブレイクイーブンを保ちながら成長を目指す段階であることが読み取れます。
Otsumuの読み解き:なぜ成り立つのか
ここからはOtsumuの考察です。マーケットプレイスの型として見ると、この事業の土台は、出品者と購入者が安心して取引できる環境です。同社がコア体験の強化を最優先にし、その結果としてお客さま数・単価・頻度がバランスよく成長する基盤が確立したと説明している点は、取引の場の信頼がGMVの伸びの前提になっていることを示すと読めます。越境取引は、国内の出品物を海外の需要につなぐことで、同じ供給から取引を増やす試みと考えられます。
決済の型として見ると、メルカリ内で生まれる売上金や購入代金の流れが、メルペイの決済・与信の入口になっていると読めます。取引の場を持つ事業者は、利用者の行動データを与信に使える可能性があり、それが99.4%という回収率の水準を支える一因になっていると考えられます。ただし、回収率の定義は11か月前に請求した金額に対する回収割合であり、景気や利用者層の変化で動き得る点には注意が必要です。
トレードオフは、与信を伸ばすほど債権が積み上がり、資金が先に出ていく点です。営業キャッシュ・フローが支出になっているのはこの構造の表れと読め、債権の流動化や借入による資金調達の仕事が裏側で欠かせないと考えられます。
自社事業に持ち帰る問い
- 自社の取引の場で、利用者が安心して取引するために最も効いている「コア体験」は何か。それを数値で追えているか。
- 取引の場で生まれるお金の流れ(売上金、預り金)を、決済や与信など別のサービスにつなげられる余地はあるか。
- 後払いや分割払いを提供した場合、回収に必要な資金と期間を誰がどう負担するか。
- 既存の在庫や出品を、別の地域や顧客層の需要につなげる経路はあるか。
小さく試すなら
- 自社の取引で、購入をやめた理由や取引トラブルの記録を集め、安心感を損なっている要因を上位5件に絞る(1週目)。
- そのうち1件について、表示や手続きの改善を行い、改善前後の取引完了率を比べる(2〜3週目)。
- 常連の利用者数名に、支払いを後日にできる選択肢があれば利用頻度が変わるかをヒアリングする(3週目)。
- 取引完了率の改善と後払いの需要の両方が確認できれば、回収の条件と資金の手当てを設計する段階に進む。
関連するビジネスモデル
資料の位置づけ
企業・サービス:株式会社メルカリ / フリマアプリ「メルカリ」と決済・与信「メルペイ」。参照資料:2026年6月期 決算短信〔IFRS〕(連結)。このページは公開情報にもとづく学習用の分析です。Otsumuの支援実績や当該企業との取引関係を示すものではありません。示唆と検証案はOtsumuの考察であり、企業自身の見解とは区別しています。
参考資料と編集について
上記の公開資料(企業の決算短信または年次報告書)をもとに、Otsumuが執筆しました。数値と企業の説明は資料の記載の範囲にとどめ、Otsumuの考察とは分けています。数値は資料の表記のままで、最新の情報は各社の開示をご確認ください。
執筆:Otsumu株式会社 / 編集日 2026.09.27