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Public Storage「セルフストレージ」に学ぶ不動産賃貸の事業設計

自社で保有・開発するセルフストレージ施設の賃料で総売上高$4,824,113 thousandの大半を稼ぎ、付帯事業(Ancillary operations)の収入を重ねる構造です。既存施設と新規施設の役割の違いを10-Kから確かめます。

この事例の要点

  • Public Storageは、セルフストレージ施設の運営が純利益の大半を生むと説明しています。2025年度の総売上高$4,824,113 thousandのうち、Self-storage facilitiesが$4,489,413 thousandです(Form 10-K、FY2025)。
  • 2025年度は既存施設(Same Store Facilities)の売上高がほぼ横ばいで、成長は買収した施設と新規開発・増床した施設が担いました(Form 10-K、FY2025)。
  • 普通株主に帰属する純利益は$1.6 billionで、前年の$1.9 billionから減りました。主な要因として外貨換算損失の$317.8 million増加が挙げられています(Form 10-K、FY2025)。

どんな事業か

同社は、セルフストレージ施設を保有・運営しています。施設の買収、新規開発、既存施設の増床によって成長してきており、今後も続けるとしています。2023年初め以降に買収した施設は合計273施設、純賃貸可能面積19.9 million square feetで、取得額は$3.9 billionでした(Form 10-K、FY2025)。

新規開発と増床については、2025年12月31日時点で111施設、13.3 million net rentable square feetが対象で、完了分の総コストは$1.7 billionとされています。また、手数料と引き換えに第三者オーナーの施設を管理する件数を増やそうとしていることも述べられています(Form 10-K、FY2025)。

このほか、欧州でセルフストレージを保有・運営・開発するShurgardへの投資を通じて欧州事業にも関わっています。セルフストレージ施設に太陽光パネルを設置するプログラムも進めており、1,600を超える施設への設置を計画し、2025年12月31日までに1,191施設で完了しました(Form 10-K、FY2025)。

収益の仕組み

お金は大きく2つの区分から入ります。1つはセルフストレージ施設の賃料で、2025年度は$4,489,413 thousandでした。もう1つはAncillary operations(付帯事業)で$334,700 thousandです。このほか同社はリスク要因の説明のなかで、自然災害などの際にテナントからの請求が生じうる事業としてtenant reinsurance business(テナント向け再保険事業)に触れています(Form 10-K、FY2025)。

費用の主な項目は、Self-storage cost of operations $1,177,038 thousand、Depreciation and amortization $1,151,840 thousand、Interest expense $304,495 thousand、General and administrative $106,682 thousandです。既存施設の運営コストは1.8%($16.6 million)増え、その主因は固定資産税と間接運営費の増加で、マーケティング費用と現地の施設管理者の人件費は減ったと説明されています(Form 10-K、FY2025)。

賃料の動きについて同社は、需要の弱さから新規入居者向けの賃料が下がり平均稼働率も低下した一方、既存顧客は退去が少なく延滞も少なかったため、入居期間中の賃料引き上げができたと述べています(Form 10-K、FY2025)。

数字で確かめる

  • 総売上高:$4,824,113 thousand(2024年度は$4,695,616 thousand)(Form 10-K、FY2025)。売上の大半を施設の賃料が占める構造が読み取れます。
  • 買収施設と新規開発・増床施設の純営業利益:25.6%($59.5 million)増(Form 10-K、FY2025)。既存施設が横ばいのなか、新しい施設が成長を担っていることが読み取れます。
  • 1株当たり純利益(希薄化後):$9.01(2024年度は$10.64)(Form 10-K、FY2025)。本業の外にある為替の動きが最終利益を大きく左右したことが読み取れます。
  • FFO per diluted common share:$15.81(2024年度は$17.19、8.0%減)(Form 10-K、FY2025)。不動産の減価償却を除いた指標を投資家向けに示していることが読み取れます。

Otsumuの読み解き:なぜ成り立つのか

ここからはOtsumuの考察です。この事業は「不動産賃貸」の型で読むことができます。建物を持ち、その区画を貸して賃料を得る構造です。セルフストレージの特徴は、一度入居した顧客が長く使い続ける限り、入居期間中に賃料を見直せる点にあると読めます。同社が2025年度に新規入居の賃料が下がるなかでも既存顧客の賃料を引き上げられたと述べていることは、既存顧客の継続が収益を支える条件になっていることを示していると考えられます。

裏側で必要な仕事は、施設の取得と立ち上げです。同社は新規施設の埋まりを早めるために、立ち上げ期間は積極的な価格設定をすると説明し、セルフストレージは事前に賃貸契約が埋まらないとも述べています。つまり、新しい施設は最初は安く貸して稼働率を上げ、その後に既存顧客の賃料を見直していく段階を踏むことになると読めます。同社は近くの既存施設の売上に悪影響が出る可能性も挙げており、新規施設の拡大と既存施設の収益のあいだにはトレードオフがあると考えられます。

もう一つの論点は資金調達です。同社は金利の高止まりが債務コストや買収・開発の判断に影響すると述べています。施設を自社で持つ型では、成長の速さが資金調達の条件に左右されやすいと考えられます。付帯事業や第三者施設の管理受託は、建物を増やさずに収入を足す手段として位置付けられていると読めます。

自社事業に持ち帰る問い

  • 自社の顧客は、一度使い始めると長く使い続ける理由を持っているでしょうか。
  • 新規顧客向けの価格と既存顧客向けの価格を、別々に設計していますか。
  • 新しい拠点やサービスを立ち上げるとき、既存の拠点や顧客を奪い合う影響を見込んでいますか。

小さく試すなら

  1. 既存顧客を利用期間の長さで分け、期間ごとの平均単価と解約率を一覧にします。
  2. 新規顧客向けの初期価格と、一定期間後の価格の関係を、今の料金表から書き出します。
  3. 利用期間の長い顧客の一部に、付帯サービス(保険、保管の延長、手続き代行など)を2〜4週間案内し、申込率を記録します。
  4. 申込があり、解約率の悪化が見られなければ、付帯サービスを正式な商品にするかを判断します。

関連するビジネスモデル

資料の位置づけ

企業・サービス:Public Storage / セルフストレージ。参照資料:Form 10-K(FY2025)。このページは公開情報にもとづく学習用の分析です。Otsumuの支援実績や当該企業との取引関係を示すものではありません。示唆と検証案はOtsumuの考察であり、企業自身の見解とは区別しています。

参考資料と編集について

上記の公開資料(企業の決算短信または年次報告書)をもとに、Otsumuが執筆しました。数値と企業の説明は資料の記載の範囲にとどめ、Otsumuの考察とは分けています。数値は資料の表記のままで、最新の情報は各社の開示をご確認ください。

執筆:Otsumu株式会社 / 編集日 2026.09.27

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