この事例の要点
- 同社は国内百貨店業、海外百貨店業、国内商業開発業、海外商業開発業、金融業、建装業などのセグメントで事業を展開しています(2026年2月期 決算短信〔日本基準〕(連結))。
- 連結営業収益は492,370百万円(前年比1.2%減)、連結営業利益は53,516百万円(前年比6.9%減)でした。転換社債型新株予約権付社債の買入れ・消却に伴う特別損失71,285百万円により、親会社株主に帰属する当期純損失は8,194百万円となりました(2026年2月期 決算短信〔日本基準〕(連結))。
- 同社は「次世代型SC」「海外事業(ベトナム)」「金融事業」を新たな成長の柱と位置付け、2031年度に各領域で事業利益100億円規模を創出する目標を掲げています(2026年2月期 決算短信〔日本基準〕(連結))。
どんな事業か
同社は、「国内・アジアの主要都市に展開する複数の利益創出拠点」「グループ会社の総合力」「幅広い顧客基盤」の3つを強みとし、グループ総合戦略として「まちづくり」を掲げています(2026年2月期 決算短信〔日本基準〕(連結))。
その具体策が「次世代型SC」です。百貨店と専門店の垣根を越え、百貨店が持つお客様情報の利活用やフロア構成の最適化で連携し、拠点全体の魅力を高めるとしています。「玉川髙島屋S.C.」ではリニューアルプロジェクト(2027年度グランドオープン予定)が進み、海外ではベトナム・ハノイで百貨店を核とするSCの開業を2027年秋に予定しています(2026年2月期 決算短信〔日本基準〕(連結))。
国内商業開発業は東神開発株式会社、金融業は髙島屋ファイナンシャル・パートナーズ株式会社(カード事業、ライフパートナー事業、投融資事業)、建装業は髙島屋スペースクリエイツ株式会社が担っています(2026年2月期 決算短信〔日本基準〕(連結))。
収益の仕組み
百貨店では商品販売が収益の中心です。国内百貨店業では、利益率の低いラグジュアリーブランドなどの売上高が伸びたことによる売上構成比の変化が、商品利益率の微減の主要因とされ、今後は重点お取引先との連携を通じて利益率の高い衣料品・雑貨を中心としたファッション領域を強化するとしています(2026年2月期 決算短信〔日本基準〕(連結))。
商業開発業では、東神開発株式会社の売上高として歩合家賃・クレジット手数料収入等が挙げられ、海外商業開発業では賃料収入が示されています。金融業では、カード事業の取扱高の増大や新規入会会員の増加により、手数料収入及び年会費収入が伸長したと説明されています(2026年2月期 決算短信〔日本基準〕(連結))。
費用面では、国内百貨店業でベースアップなど人的資本経営の推進に向けた費用や催事開発の費用を配分しつつコスト削減も進めたこと、商業開発業では人件費の上昇による外部委託費など施設運営に関わる費用が増加したことが挙げられています(2026年2月期 決算短信〔日本基準〕(連結))。
数字で確かめる
- 総額営業収益1,032,287百万円、営業収益492,370百万円(2026年2月期 決算短信〔日本基準〕(連結))。総額営業収益は収益認識に関する会計基準等の適用前の従来基準による数値で、取扱規模と会計上の収益に大きな差があることが読み取れます。
- 国内百貨店業の営業収益303,856百万円(前年比4.5%減)、営業利益24,863百万円(前年比12.9%減)(2026年2月期 決算短信〔日本基準〕(連結))。インバウンド需要の反動を受けた中核事業の状況が読み取れます。
- 国内商業開発業の営業収益41,767百万円(前年比2.3%増)、営業利益6,568百万円(前年比4.1%減)(2026年2月期 決算短信〔日本基準〕(連結))。賃料型の事業が一定の利益を生んでいることが読み取れます。
- 金融業の営業収益20,699百万円(前年比9.8%増)、営業利益5,575百万円(前年比15.4%増)(2026年2月期 決算短信〔日本基準〕(連結))。顧客基盤を生かした手数料型の事業が伸びていることが読み取れます。
- 2025年度のROIC5.7%、WACC4.8%(2026年2月期 決算短信〔日本基準〕(連結))。資本コストを上回る水準を確保していることが読み取れます。
Otsumuの読み解き:なぜ成り立つのか
ここからはOtsumuの考察です。委託販売という型は、売場を提供する側が在庫を持たずに品揃えを広げ、販売額に応じた取り分を得る形です。今回の資料には委託販売の比率は書かれていませんが、従来基準の総額営業収益と営業収益の差の大きさや、お取引先と連携した品揃え強化が繰り返し語られている点から、取引先との関係のつくり方が百貨店の収益構造の中心にあると読めます。この型では、在庫リスクを抑えられる代わりに、商品利益率が売上の構成と取引条件に左右されます。ラグジュアリーブランドの売上増が利益率を下げたという説明は、その性格を表していると考えられます。
不動産賃貸の型は、施設を持ち、テナントから賃料や歩合家賃を得る形です。同社は安定的な利益成長に資する資産を自ら保有する「持つ経営」を基本方針としています。百貨店が集客の核となり、専門店が賃料を払い、カード事業が館内外の支払いから手数料や年会費を得る。この組み合わせで、百貨店単体の減益を他の事業が補う構造が成り立っていると読めます。
トレードオフは、資産を持つことの重さです。改装工事に伴う空室区画の増加が賃料収入に影響したように、施設の価値を保つ投資が一時的に収益を下げます。同社自身、現中期経営計画を投資が先行するフェーズと位置付けています。
自社事業に持ち帰る問い
- 自社の集客力を、他社の商品やサービスを扱う「場」として収益化できないか。
- 在庫を持つ取引と持たない取引の比率を把握し、利益率とリスクの関係を説明できるか。
- 顧客の支払いや会員の仕組みから、商品販売とは別の収益(手数料、年会費)を得られないか。
- 事業ごとの投資と利益を、資本コストと比べて判断できているか。
小さく試すなら
- 自社の店舗、サイト、イベントなど集客の「場」を洗い出し、他社が出店・出品したいと思う条件を整理する。
- 相性のよい事業者を3社選び、売上に応じた手数料型(在庫を持たない形)での出品や共同販売を提案する。
- 2週間程度の試行で、出品側の売上、自社の手数料収入、自社顧客の反応を記録する。
- 手数料収入と運営負担のバランスが取れれば対象を広げ、取れなければ手数料率や場の設計を見直す。
関連するビジネスモデル
資料の位置づけ
企業・サービス:株式会社髙島屋 / 百貨店を核とした商業開発・金融。参照資料:2026年2月期 決算短信〔日本基準〕(連結)。このページは公開情報にもとづく学習用の分析です。Otsumuの支援実績や当該企業との取引関係を示すものではありません。示唆と検証案はOtsumuの考察であり、企業自身の見解とは区別しています。
参考資料と編集について
上記の公開資料(企業の決算短信または年次報告書)をもとに、Otsumuが執筆しました。数値と企業の説明は資料の記載の範囲にとどめ、Otsumuの考察とは分けています。数値は資料の表記のままで、最新の情報は各社の開示をご確認ください。
執筆:Otsumu株式会社 / 編集日 2026.09.27