この型の要点
- 建物や土地という「空間」を区画に分け、入居者から賃料を受ける型です。利用回数ではなく、占有している期間に対して料金が入ります。
- 賃料収入の上限は区画数と賃料単価で決まり、伸ばす主な手段は物件を増やすか、区画あたりの価値を上げることです。
- 採算を左右するのは空室の期間と、修繕・設備更新の費用です。入居中は安定しますが、退去のたびに収入の空白と原状回復の費用が生まれます。
収益が生まれる仕組み
お金を払うのは区画を借りる入居者(個人・事業者)で、支払う対象は「その空間を一定期間占有できる権利」です。月ごとの賃料に加え、共用部の維持に充てる共益費、契約時の一時金、駐車場や倉庫などの付帯区画の料金が入ります。商業用では売上に連動する賃料を組み合わせる形もあります。
費用は、物件を保有する場合は取得費と借入の返済、税、保険、共用部の維持管理、定期的な大規模修繕が中心です。他者の物件を借り上げて貸す場合は、所有者に払う賃料が主な費用になり、入居者からの賃料との差が利益です。いずれの場合も、入居者の募集費、契約手続き、退去時の原状回復、入居中のトラブル対応が区画ごとに発生します。
- 収入:賃料、共益費、一時金、付帯区画の料金、売上連動賃料(商業用)
- 固定費:取得や借り上げの費用、税・保険、共用部の維持、修繕の積み立て
- 区画ごとの費用:募集、契約、原状回復、入居中の対応
成り立つ条件と、裏側の仕事
顧客側の条件は、その場所・その広さ・その設備を、買うよりも借りるほうが合理的だと感じる人や事業者がいることです。立地の需要が長く続くか、用途の変化に建物が追随できるかが、長期の空室率を決めます。
供給側の条件は、物件を取得または借り上げる資金と、その物件の用途に合った管理能力です。住居、事務所、店舗、倉庫では、求められる管理の内容も入居者の行動も異なります。自社の能力として、募集から退去までの一連の業務を回す体制か、それを外部に委ねたうえで管理する力が必要です。
裏側の仕事には、募集と内見対応、入居審査、契約と更新、賃料の請求と滞納時の対応、設備の故障対応、退去時の立ち会いと原状回復、大規模修繕の計画と資金の積み立てがあります。これらは目立ちませんが、一つでも滞ると空室が延びたり、入居者の不満が退去につながったりします。
向く事業・向かない事業
向くのは、長期に安定した収入を優先し、短期の高成長を求めない事業です。また、すでに土地や建物を持っていて、それを活かす手段を探している場合や、特定の用途(たとえば小規模な製造業向けの作業場)に絞って空間を設計できる場合には、入居者の探しやすさと賃料の維持がしやすくなります。
向かないのは、資金の回転を速くしたい事業や、物件の用途や立地の需要が短期で変わる場面です。需要の読みを誤ると、物件は簡単には動かせず、売却にも時間がかかります。借り上げて貸す形は初期投資を抑えられますが、空室時にも所有者への支払いは続くため、賃料差が薄い物件では小さな空室で赤字に転じます。
インフラ保有・利用料の型と比べると、賃貸は利用の多寡ではなく占有の期間に対して収入が入るため、入居中の収入は安定しますが、退去のたびに収入がゼロになる区画が生まれます。利用量の伸びを収入に反映したい場合は、売上連動の賃料や、短期・時間貸しの区画を混ぜる設計が選択肢になります。ただし短期貸しは募集と対応の手間が増えるため、区画あたりの運営費を見ながら比率を決めます。
追いかける指標
- 稼働率:全区画のうち賃料が発生している区画の割合。面積ベースでも月ごとに見ます。
- 平均空室期間:退去から次の入居までの日数。区画の種類ごとに分けます。
- 区画あたり純収入:賃料収入から区画に紐づく費用と共用費の按分を引いた額。物件単位で比べます。
- 入居者の継続期間:契約開始から退去までの期間の分布。更新のたびに伸びているかを見ます。
- 修繕費比率:一定期間の修繕・更新費を同期間の賃料収入で割った比率。建物の年数とともに追います。
- 滞納率:請求額のうち期限内に入金されなかった割合と、その回収までの期間。
新規事業として小さく試すなら
- 保有または借りられる空間のうち、ひと区画だけを想定する用途(たとえば近隣の個人事業者向けの作業スペース)で募集し、問い合わせの数と、提示した賃料への反応を記録します。
- 入居が決まったら、契約から入居、初回の問い合わせ対応までの手順と手間を書き出し、区画ごとの運営費を実測します。
- 数か月の運営で、入居者が何に価値を感じ、何に不満を持つかを聞き取ります。継続の見込みと、次の区画で変えるべき点が分かれば、区画を増やします。
- 稼働率と区画あたり純収入を、借入や借り上げの支払いと並べ、どの稼働率を下回ると赤字になるかを確認します。
設計時の注意点
賃料の面では、周辺の相場との比較だけで決めると、自社の費用構造に合わない水準になります。空室期間を含めた年間の実収入で見て、修繕の積み立てまで含めて回るかを確認します。契約時の一時金を厚くして月額を下げる設計は、入居のハードルを上げる場合があります。
契約の面では、契約の種類、期間、更新や解約の条件、原状回復の範囲、用途の制限を明確にします。住居と事業用では適用される規律が異なる場合があります。個別に専門家へ確認してください。
運用の面では、故障や騒音などの対応を誰がいつまでに行うかを決めておかないと、入居者の不満が積み重なります。管理を外部に委ねる場合も、報告の頻度と判断の権限を決めておきます。
また、大規模修繕や設備更新は、いずれ発生する費用です。賃料収入から一定割合を積み立てる前提で計画を作らないと、修繕の時期に資金が足りず、建物の価値と賃料の両方を落とすことになります。
最後に、入居者の入れ替わりを前提にした設計を忘れないことです。長く入居してもらうのが理想ですが、退去はいつか起きるものとして備えます。退去の通知から次の募集を始めるまでの手順、原状回復を短く終える業者との関係、次の入居者に合わせて設備を見直す判断を、最初の退去が起きる前に決めておくと、空室期間が短くなります。
この型が見られる企業事例
- イオンモールのショッピングモール開発・運営に学ぶ事業設計
- American Tower Corporationの通信塔賃貸に学ぶ事業設計
- Equinix, Inc.のデータセンター事業に学ぶ事業設計:設備を保有し月額で貸す構造
- J.フロント リテイリングの百貨店・SCに学ぶ事業設計:総額と純額の二つの売上
- 東日本旅客鉄道株式会社の鉄道と駅を軸にした生活サービスに学ぶ事業設計
- 三井不動産株式会社のオフィス・商業施設の賃貸と分譲に学ぶ事業設計
- Prologis, Inc.の物流不動産の賃貸と開発に学ぶ事業設計
- Public Storage「セルフストレージ」に学ぶ不動産賃貸の事業設計
- 髙島屋の百貨店を核にした商業開発・金融の組み合わせに学ぶ事業設計
この記事について
Otsumu株式会社が執筆しました。統計値や他社の事例には依拠せず、収益の構造、成り立つ条件、検証の進め方を中心にまとめています。法務・税務・会計の制度は、専門家や公的窓口で最新の情報をご確認ください。
執筆:Otsumu株式会社 / 編集日 2026.09.27