この事例の要点
- 株式会社ネクソンはPCオンラインゲームとモバイルゲームの制作・開発、配信を行い、主に基本利用料を無料としてゲーム内の有料アイテム購入時に課金する「アイテム課金制」で収益を得ています(2025年12月期決算短信〔IFRS〕(連結))。
- 2025年12月期の売上収益は475,102百万円(前期比6.5%増)で過去最高となった一方、営業利益は124,012百万円(同0.1%減)でした(2025年12月期決算短信〔IFRS〕(連結))。
- 自社配信、他社への配信権の供与(ライセンス供与)、他社タイトルの配信(ライセンス配信)の3つのモデルを組み合わせています(2025年12月期決算短信〔IFRS〕(連結))。
どんな事業か
同社グループは、当社、連結子会社36社並びに持分法で会計処理されている関連会社及び共同支配企業13社で構成され、PCオンラインゲーム及びモバイルゲームの制作・開発、配信に関連した事業を行っていると説明しています。代表的なタイトルは『メイプルストーリー』、『アラド戦記』、『EA SPORTS FC ™ ONLINE』などです(2025年12月期決算短信〔IFRS〕(連結))。
報告セグメントは所在地別の「日本」「韓国」「中国」「北米」「その他」の5つで、「その他」には欧州及びアジア諸国が含まれます。当期の売上収益は韓国が400,657百万円、北米が28,125百万円(前期比59.7%増)、その他が39,037百万円(同477.1%増)でした。韓国セグメントの売上収益には、NEOPLE INC.の中国におけるライセンス供与に係るロイヤリティ収益が含まれると注記されています(2025年12月期決算短信〔IFRS〕(連結))。
同社はライブ運用を基盤としたIP成長戦略を掲げています。既存の大ヒットフランチャイズを新しいコンテンツ、プラットフォーム、地域で拡張する「垂直方向の成長」と、新作などから新たなヒットを生む「水平方向の成長」で構成されます(2025年12月期決算短信〔IFRS〕(連結))。
収益の仕組み
課金方法は主にアイテム課金制で、基本的なゲームの利用料は無料とし、衣装や武器等のアイテムの購入や特定のサービスの利用時に課金します。同社は、新規のユーザーが気軽に始められる反面、売上収益が有料アイテム等の魅力に影響されることがあると説明しています。特定のタイトルや地域では、売り切り型やダウンロードコンテンツ(DLC)への課金も採用しています(2025年12月期決算短信〔IFRS〕(連結))。
配信の形は3種類です。自社配信モデルではユーザーから利用料を回収し、多くの場合は決済代行会社に手数料を支払います。ライセンス供与モデルでは、配信会社から契約締結時に契約金を、配信開始後はユーザーから回収するサービス利用料の一定率をロイヤリティとして受け取ります。ライセンス配信モデルでは、他社が開発したゲームの独占配信権を得て、回収した利用料から一定のロイヤリティを開発会社に支払います(2025年12月期決算短信〔IFRS〕(連結))。
費用面では、ロイヤリティ費用、新作に係る業績連動賞与、『MapleStory Worlds』のクリエイター報酬の増加により売上原価が増え、販売費及び一般管理費も新作の広告宣伝費やプラットフォーム利用料の増加で増えたと説明されています(2025年12月期決算短信〔IFRS〕(連結))。
数字で確かめる
- 売上収益:475,102百万円、前期比6.5%増(2025年12月期決算短信〔IFRS〕(連結))。主力タイトルの再活性化と新作の貢献で増収したことが読み取れます。
- 営業利益:124,012百万円、前期比0.1%減、売上収益営業利益率26.1%(2025年12月期決算短信〔IFRS〕(連結))。費用の増加が利益の伸びを抑えたことが読み取れます。
- 韓国セグメント:売上収益400,657百万円、セグメント利益132,945百万円(2025年12月期決算短信〔IFRS〕(連結))。収益の中心が韓国の事業に集まっていることが読み取れます。
- 『ARC Raiders』:10月30日のグローバルリリースから2ヶ月未満で累計販売本数1,000万本を突破(2025年12月期決算短信〔IFRS〕(連結))。アイテム課金以外の販売形態も業績に寄与したことが読み取れます。
- 営業活動によるキャッシュ・フロー:171,872百万円、うち繰延収益の増加30,033百万円が主な増加要因(2025年12月期決算短信〔IFRS〕(連結))。受け取った対価の一部が後の期間の収益として繰り延べられていることが読み取れます。
Otsumuの読み解き:なぜ成り立つのか
ここからはOtsumuの考察です。この事業は「アイテム課金(基本無料+少額課金)」と「フリーミアム」の型で読むことができます。無料で遊べる入口を広く開け、遊び続ける一部のユーザーがアイテムやサービスに支払うことで全体の収益をまかなう構造です。同社自身の説明どおり、売上は有料アイテムの魅力に左右されます。
裏側で必要な仕事は、支払う理由を途切れさせない継続的な運営だと読めます。決算短信では、PC版『アラド戦記』や『メイプルストーリー』の増収要因としてアップデートの成功が挙げられ、『ARC Raiders』でも月次のコンテンツアップデートとイベントで勢いを保つとしています。長期の運営そのものが商品であり、開発体制が固定的に必要になると考えられます。
トレードオフは、特定タイトルと地域への依存、そして収益の読みにくさです。同社は翌四半期のレンジ予想のみを開示しています。また、ヒットが出るほどロイヤリティ費用やプラットフォーム利用料も増える構造で、当期は増収でも営業利益は前期並みでした。
自社事業に持ち帰る問い
- 自社の商品に、無料または低価格で試せる入口と、深く使う人が追加で支払う理由の両方がありますか。
- 一度売った後も、顧客が戻ってくる更新(新しい内容や季節の企画)を定期的に出せる体制がありますか。
- 売上が特定の商品や地域に偏っているとき、その偏りをどう管理していますか。
小さく試すなら
- 既存の商品やサービスのうち、無料で提供できる入口部分と、追加で支払ってもらえそうな部分を書き出します。
- 追加の有料オプションを1つ用意し、既存顧客の一部に2〜4週間案内して、購入率と購入後の利用状況を記録します。
- 期間中に一度、内容の更新や企画を実施し、更新の前後で利用頻度と購入が変わるかを比べます。
- 更新で購入が増え、提供の手間と費用を差し引いても利益が残るなら、更新の頻度を決めて定例化を検討します。
関連するビジネスモデル
資料の位置づけ
企業・サービス:株式会社ネクソン / 基本無料のオンラインゲーム運営。参照資料:2025年12月期 決算短信〔IFRS〕(連結)。このページは公開情報にもとづく学習用の分析です。Otsumuの支援実績や当該企業との取引関係を示すものではありません。示唆と検証案はOtsumuの考察であり、企業自身の見解とは区別しています。
参考資料と編集について
上記の公開資料(企業の決算短信または年次報告書)をもとに、Otsumuが執筆しました。数値と企業の説明は資料の記載の範囲にとどめ、Otsumuの考察とは分けています。数値は資料の表記のままで、最新の情報は各社の開示をご確認ください。
執筆:Otsumu株式会社 / 編集日 2026.09.27