この事例の要点
- 株式会社SHOEIの2025年9月期は、売上高32,363百万円(前期比△9.6%)、営業利益8,899百万円(前期比△13.9%)でしたが、売上高営業利益率は27.5%でした(2025年9月期決算短信〔日本基準〕(連結))。
- 日本及び海外を合わせた販売数量は前年度比11.9%減で、前連結会計年度における値上げ等で単価が上昇したものの、減収となりました(2025年9月期決算短信〔日本基準〕(連結))。
- 地域別の売上高は欧州が14,444,681千円と最も大きく、日本、北米、アジア、その他の地域に分かれて販売しています(2025年9月期決算短信〔日本基準〕(連結))。
どんな事業か
SHOEIは、高級二輪乗車用ヘルメットを製造・販売する企業です。同社は自社の市場を「高級二輪乗車用ヘルメット市場」と表現し、当期の業績をこの市場の動向と結びつけて説明しています(2025年9月期決算短信〔日本基準〕(連結))。
販売は日本と海外の両方で行っており、決算短信では日本、欧州、北米、アジア、その他の地域(オセアニア、南米)の販売地域別売上高が示されています。前期には主力2モデルの新商品(NEOTEC3、GT-Air3)を発売しており、当期は主力モデルのモデルチェンジが無く、マイナーモデルのモデルチェンジにとどまったと説明しています(2025年9月期決算短信〔日本基準〕(連結))。
流通については、中国市場で小売店から代理店への発注が一時的に大きく減少したことや、北米市場で代理店による新規販売店戦略が成功したことが述べられており、代理店と小売店を通じて製品が届く流れが読み取れます(2025年9月期決算短信〔日本基準〕(連結))。生産面では「2工場のいずれかが操業不能に陥った場合でも他人資本に依存せずに復帰させること」を前提に、高い自己資本比率を維持する方針を示しています(2025年9月期決算短信〔日本基準〕(連結))。
収益の仕組み
お金の入口は、ヘルメットの販売です。売上高は販売数量と単価の掛け合わせで動き、当期は値上げ等による単価の上昇を、販売数量の11.9%減が上回りました(2025年9月期決算短信〔日本基準〕(連結))。海外販売の比重が大きいため、為替も業績に影響します。当期の売上換算レートは1ドル=149.63円、1ユーロ=164.34円でした(2025年9月期決算短信〔日本基準〕(連結))。
費用面では、生産数量の減少に比べて製造原価が増加し、広告宣伝費等の販売管理費も増加したことが減益の要因とされています(2025年9月期決算短信〔日本基準〕(連結))。内部留保の使途として、生産設備の更新や能力増強、新製品や新部品の金型等の設備投資、新製品開発や新規事業開拓のための研究開発、当社ブランドをより浸透させるための広告宣伝等を挙げています(2025年9月期決算短信〔日本基準〕(連結))。
数字で確かめる
- 売上高32,363百万円(前期比△9.6%)、営業利益8,899百万円(前期比△13.9%)(2025年9月期決算短信〔日本基準〕(連結))。減収減益の年でも、高い利益水準を保っていることが読み取れます。
- 売上高営業利益率27.5%(前期28.9%)(2025年9月期決算短信〔日本基準〕(連結))。売上に対して営業利益の割合が高い事業であることが読み取れます。
- 販売数量 前年度比11.9%減、欧州市場12.4%減、日本市場25.4%減(2025年9月期決算短信〔日本基準〕(連結))。日本市場では流通在庫の調整が販売数量に大きく影響したことが読み取れます。
- 欧州の売上高14,444,681千円(▲12.6%)、北米の売上高5,037,534千円(0.5%)(2025年9月期決算短信〔日本基準〕(連結))。地域によって需要の動きが異なることが読み取れます。
- 自己資本比率85.1%(2025年9月期決算短信〔日本基準〕(連結))。借入に頼らない財務方針が数字に表れていることが読み取れます。
- 2026年9月期の業績予想は売上高33,950百万円(4.9%増)、営業利益8,370百万円(△5.9%)(2025年9月期決算短信〔日本基準〕(連結))。増収を見込む一方、関税や販管費増で減益を想定していることが読み取れます。
Otsumuの読み解き:なぜ成り立つのか
ここからはOtsumuの考察です。カテゴリー特化の観点で見ると、SHOEIは高級二輪乗車用ヘルメットという一つの領域に絞り、販売数量が落ちた年でも売上高営業利益率27.5%を保っています。この事業が成り立つ条件は、価格を上げても選ばれるブランド力と、それを支える製品の刷新にあると考えられます。当期は値上げ等で単価が上がった一方、主力モデルのモデルチェンジが無かったことが販売数量の伸び悩みにつながったと同社は説明しており、新製品の投入サイクルが業績の波をつくる構造だと読めます。
裏側で必要な仕事は、製品開発と金型への投資、そして代理店・小売店を通じた流通在庫の管理です。当期は日本市場で過剰な流通在庫の調整が期末まで続き、販売数量が前年度比25.4%減りました。メーカーの出荷と店頭での販売の間に在庫が挟まる構造では、流通の在庫水準を読み違えると出荷が大きく振れると考えられます。なお、今回の資料では他社向けのOEM/ODM供給については示されておらず、自社ブランドでの販売が中心と読めます。
トレードオフは、単一カテゴリーへの集中による外部環境への感応度です。関税、為替、主要市場の景気がそろって業績に効きます。同社は高い自己資本比率と手元資金を維持する方針をとっており、集中の裏返しとして財務の備えを厚くしていると考えられます。
自社事業に持ち帰る問い
- 自社の主力商品は、値上げをしても選ばれる理由を顧客に説明できるか。
- 新商品や改良の投入サイクルは、売上の波とどう連動しているか。
- 代理店や販売店に残っている在庫の量を、自社で把握できているか。
- 一つの領域に集中している場合、その裏側でどんな備えを持っているか。
小さく試すなら
- 過去数年分の主力商品の発売・改良時期と、月別の売上を一枚のグラフに並べます。投入と売上の関係が見えれば次に進みます。
- 主要な販売先3社程度に、自社商品の店頭在庫と売れ行きを聞き取り、出荷と実販売の差を把握します。
- 2〜4週間、聞き取った情報をもとに出荷計画を一部見直し、欠品や在庫過多の件数を記録します。
- 次の改良商品の投入時期と価格の案を作り、既存顧客数名に購入意向を確かめます。意向が確認できれば開発計画に反映します。
関連するビジネスモデル
資料の位置づけ
企業・サービス:株式会社SHOEI / 高級二輪乗車用ヘルメット。参照資料:2025年9月期 決算短信〔日本基準〕(連結)。このページは公開情報にもとづく学習用の分析です。Otsumuの支援実績や当該企業との取引関係を示すものではありません。示唆と検証案はOtsumuの考察であり、企業自身の見解とは区別しています。
参考資料と編集について
上記の公開資料(企業の決算短信または年次報告書)をもとに、Otsumuが執筆しました。数値と企業の説明は資料の記載の範囲にとどめ、Otsumuの考察とは分けています。数値は資料の表記のままで、最新の情報は各社の開示をご確認ください。
執筆:Otsumu株式会社 / 編集日 2026.09.27