この事例の要点
- SGホールディングス株式会社の2026年3月期は、営業収益1,644,762百万円(前期比11.2%増)、営業利益90,247百万円(前期比2.7%増)でした(2026年3月期決算短信〔日本基準〕(連結))。
- 中核のデリバリー事業では取扱個数が1,360百万個(増減率4.0%)となり、越境ECの取扱個数増加が全体の増加に貢献したと同社は説明しています(2026年3月期決算短信〔日本基準〕(連結))。
- 平均単価は小型荷物の取扱い拡大等で前期比低下しましたが、取引ごとの取扱量やコスト等を勘案した価格設定により、セグメント全体の営業利益率を維持したとしています(2026年3月期決算短信〔日本基準〕(連結))。
どんな事業か
SGホールディングスは、佐川急便株式会社の宅配便を中心に、国内外の物流サービスを提供する企業グループです。報告セグメントは、デリバリー事業、ロジスティクス事業、グローバル物流事業、不動産事業、その他で、2026年3月期から「グローバル物流事業」を新設し、フォワーディング事業や海外3PL事業等をこちらに区分しています(2026年3月期決算短信〔日本基準〕(連結))。
デリバリー事業は宅配便が中心で、宅配便以外の付加価値を提供するソリューションとして「TMS(Transportation Management System)」も展開しています。ロジスティクス事業では名糖運輸株式会社(名糖/ヒューテック)の連結により低温物流の基盤を持ち、グローバル物流事業ではエクスポランカ社に加えて、2025年5月にグループ化したMorrison社を連結業績に含めています(2026年3月期決算短信〔日本基準〕(連結))。
同社は、顧客のサプライチェーン全体をコーディネートする「トータルロジスティクス」の高度化を掲げ、中期経営計画「SGH Story 2027」では「トータルロジスティクスの高度化とグローバル物流の基盤拡大」を基本方針としています(2026年3月期決算短信〔日本基準〕(連結))。
収益の仕組み
お金の入口は、荷主から受け取る運賃と物流サービスの料金です。デリバリー事業では「適正運賃収受の方針」のもと、取引ごとの取扱量やコスト等を勘案して価格を設定しています。ロジスティクス事業でも、既存の国内3PLでの適正料金の収受や生産性向上による収益拡大があったと説明しています(2026年3月期決算短信〔日本基準〕(連結))。
費用については、パートナー企業への委託単価の引き上げや従業員のベースアップにより、人件費・外注費を中心に増加傾向にあるとしています。さらに、11月後半に想定以上の取扱個数増加で物流混乱が生じ、その解消のために追加的な車両・人員手配のコストが発生しました(2026年3月期決算短信〔日本基準〕(連結))。
数字で確かめる
- 営業収益1,644,762百万円(前期比11.2%増)、営業利益90,247百万円(前期比2.7%増)(2026年3月期決算短信〔日本基準〕(連結))。買収による規模拡大に比べ、利益の伸びは緩やかだったことが読み取れます。
- デリバリー事業の営業収益1兆485億10百万円(前期比4.5%増)、営業利益701億40百万円(同2.6%増)(2026年3月期決算短信〔日本基準〕(連結))。グループの利益の大部分をこの事業が支えていることが読み取れます。
- 取扱個数1,360百万個、うち飛脚宅配便1,324百万個(増減率4.2%)(2026年3月期決算短信〔日本基準〕(連結))。荷物の量が増えたことが読み取れます。
- ロジスティクス事業の営業収益2,027億98百万円(前期比41.7%増)、営業利益62億78百万円(同48.5%増)(2026年3月期決算短信〔日本基準〕(連結))。低温物流の連結と国内3PLの料金改善が効いたことが読み取れます。
- グローバル物流事業の営業収益3,215億96百万円(前期比25.4%増)、営業利益1億37百万円(同96.1%減)(2026年3月期決算短信〔日本基準〕(連結))。国際物流は運賃市況の影響を強く受けることが読み取れます。
Otsumuの読み解き:なぜ成り立つのか
ここからはOtsumuの考察です。物流受託(3PL)の型で見ると、この事業が成り立つ条件は、荷物量を集めることと、その量に見合う運賃・料金を受け取ることの両立にあると考えられます。当期のデリバリー事業は、越境ECで個数を伸ばす一方、小型荷物の増加で平均単価が下がりました。それでも営業利益率を維持できたのは、取引ごとの取扱量やコストを見て価格を決める運用があったためだと読めます。
裏側で必要な仕事は、輸配送を担うパートナー企業との関係づくりです。同社は委託単価の引き上げに加え、「適正取引促進会」の定期開催やSAGAWAパートナープログラム、事業承継窓口の設置に取り組んでいます。荷物量が想定を超えた11月後半には追加の車両・人員手配が必要になったことからも、需要の波に合わせて輸送力を確保する仕組みが収益を左右すると考えられます。
トレードオフは、規模拡大と収益性の関係です。グローバル物流事業はMorrison社の連結で営業収益を伸ばしましたが、エクスポランカ社の減収を吸収できず営業利益は大きく減りました。同社は顧客基盤の見直しや特定顧客への依存度低減を課題に挙げており、量を取りに行く局面ほど、顧客の選び方と価格の決め方が問われると考えられます。
自社事業に持ち帰る問い
- 取引ごとに、量とコストに見合った価格を設定できているか。一律の料金表で損をしている取引はないか。
- 需要が想定を超えたときに、追加の人員や外部パートナーをどの程度の速さで確保できるか。
- 外部パートナーの単価が上がったとき、それを自社の価格にどう反映させる仕組みになっているか。
- 売上規模を伸ばす施策が、特定顧客への依存を強めていないか。
小さく試すなら
- 直近の取引を10件選び、取引ごとの量、作業時間、外注費、受け取った料金を一覧にします。料金とコストが見合わない取引が見つかれば次に進みます。
- 見合わない取引について、量やコストに応じた料金の考え方を一つ作り、社内で説明できる形にします。
- 2〜4週間、新規の見積もりに限ってその考え方を使い、受注率と粗利の変化を記録します。
- 繁忙時に外部パートナーへ依頼できる作業と単価を整理し、受注の上限を決める目安にします。目安が決まれば、既存取引の見直しに広げます。
関連するビジネスモデル
資料の位置づけ
企業・サービス:SGホールディングス株式会社 / 宅配便「飛脚宅配便」とトータルロジスティクス。参照資料:2026年3月期 決算短信〔日本基準〕(連結)。このページは公開情報にもとづく学習用の分析です。Otsumuの支援実績や当該企業との取引関係を示すものではありません。示唆と検証案はOtsumuの考察であり、企業自身の見解とは区別しています。
参考資料と編集について
上記の公開資料(企業の決算短信または年次報告書)をもとに、Otsumuが執筆しました。数値と企業の説明は資料の記載の範囲にとどめ、Otsumuの考察とは分けています。数値は資料の表記のままで、最新の情報は各社の開示をご確認ください。
執筆:Otsumu株式会社 / 編集日 2026.09.27