← 企業事例

OTSUMU KNOWLEDGE

Rapid7「Command Platform」に学ぶ製品と運用代行を束ねる事業設計

米国のRapid7が、クラウド型サブスクリプション・運用代行・期間ライセンスの三つの提供形態を組み合わせ、継続収益で成り立たせている構造を、Form 10-K(2025年12月期)の数値から確かめます。

この事例の要点

  • Rapid7は、クラウド型サブスクリプション、同社が顧客に代わって運用するマネージドサービス、期間ライセンスの三つの提供形態で製品を売り分けています(Form 10-K、2025年12月期)。
  • 2025年12月期の売上高は859.8百万ドルで、うち製品サブスクリプションは831.3百万ドル、プロフェッショナルサービスは28.5百万ドルです。定期的に発生する収益は売上の96%を占めます(Form 10-K、2025年12月期)。
  • 2025年の売上の増加は、既存顧客への更新・アップセル・クロスセルが主因で、新規顧客からの売上は前年より減ったと説明されています(Form 10-K、2025年12月期)。

どんな事業か

Rapid7, Inc.は米国マサチューセッツ州ボストンに本社を置き、ナスダック・グローバル・マーケットに上場するセキュリティ企業です。脆弱性や露出の可視化、脅威の検知と対応を一体で行う「Command Platform」を提供し、顧客のセキュリティ運用チーム向けに製品、マネージドサービス、脅威インテリジェンスを組み合わせています(Form 10-K、2025年12月期)。

2025年12月31日時点で、150カ国に1万1,500社を超える顧客がおり、フォーチュン100の36%が含まれます。1社が売上の1%を超えることはなく、売上は特定の顧客に集中していません。顧客はテクノロジー、金融、ヘルスケア、製造、政府など幅広い業種にわたります(Form 10-K、2025年12月期)。

収益の仕組み

同社は、提供形態の違う三つの売り方を並べています(Form 10-K、2025年12月期)。

  • クラウド型サブスクリプション:Incident Command、Exposure Command、Threat Commandなどを、1年または複数年の契約で提供します。
  • マネージドサービス:Managed Vulnerability Management、Managed Detection and Responseなどを、同社が顧客に代わって運用します。契約は1年または複数年です。
  • 期間ライセンス:NexposeやMetasploitを、一定期間のライセンスとして提供します。保守・サポートと、最新の脆弱性情報を受け取るコンテンツ購読が期間中セットになります。

販売面では、ディストリビューターや再販業者などのチャネルを通じた販売があります。チャネル経由の売上は、再販業者の取り分を差し引いた金額で計上されます。請求は期間の初めに行い、収益は契約期間にわたって均等に計上するのが典型例とされています(Form 10-K、2025年12月期)。

数字で確かめる

  • 売上高:2025年12月期は859.8百万ドル、2024年は844.0百万ドル、2023年は777.7百万ドルです。2021年の535.4百万ドルからは年平均13%の増加とされており、成長が続いていることが読み取れます(Form 10-K、2025年12月期)。
  • 内訳:製品サブスクリプションは831.3百万ドルで前期比2.8%増、プロフェッショナルサービスは28.5百万ドルで18.9%減です。売上のほぼ全体を製品サブスクリプションが占め、サービスは縮小していることが読み取れます(Form 10-K、2025年12月期)。
  • 損益:2025年は純利益が23.4百万ドル、2024年は25.5百万ドルです。2023年は152.8百万ドルの純損失でした。黒字を保ちながらも、利益の水準は小さいことが読み取れます(Form 10-K、2025年12月期)。
  • キャッシュ・フロー:2025年の営業活動によるキャッシュ・フローは153.8百万ドル、フリー・キャッシュ・フローは130.1百万ドルでした。会計上の利益より、現金の創出が大きいことが読み取れます(Form 10-K、2025年12月期)。
  • 販売費用:2025年は317.7百万ドルで、売上高859.8百万ドルに対して大きな比重を占めます。獲得と維持に、継続的な投資が必要な事業であることが読み取れます(Form 10-K、2025年12月期)。

Otsumuの読み解き:なぜ成り立つのか

ここからはOtsumuの考察です。この事例では、同じ「セキュリティの課題」を、顧客の体制に合わせて三つの形で売り分けています。自前で使いこなせる顧客にはサブスクリプション、運用の人手が足りない顧客にはマネージドサービスです。顧客の人手不足を、売れる商品に変えていると読めます。

また、同社自身が「プラットフォームの統合」を主要な顧客獲得・拡張の動きと位置づけているため、複数の製品を別々に売るより、まとめて契約してもらう設計を重視していると考えられます。2025年の増収が既存顧客への更新・アップセル・クロスセルに支えられた一方、新規顧客からの売上が減った点は、既存の顧客基盤に頼る度合いが高いことを示します。

この型の難しさは、運用代行を増やすほど人手が必要になる点です。サブスクリプションに比べて、売上が増えるほど費用も増えやすい構造だと考えられるため、人が行う作業をどこまで製品に取り込めるかが、利益の水準を左右すると読めます。

自社事業に持ち帰る問い

  • 自社の商品を、顧客の体制(自前で使える/任せたい)に応じて売り分けられていますか。
  • 複数の商品をばらばらに売っていませんか。まとめて契約する設計にできますか。
  • 運用を代行する部分のうち、手作業を商品の機能に置き換えられる部分はどこですか。

小さく試すなら

  1. 直近1年の顧客を「自分で使いこなしている」「支援が必要」に分け、それぞれの比率を数えます。
  2. 「支援が必要」な顧客向けに、運用の一部を代行する小さなメニューを1つ決め、価格の案を作ります。
  3. 既存顧客5〜10社に、2〜4週間の試行として案内し、依頼数と作業時間を記録します。
  4. 作業時間が大きい部分を洗い出し、手順書やテンプレートに置き換えられる箇所を決めます。

関連するビジネスモデル

資料の位置づけ

企業・サービス:Rapid7, Inc. / Command Platform。参照資料:Form 10-K(2025年12月31日終了会計年度)。このページは公開情報にもとづく学習用の分析です。Otsumuの支援実績や当該企業との取引関係を示すものではありません。示唆と検証案はOtsumuの考察であり、企業自身の見解とは区別しています。

参考資料と編集について

上記の公開資料(目論見書・年次報告書・企業の公式発表など)をもとに、Otsumuが執筆しました。数値と企業の説明は資料の記載の範囲にとどめ、Otsumuの考察とは分けています。数値は資料の表記のままで、最新の情報は各社の開示をご確認ください。

執筆:Otsumu株式会社 / 編集日 2026.10.25

あわせて読む

次の一手を、一緒に。

事業の検証から開発・運用まで、現在の段階に合わせて支援します。

事業について相談する ↗
FROM KNOWLEDGE TO ACTION

知識を、次の一手へ。

AIツール診断で、次の一手を整理する ↗