この事例の要点
- 株式会社良品計画は「無印良品」の商品を国内外の店舗やネットストアで販売し、2025年8月期の営業収益は784,629百万円(前期比18.6%増)でした(2025年8月期 決算短信〔日本基準〕(連結))。
- 生産体制の内製化による原価低減や海外での値下げ率の抑制で営業総利益率が改善し、営業利益は73,840百万円(前期比31.5%増)となりました(同)。
- 当期末の無印良品(ライセンスドストアを含む)の店舗数は国内外計1,412店舗で、国内683店舗、海外729店舗です(同)。
どんな事業か
同社グループは、「人と自然とモノの望ましい関係と心豊かな人間社会」を考えた商品、サービス、店舗、活動を通じて「感じ良い暮らしと社会」の実現に貢献するという企業理念のもと、国内外で店舗展開や商品供給体制の強化を進めています(2025年8月期 決算短信〔日本基準〕(連結))。1980年の創業以来の実質本位の商品づくりを継続するとしています(同)。
セグメントは国内事業、東アジア事業、東南アジア・オセアニア事業、欧米事業の4つです(2025年8月期 決算短信〔日本基準〕(連結))。国内事業では、スキンケアや日用消耗品をはじめとする商品力の強化を軸に、SNSや自社アプリ等を活用したマーケティング、店舗運営や在庫管理などのオペレーション力向上を進めました(同)。当期は国内で郊外の生活圏を中心に71店舗を出店しました(同)。
海外では、中国大陸、台湾、ベトナム、マレーシア等に75店舗を出店し、特に中国大陸では店舗のスクラップアンドビルドを積極的に推進しました(2025年8月期 決算短信〔日本基準〕(連結))。欧州では前期の事業再編に伴う構造改革で不採算店を閉鎖しています(同)。
収益の仕組み
お金は、衣服・雑貨、生活雑貨、食品などの自社商品を店舗やオンラインで販売することで入ります(2025年8月期 決算短信〔日本基準〕(連結))。同社は、出店拡大、日本のオペレーションの波及、商品開発体制の強化、OMO強化、マーケティング戦略、生産性改善/SCM改革、ITによる支援、本業としてのESGの8つを成長ドライバーと位置づけています(同)。
費用面では、生産体制の内製化による原価低減と、海外における値下げ率の抑制により営業総利益率が改善したほか、販管費率も低下したと説明しています(2025年8月期 決算短信〔日本基準〕(連結))。国内事業では、売上の伸長に伴い借地借家料、運搬・配送費をはじめとする販管費率の改善が進みました(同)。営業利益率は為替による押し上げ影響も加わり9.4%でした(同)。
会員プログラムは2025年9月に「MUJI GOOD PROGRAM」へリニューアルされ、貯めたポイントを買い物だけでなく寄付にも使えるほか、使用済み製品回収への協力やレジ袋の辞退でもポイントが貯まる仕組みになっています(2025年8月期 決算短信〔日本基準〕(連結))。
数字で確かめる
- 国内事業の営業収益は4,701億43百万円(前期比20.9%増)、セグメント利益は521億11百万円(同31.2%増)でした(2025年8月期 決算短信〔日本基準〕(連結))。国内が全体の成長を牽引していることが読み取れます。
- 東アジア事業の営業収益は2,222億47百万円(前期比14.2%増)、セグメント利益は427億94百万円(同20.4%増)でした(同)。国内に次ぐ規模の収益の柱であることが読み取れます。
- 東南アジア・オセアニア事業の営業収益は501億5百万円(前期比28.0%増)でした(同)。出店拡大により伸び率が最も高い地域であることが読み取れます。
- 欧米事業の営業収益は421億33百万円(前期比7.9%増)、セグメント利益は69億22百万円(同25.7%増)でした(同)。店舗を減らしながら利益を伸ばしていることが読み取れます。
- 営業活動によるキャッシュ・フローは73,355百万円、店舗等の有形固定資産の取得による支出は233億19百万円でした(同)。本業で得た資金を出店に回す構造が読み取れます。
- 2026年8月期の営業収益は860,000百万円(9.6%増)を見込んでいます(同)。出店と既存店の伸長を軸に拡大を続ける計画であることが読み取れます。
Otsumuの読み解き:なぜ成り立つのか
ここからはOtsumuの考察です。「製造小売(SPA)」と「プライベートブランド(PB)」の観点で見ると、同社は「無印良品」という一つのブランドのもとで商品の企画から生産体制、店舗での販売までを自ら担う形と読めます。生産体制の内製化が原価低減につながったと同社が説明している点は、作る工程に踏み込むほど粗利を自ら改善できるというSPAの特徴を示していると考えられます。
この形が成り立つ条件は、在庫を自ら抱えても売り切れる商品力と、値下げに頼らない販売です。海外での値下げ率の抑制が営業総利益率の改善に寄与したことは、この条件がどれほど利益に効くかを示していると読めます。裏側では、商品開発、生産、在庫管理、店舗運営を一体で回す仕事が必要で、同社が「日本のオペレーションの波及」を成長ドライバーに掲げているのも、国内で磨いた運営の型を海外店舗に移す取り組みと読めます。
トレードオフは、自社で在庫と店舗を持つ分、出店や閉店の判断を誤ると損失が大きくなることです。中国大陸でのスクラップアンドビルドや欧州・カナダでの不採算店の閉鎖は、店舗網を持つ事業ならではの調整が常に必要であることを示していると考えられます。
自社事業に持ち帰る問い
- 自社の商品やサービスのうち、企画から提供までを自分たちで握ることで粗利を改善できる工程はどこか。
- 値下げに頼らずに売り切るために、どの商品を、どれだけ用意すべきかを判断できているか。
- ある地域や拠点で磨いた運営の型を、別の地域に移すための手順が言葉になっているか。
- 不採算の拠点や商品を閉じる判断基準を事前に決めているか。
小さく試すなら
- 主な商品やサービスについて、企画・調達・生産・販売の各工程で外部に払っているコストを洗い出し、自社で担えそうな工程を一つ選びます。
- その工程を一部の商品に限って自社で担う試行を設計し、品質と原価の変化を測れるようにします。
- 2〜4週間の試行期間中、原価、値下げの発生状況、売れ残りの量を記録します。
- 原価か値下げ率のどちらかに改善が見えれば対象商品を広げ、改善が見えなければ内製化に向かない理由を整理してから別の工程を試します。
関連するビジネスモデル
資料の位置づけ
企業・サービス:株式会社良品計画 / 「無印良品」の企画・製造・販売。参照資料:2025年8月期 決算短信〔日本基準〕(連結)。このページは公開情報にもとづく学習用の分析です。Otsumuの支援実績や当該企業との取引関係を示すものではありません。示唆と検証案はOtsumuの考察であり、企業自身の見解とは区別しています。
参考資料と編集について
上記の公開資料(企業の決算短信または年次報告書)をもとに、Otsumuが執筆しました。数値と企業の説明は資料の記載の範囲にとどめ、Otsumuの考察とは分けています。数値は資料の表記のままで、最新の情報は各社の開示をご確認ください。
執筆:Otsumu株式会社 / 編集日 2026.09.27