この型の要点
- 小売業が、仕入れて売るだけでなく、自社で企画した商品を製造を委託して作り、自社の店やサイトだけで売ります。メーカーの商品を並べる棚の一部を、自社企画の商品に置き換える型です。
- 中間の流通費とメーカーの販促費が価格から抜けるため、同じ売価でも粗利を厚くできる余地があります。また、他店では買えない商品が、店を選んでもらう理由になります。
- 引き換えに、売れ残りの責任と品質への責任を小売が負います。企画の当たり外れと、製造委託先との関係の作り方が採算を決めます。
収益が生まれる仕組み
お金は、これまでと同じく来店した顧客から商品の代金として入ります。変わるのは費用の側です。メーカーの商品を仕入れる場合、仕入値にはメーカーの利益、広告費、営業費、卸を経由する費用が含まれています。自社企画の商品では、これらの費用が製造委託先への支払いに置き換わり、その差が小売の粗利の増加分になります。
もう一つの収益の源は、価格の決め方が自由になることです。メーカーの商品は他店との比較にさらされ、値下げの圧力を受けますが、自社企画の商品は同じ商品が他店にないため、直接の価格比較を受けにくくなります。安さを打ち出す商品と、品質を打ち出して高めに売る商品を、同じ棚の中で組み合わせることができます。
費用は、商品の企画と試作、製造委託先への発注、パッケージや表示の作成、そして在庫にかかります。製造委託には最小の発注数量があり、その数量を売り切れなければ在庫が残ります。メーカーの商品なら売れ残りを返品したり、メーカーが値下げの費用を負担したりする余地がありますが、自社企画では値下げも廃棄も自社が負う前提で考える必要があります。品質に問題が起きたときの回収や補償も自社が負います。粗利の増加分が、これらの負担を上回るかどうかが判断の軸になります。
成り立つ条件と、裏側の仕事
顧客側の条件は、その店を信頼していて、「この店が出す商品なら」と手に取る気持ちがあることです。店に対する信頼が薄い段階で自社企画の商品を並べても、知らない名前の商品として避けられます。まず店としての信頼を築いてから、その信頼を商品に移す順番になります。
供給側の条件は、自社の求める品質と数量で作ってくれる製造委託先が見つかることです。小売の発注量が小さいと、委託先にとって割に合わず、良い条件で引き受けてもらえません。委託先から見て「継続して発注が来る取引先」になれるかどうかが、品質と価格の交渉力を左右します。
自社の能力として重要なのは、売れる商品を企画する力です。日々の販売データから「顧客が欲しいのに既存の商品では満たされていないもの」を見つけ、仕様に落とす仕事です。仕入れて並べる小売の仕事と、商品を作るメーカーの仕事は異なる能力で、後者を自社の中に育てる必要があります。
裏側では、試作品の評価、製造委託先の工場の確認、表示に必要な情報の整備、品質の検査、売れ行きに応じた追加発注や生産終了の判断、そして問題が起きたときの顧客対応が発生します。メーカーの商品であればメーカーが担っていたこれらの仕事を、小売が引き受けることになります。
向く事業・向かない事業
向くのは、顧客が繰り返し来店し、店に対する信頼がすでにある小売です。たとえば、地域の食品店が、常連客の声から「既存の商品では味が濃すぎる」といった要望を見つけ、地元の加工業者に委託して自社名の商品を作る場合、企画の根拠と売り先の両方が最初からあります。既存の商品どうしの違いが小さく、顧客が価格と信頼で選んでいる品目ほど、自社企画に置き換える余地は大きいでしょう。
向かないのは、顧客がメーカーの名前で商品を選んでいて、店の名前では動かない品目です。また、来店の頻度が低く、企画の根拠となる販売データが薄い小売では、企画の当たり外れが大きくなります。最小発注数量を売り切る見通しが立たない規模でも、在庫の負担が粗利の増加分を食いつぶします。品質に関する責任を負う体制がない段階で始めるのも避けたほうが安全です。
追いかける指標
- 自社企画商品の粗利率:自社企画の商品の売上に対する粗利の割合。同じ棚のメーカー商品の粗利率と並べて比べます。
- 自社企画の売上構成比:全売上のうち、自社企画の商品が占める割合。伸びの速さと、メーカー商品の売上への影響を合わせて見ます。
- 商品ごとの消化率:発注した数量のうち、値下げせずに売れた割合。企画の精度と発注数量の判断を測ります。商品ごとに算出します。
- 値下げ・廃棄の損失比率:自社企画商品の仕入総額のうち、値下げや廃棄で回収できなかった割合。
- 再購入率:自社企画の商品を一度買った顧客のうち、一定期間内に同じ商品を再び買った割合。会員情報がある場合に追えます。
- 品質に関する申し出の件数:自社企画商品について寄せられた不良や不満の件数。販売数を分母にして推移を見ます。
新規事業として小さく試すなら
- 販売データと店頭での顧客の声から、「売れているが不満もある」商品の分野を一つ選びます。既存の商品のどこが顧客の希望と合っていないかを言葉にします。
- 委託候補の製造業者を数社探し、試作を依頼します。最小の発注数量、納期、表示に必要な情報の提供の可否を確認し、自社の販売規模で売り切れる数量かを見極めます。
- 少量を製造し、一部の店や期間を限って販売します。隣に置いたメーカーの商品との売れ行きの差、顧客の反応、値下げの有無を記録します。
- 消化率と粗利の増加分から、在庫の負担を差し引いて利益が残るかを計算します。残る見通しが立ち、品質の申し出に対応できる体制が用意できるなら、品目を増やす段階に進みます。
設計時の注意点
価格の面では、メーカーの商品より安く売ることだけを目的にすると、粗利の増加分が値下げで消え、店の商品全体の価格の印象を下げることにもなります。安さで選ばれる商品と、品質で選ばれる商品の役割を分けて設計します。
契約の面では、製造委託先との間で、仕様と品質の基準、不良が出たときの責任、最小発注数量と追加発注の条件、企画内容を他社に転用しない取り決めを文章にします。口頭で進めると、問題が起きたときに責任の所在が曖昧になります。
運用の面では、売れ行きの確認と追加発注、生産終了の判断を誰がいつ行うかを決めます。メーカーの商品なら取引先の供給計画に頼れた部分も、自社企画では自社の判断がなければ欠品も過剰在庫も起きます。
法規制の面では、商品の表示に関する義務、製造や販売に必要な許可、品質に問題が起きたときの責任の所在が、扱う商品の種類によって異なります。販売者として自社が負う責任の範囲を含め、個別に専門家へ確認してください。
この型が見られる企業事例
- 株式会社神戸物産「業務スーパー」のFC展開とPB製造に学ぶ事業設計
- パン・パシフィック・インターナショナルホールディングス「ドン・キホーテ」に学ぶ事業設計
- 株式会社良品計画「無印良品」の企画・製造・販売に学ぶ事業設計
- ワークマンの作業服・機能性ウエアのフランチャイズ小売に学ぶ事業設計
この記事について
Otsumu株式会社が執筆しました。統計値や他社の事例には依拠せず、収益の構造、成り立つ条件、検証の進め方を中心にまとめています。法務・税務・会計の制度は、専門家や公的窓口で最新の情報をご確認ください。
執筆:Otsumu株式会社 / 編集日 2026.09.27